「ごみ箱のない日」と、注文で出す朝食:ドバイの「ラッフルズ・ドバイ」が、1年で食品ロスを60%減らした5つの工夫
アラブ首長国連邦のドバイにあるホテル「ラッフルズ・ドバイ」は、オランダのオービスク社の機器を使い、1年で食品ロスを60%減らした。オービスク社の2025年2月5日の記事によると、ホテルはまず1か月、何もせずに食品ロスを測った。そのデータをもとに、端材の活用、季節の献立、従業員の食堂での「ノー・ビン・デー」、朝食の見直し、在庫の回転という5つの工夫を重ねた。
最初の1か月は、測るだけ
記事によると、ホテルは厨房に機器「オービ」を置き、1か月の間、基準となる食品ロスを記録した。パターンと改善の機会を探すためだ。そのデータをもとに、オービスク社の「食品ロスのコーチ」と一緒に、作戦を考えた。
オービスク社が2025年9月12日に公開した、複数の事例をまとめた記事によると、ラッフルズ・ドバイで使った機器は2台だ。オービは、捨てるものを撮影し、AIで何がいつ、なぜ捨てられたかを見分ける。
5つの工夫
記事は、1年で60%を減らした作戦として、次の5つを挙げている。
1. 厨房での創造的なアップサイクル:食材の端材を、スープ、ジャム、デザートに変える
2. 季節の献立:余る食材を減らし、客の需要に合わせる
3. 従業員の力を引き出す取り組み:従業員の食堂での「ノー・ビン・デー」
4. 朝食の見直し:ビュッフェから「ハイブリッド」の形へ
5. 在庫の回転:すべての食材を期限の前に使い切る
端材を、スープとジャムとデザートに
1つ目の工夫は、捨てていた端材を料理に変えることだ。たとえば、野菜の切れ端はスープに、果物の端はジャムやデザートに使える。記事は、どの食材をどの料理に使ったかまでは書いていない。
2つ目の季節の献立も、同じ方向の工夫だ。旬の食材を中心にすると、使い切れずに余る食材が減り、客が食べたいものにも合わせやすい。
従業員の食堂の「ノー・ビン・デー」
3つ目は、従業員の食堂での「ノー・ビン・デー」だ。ビンは英語でごみ箱のことで、直訳すると「ごみ箱のない日」になる。記事は、これを強い意識づけの運動と呼び、従業員がホテルの持続可能な取り組みを自分のこととしてとらえる力になっていると書く。
ただし、記事は、その日にごみ箱を実際に片づけるのか、どのくらいの頻度で行うのかなど、具体的なやり方を書いていない。
朝食を「ハイブリッド」に
4つ目は、レストラン「アズール」の朝食だ。ビュッフェから、ハイブリッドの形に切り替えた。よく捨てられていた料理を、ビュッフェに並べるのではなく、注文を受けてから出すアラカルトにした。
記事によると、これで一皿の量を調整しやすくなり、残り物が減り、客の体験もよくなった。すべてを注文制にするのではなく、無駄が多い料理だけを選んで変えたところが、この工夫の要点だ。
結果と、金額の書き方の違い
記事によると、結果は次のとおりだ。
- CO2を3万3,005キログラム削減。ニューヨークとロンドンを15往復するのと同じ量
- 1万1,000キログラムを超える食べ物を救った
- 2万2,000食を超える食事を救った
- 1年で8万ユーロを超える節約
9月12日の記事は、ラッフルズ・ドバイの節約を1か月6,750ユーロとしている。12倍すると8万1,000ユーロで、「8万ユーロを超える」と合う。一方、オービスク社の別のページは、料理長のハッサン・アブダラ氏の言葉とともに「7万ドルの節約」と書いている。通貨も金額も違うので、引くときは出典を添えたい。
アブダラ氏は、そのページで、「食品ロスを細かく追い、以前は見えなかった意味のある手を打てる」と話している。
日本の宿に置き換えると
日本には、食品ロスを減らす工夫を表彰する「食品産業もったいない大賞」がある。農林水産省の2026年9月29日の発表によると、この賞は公益財団法人食品等持続的供給推進機構が主催し、農林水産省が協賛している。「省エネルギー・CO2削減」「廃棄物の削減・再生利用」「教育・普及」などの観点から、顕著な実績を挙げた食品関連事業者などを表彰する。
