写真が見せた3つの原因:ロンドンの「トライブ・ロンドン・カナリー・ワーフ」が、勘から数字に切り替えた9か月
イギリスのロンドンにあるホテル「トライブ・ロンドン・カナリー・ワーフ」は、オランダのオービスク社の機器を3台入れ、9か月で、1食あたりの食品ロスを平均37%減らした。オービスク社の2026年1月23日の記事によると、それまでは食品ロスを勘で管理していた。毎日の写真と分析で、3つの原因がはっきりしたことが、変化のきっかけになった。この記事では、原因と手の対応に絞って紹介する。
勘から、写真へ
記事によると、チームは、食品ロスがたまっているのではないかと、前から感じていた。それでも、管理は勘に頼っていた。
変わったのは、オービスク社の「エクセレンス」という段階の機器「オービ」を3台使い、実際の写真と毎日の分析を見られるようになってからだ。オービスク社の現在の料金プランのページでは、エクセレンスは、複雑な厨房向けに、800を超える食材を自動で見分け、食材ごとの精度は約90%としている。
記事は、写真を見て、規模が「否定できないもの」になったと書いている。
写真が見せた3つの原因
記事が挙げる原因は、次の3つだ。
1. 朝食ビュッフェでの作りすぎ
2. 従業員の食堂で、あまり食べられない料理
3. 大量の陳列が、不要な残り物を生んでいた
この見える化がきっかけになり、チームは数週間のうちに、データに基づく調整を始めた。
原因ごとの手
記事は、次の5つの手を挙げている。原因と並べると、対応がよく分かる。
- 朝食の作りすぎには:小さなバッチで、より頻繁に作り、ビュッフェの量を適正にする
- 従業員の食堂には:実際に食べられている量のパターンをもとに、従業員の献立を更新する
- 大量の陳列には:並べる量を減らし、品質を保ちながら余りを出さない
- 全体には:客の前で働く人と厨房の人の両方を再訓練し、避けられる無駄を見分けられるようにする
- 余ったものには:先入れ先出しを優先し、余った果物、野菜、パンを工夫してアップサイクルする
小さなバッチで頻繁に作ることと、並べる量を減らすことは、同じ考え方の裏表だ。一度にたくさん出すと、最後に残る量も大きくなる。
毎週、結果を共有する
記事によると、毎週の結果は、チームをまたいで透明に共有された。意識は「伝染」し、改善が加速したという。
厨房だけでなく、客の前で働く人も再訓練の対象にしたことと、結果を全員で共有したことは、組み合わせになっている。原因の1つが朝食の陳列だったので、料理を並べる人の協力が欠かせない。
結果と、これからの4つ
記事によると、当初の目標は、1年目に1食あたりの食品ロスを平均10%減らすことだった。9か月の結果は、1食あたりの食品ロスの平均37%削減、1万1,050食分を救い、CO2換算で1万5,707キログラムを避け、2万5,047ポンドを節約した。
記事は、次の手として、新しい献立を出して影響を追うこと、繁忙期の傾向を見ること、準備の量を客の数にもっと合わせること、従業員の食堂で新しい意識づけの運動を始めることを挙げている。繁忙期は、宿泊客の数も食事の量も変わるので、それまでの調整がそのまま通用するとは限らない。
日本の宿に置き換えると
日本では、農林水産省の補助を受けて、公益財団法人流通経済研究所が「食品ロス削減等緊急対策事業」の公募を行った。その中の「食品ロス削減緊急対策モデル支援」は、食品製造業、食品流通業、外食業で、デジタル化をはじめとする新しい技術や仕組みによる食品ロス削減の実証を支援する。
研究所のページによると、実証のテーマには「外食業における食品ロス発生抑制」や「需要予測の高度化・活用」がある。補助の上限は1,800万円で、対象の経費には、気象データやPOSデータの購入費、AIカメラやパソコンなどの機器の借上費が含まれる。応募は団体などが対象で、今回の募集は2026年3月13日に締め切られた。事業の実施期間は2027年2月10日までだ。
この制度の前の年度の採択例として、日本気象協会とソフトバンクは、2026年8月の発表で、スーパーの惣菜部門20店舗での実証の結果を公表した。気象データや人の流れのデータ、販売の実績をAIで分析し、需要予測と自動発注、値引きの最適化を行った。同じ地域・同じ規模の店と比べて、食品廃棄量は約13%減り、発注と計画の作業時間は週約127分から約81分に、約37%短くなったという。
