「目標を決める道具が、流れを変えた」:ドイツの「フランクフルト・マリオット・ホテル」が6か月で食品ロスを24%減らした、目標の置き方
ドイツの「フランクフルト・マリオット・ホテル」は、オランダのオービスク社の機器を使い、6か月で食品ロスを24%減らし、3万8,000ユーロを節約した。F&B(料理と飲み物)部門の責任者は、なかでも目標を決める道具を「ゲームチェンジャー」、つまり流れを変えるものだと話している。この記事では、目標をどう置き、どう追うかという点から事例を読む。
どんなホテルか
マリオットのページによると、このホテルは高さ159メートルで、ライン・マイン地域でいちばん高いホテルだ。26階から44階に593の客室があり、23の会議室と、市内でも大きな宴会場を持つ。見本市会場のメッセ・フランクフルトの近くにある。
ドイツの会議・催しの推進団体、GCBのページは、ホテルが見本市と会議の会場の向かいにあり、環境認証の「グリーンキー」を受けていると紹介している。会議や宴会の多いホテルだ。
6か月で24%
オービスク社のページは、このホテルについて「6か月で24%削減、3万8,000ユーロ節約」と示している。
F&Bディレクターのアンドレ・ハックバルト氏の言葉も載っている。オービスクの仕組みで、毎日の仕事が目に見えて簡単になった。直感的に操作できるので時間が省け、記録も漏れなく残る。そして、目標を決める道具はゲームチェンジャーだ、という。
3つの言葉:焦点、責任、進み具合
ハックバルト氏は、目標を決める道具が何をもたらしたかを、3つの言葉で説明している。
- 焦点を作る
- 一人ひとりの責任感を促す
- 進み具合を目に見えるようにする
目標がないと、記録は集まっても、どこに力を入れるかが決まらない。目標があると、何を減らすかに焦点が合う。誰がどの目標を持つかが決まれば、責任の持ち方もはっきりする。進み具合が見えれば、途中で手を打ち直せる。
自分の厨房のデータから作る計画
オービスク社のページは、導入のときの支援の流れも説明している。最初の3か月は導入の期間で、担当者が付き、チームの研修と削減の計画づくりを行う。
削減の計画は、決まった型ではなく、その厨房に合わせて目標を決めるものだという。計画は、厨房自身の廃棄のデータから作られ、実際の結果と比べながら、週ごとに追いかける。導入の期間のあとも、コーチとの定期的なやりとりが続く。
ここから読み取れるのは、目標は外から借りてくるものではなく、自分の厨房の記録から作るものだ、という考え方だ。
日本の宿に置き換えると
日本にも、目標を決めて追いかける仕組みがある。環境省が作った中小事業者向けの環境の仕組み「エコアクション21」だ。環境省と農林水産省は2018年9月、食品関連事業者向けのガイドライン(2017年版)を出している。
このガイドラインは、旅館業を含む食事を提供する事業者に適用される。食品リサイクル法で報告が必要な、食品廃棄物が年100トン以上の事業者かどうかは問わない。
ガイドラインが求める目標と計画の決め方は、次のとおりだ。
- 目標はできるだけ数値にし、食品廃棄物の発生を抑えることと、再生利用などの割合を高めることを含める
- 計画には、目標を達成するための手段、日程、責任者を決める
- 目標と計画は毎年度見直し、関係する従業員に知らせる
- 1年の目標と、それにつながる3年から5年の中期の目標を作る
法律が決める、目標の伸ばし方
ガイドラインは、食品リサイクル法にもとづく目標の決まり方も説明している。食品関連事業者は、毎年度の「再生利用等実施率」が、事業者ごとの「基準実施率」以上になることが求められる。基準実施率は、前の年度の基準実施率に、決まったポイントを足して求める。
- 前の年度が20%以上50%未満なら、2ポイントを足す
- 50%以上80%未満なら、1ポイントを足す
- 80%以上なら、維持か向上