第14回の農林水産大臣賞は、和歌山県北山村の株式会社じゃばらいず北山の、特産の柑橘「じゃばら」の搾ったあとの果皮を地域の資源に変える取り組みだった。会社の発表によると、2025年には、年間約60トン出た搾りかすを、ペーストや乾燥果皮、粉末に加工し、自社の商品や食品の原料、飼料などに使った。
農林水産省の発表によると、ほかに、小学6年生(当時)が考えた「食べ残しNOゲーム」など3件が農林水産省大臣官房総括審議官賞に選ばれた。表彰式は2026年10月29日に開かれる。
端材を生かすラッフルズ・ドバイの工夫は「廃棄物の削減・再生利用」に、従業員の意識づけは「教育・普及」に近い。宿の工夫も、こうした観点で整理すると、社内外に伝えやすくなる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)
ある宿の厨房で、野菜の皮や切れ端が1日2キログラム出るとする。そのうち、きれいで料理に使える部分が0.6キログラムあり、これを従業員の食事のスープに使うとする。
- 1日:0.6キログラム
- 30日:0.6キログラム×30日=18キログラム
1か月に18キログラムの端材が、捨てられずに料理になる計算だ。使える部分と使えない部分の基準を決め、洗い方や保存の方法も、衛生管理の手順に書き加えておく。
一部だけ変えて、積み重ねる
ラッフルズ・ドバイは、1か月測ったあと、端材の活用、季節の献立、ノー・ビン・デー、無駄が多い料理だけの注文制、在庫の回転を重ねた。日本の宿でも、まず何が捨てられているかを測り、無駄が多い料理から1つずつ変えることから始められる。
持ち帰れる知識
- 変える前に、1か月測ると、無駄の多い場面が分かる
- すべてを注文制にしなくても、無駄の多い料理だけを変える方法がある
- 従業員の食堂は、意識づけの場にもなる
- 同じ事例でも、ページによって金額の書き方が違うことがある
宿で考えられること
- 朝食で残りやすい料理を1つ選び、注文を受けてから出す形を試す
- 端材を料理に使う基準と衛生の手順を決める
- 従業員の食事で、食品ロスを考える日を設ける
- 取り組みを、もったいない大賞の観点で整理してみる
事業・予約への接続
注文を受けてから出す料理は、できたてを出せるので、客の満足にもつながりやすい。端材を生かした料理は、宿の料理の考え方として紹介できる。
Sources / 参考情報
- Orbisk(英文) - 成功事例:ラッフルズ・ドバイは、ホテルの食品ロスの管理で先頭を走る(2025年2月5日)
裏付け: 1年で60%、1か月の基準の記録、食品ロスのコーチ、5つの作戦(端材をスープ・ジャム・デザートに、季節の献立、従業員の食堂のノー・ビン・デー、アズールの朝食をビュッフェからハイブリッドへ・よく捨てられる料理をアラカルトに・量の調整と客の体験、在庫の回転)、CO2 3万3,005キログラム・ニューヨークとロンドンの15往復、1万1,000キログラム超、2万2,000食超、1年で8万ユーロ超 - Orbisk(オランダ語) - オービスクの投資回収:12〜15か月後の結果(実データ)(2025年9月12日)
裏付け: ラッフルズ・ドバイは12か月、60%、1か月6,750ユーロの節約、機器2台 - Orbisk(英文) - ほかの食品ロスの監視の方法よりオービスクを選ぶ理由
裏付け: ラッフルズ・ドバイの料理長ハッサン・アブダラ氏の言葉、60%、7万ドルの節約 - 農林水産省 - 第14回「食品産業もったいない大賞」の受賞者決定!(2026年9月29日)
裏付け: 食品等持続的供給推進機構が主催・農林水産省が協賛、省エネルギー・CO2削減、廃棄物の削減・再生利用、教育・普及の観点、農林水産大臣賞はじゃばらいず北山(搾汁後果皮を地域資源へ)、総括審議官賞3点(食べ残しNOゲームほか)、表彰式は2026年10月29日 - 株式会社じゃばらいず北山(PR TIMES) - じゃばらいず北山、第14回「食品産業もったいない大賞」で農林水産大臣賞(2026年9月29日)
裏付け: 2025年に年間約60トンの搾汁後残渣、ペースト・乾燥果皮・粉末に加工、自社商品・食品原料・飼料に活用