トライブのように、写真で原因をつかんでから手を打つ方法は、宿の朝食や従業員の食事でも試せる。こうした制度は、機器を試す費用を考えるときの参考になる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)
ある宿の朝食ビュッフェで、スクランブルエッグを、大皿に一度に3キログラム並べているとする。毎日、最後に1キログラム残るとする。
並べ方を変え、1キログラムずつ、なくなりそうになったら補充する。最後の補充は、客の様子を見て0.5キログラムにする。残りは0.3キログラムになるとする。
- これまで:1日1キログラム×30日=30キログラム
- 小分けに補充:1日0.3キログラム×30日=9キログラム
1か月に21キログラム減る計算だ。補充の合図(大皿の残りが3分の1になったら、など)を決め、毎週、残った量を全員で見る。
原因を見てから、手を選ぶ
トライブ・ロンドン・カナリー・ワーフは、写真で3つの原因を確かめ、原因ごとに手を選び、毎週の結果を全員で共有した。日本の宿でも、まず何がどこで残っているかを見ることから始めると、手の選び方がはっきりする。
持ち帰れる知識
- 原因が分かると、手の選び方がはっきりする
- 一度にたくさん並べると、最後の残りも大きくなる
- 客の前で働く人も、食品ロスを減らす仲間になる
- 繁忙期は、それまでの調整が通用するとは限らない
宿で考えられること
- 朝食で残りやすい料理を写真で記録し、原因を3つに絞る
- 大皿の量を減らし、補充の合図を決める
- 従業員の食事で、食べられていない料理を献立から見直す
- 毎週、残った量を全員で共有する
事業・予約への接続
小分けに補充すると、料理を新しい状態で出しやすい。朝食の見直しは、料理の質を保つ工夫としても伝えられる。
Sources / 参考情報
- Orbisk(英文) - 成功事例:トライブ・ロンドン・カナリー・ワーフは、スマートな技術でホテルの食品ロスを37%減らした(2026年1月23日)
裏付け: 以前は勘で管理、エクセレンスの段階のオービ3台、写真と毎日の分析、3つの原因(朝食ビュッフェの作りすぎ、従業員の食堂のあまり食べられない料理、大量の陳列)、数週間で調整、5つの手(小さなバッチを頻繁に、前と後ろの再訓練、従業員の献立の更新、陳列量の削減、先入れ先出しと果物・野菜・パンのアップサイクル)、毎週の結果の共有、目標は1年目に1食あたり平均10%、9か月で平均37%・1万1,050食・CO2換算1万5,707キログラム・2万5,047ポンド、これからの4つ - Orbisk(英文) - オービスクの料金プラン
裏付け: エクセレンスは複雑な厨房向け、800を超える食材を自動で見分ける、食材ごとの精度は約90% - 公益財団法人流通経済研究所 - 食品ロス削減等緊急対策事業のお知らせ
裏付け: 農林水産省の補助、食品ロス削減緊急対策モデル支援(食品製造業・食品流通業・外食業、DXをはじめ新たな技術・仕組みの実証)、テーマに外食業における食品ロス発生抑制・需要予測の高度化、補助上限1,800万円、データ購入費(気象データ、POSデータ等)・機器等借上費(AIカメラ、パソコン等)、応募団体の要件、募集は2026年3月13日まで、実施期間は2027年2月10日まで - 日本気象協会 - 気象データ・人流データ・AIを活用して需要予測と商品値引きを最適化し、食品スーパーの食品ロス削減と生産性向上を確認(2026年8月)
裏付け: 農林水産省の令和6年度食品ロス削減緊急対策モデル支援事業に採択、2026年1月23日〜3月12日、スーパーマーケットバロー20店舗の惣菜部門、比較店舗との対照分析で食品廃棄量約13%減、発注・計画作業時間約37%短縮(週約127分→約81分) - TRIBE Hotels(英文) - トライブ・ロンドン・カナリー・ワーフ
裏付け: ホテルの所在地(ロンドンのカナリー・ワーフ)