今の水準に応じて、少しずつ目標を上げていく形だ。
解説には、達成にこだわって低すぎる目標を作ることや、達成が難しい高すぎる目標を作ることは適切ではない、とも書かれている。認証を受けた食品関連事業者は、「食品リサイクル優良事業者」として登録される。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)
ある宿で、1か月の食品ロスが240キログラムあるとする。1年目の目標を10%減、3年目の目標を25%減に置く。
- 1年目の目標:240キログラム×0.9=1か月216キログラム
- 3年目の目標:240キログラム×0.75=1か月180キログラム
- 1か月を4週と数えると、1年目の週の目安は216÷4=54キログラム
週の目安を厨房に貼り、毎週の量と並べて書き込む。朝食の担当、夕食の担当など、場面ごとに責任者を1人ずつ決める。目安を2週続けて超えたら、その場面の責任者が原因を1つ書き出す。
目標は、自分の記録から作る
フランクフルト・マリオット・ホテルの責任者は、目標を決める道具が、焦点と責任感と進み具合の見える化をもたらしたと話した。日本の宿でも、まず自分の記録を取り、そこから届く目標を置き、責任者と日程を決めることから始められる。
持ち帰れる知識
- 記録だけでなく、目標があると力を入れる場所が決まる
- 目標は、自分の厨房のデータから作り、週ごとに追いかける
- エコアクション21の食品関連事業者向けガイドラインは、旅館業にも適用される
- 計画には、手段・日程・責任者を決める
宿で考えられること
- 1か月の食品ロスを量り、それをもとに1年の目標を置く
- 1年の目標につながる、3年から5年の目標も作る
- 場面ごとに責任者を決め、週の目安を貼り出す
- 目標と計画を毎年見直し、従業員に知らせる
事業・予約への接続
会議や宴会の多い宿では、目標と進み具合を、主催者への提案資料に載せられる。数値の目標と結果を示すことは、宿の姿勢を伝える材料になる。
Sources / 参考情報
- Orbisk(英文) - なぜ、ほかの仕組みではなくオービスクなのか
裏付け: フランクフルト・マリオットは6か月で24%削減・3万8,000ユーロ節約、アンドレ・ハックバルト氏(F&Bディレクター)の言葉(毎日の仕事が簡単に、直感的な操作で時間を節約、記録が漏れなく残る、目標を決める道具はゲームチェンジャー、焦点を作り、一人ひとりの責任感を促し、進み具合を見えるようにする) - Orbisk(英文) - オービスクの仕組み
裏付け: 最初の3か月の導入期間(担当者、研修、削減の計画)、厨房に合わせた削減の計画(自分の廃棄のデータから作り、実際の結果と比べて週ごとに追う)、コーチとの定期的なやりとり、6か月で24%・3万8,000ユーロの表示 - Marriott(英文) - フランクフルト・マリオット・ホテル
裏付け: 高さ159メートルでライン・マイン地域でいちばん高い、26〜44階に593室、23の会議室、市内でも大きな宴会場、メッセ・フランクフルトの近く - GCB(ドイツ語) - フランクフルト・マリオット・ホテル
裏付け: 見本市と会議の会場の向かい、グリーンキーの認証 - 環境省・農林水産省 - エコアクション21 食品関連事業者向けガイドライン 2017年版(PDF)(2018年9月)
裏付け: 旅館業を含む食事を提供する事業者に適用(年100トン以上かどうかは問わない)、目標はできるだけ数値化し食品廃棄物の発生抑制と再生利用等実施率の向上を含める、計画に手段・日程・責任者、毎年度の見直しと従業員への周知、1年と3〜5年の中期の目標、低すぎる・高すぎる目標は適切ではない、食品リサイクル優良事業者として登録、再生利用等実施率は基準実施率以上、基準実施率の増加ポイント(20〜50%未満は2ポイント、50〜80%未満は1ポイント、80%以上は維持向上)