「7割が少なく見積もり、4割は測っていない」:ロンドンの「ノボテル・ロンドン・エクセル」の食品ロス削減を、測ることの差から読む
ロンドンの「ノボテル・ロンドン・エクセル」は、イギリスのウィノー社のAIの仕組みを使い、食品ロスを大きく減らしたホテルだ。一方、ウィノー社が2026年に行った調査では、飲食の事業者の70%が、自分たちが捨てている食べ物の量を少なく見積もっていた。40%は、まったく測っていなかった。この記事では、測っている厨房と測っていない厨房の差から、事例を読む。
見本市会場にいちばん近いホテル
アコーのページによると、ノボテル・ロンドン・エクセルは、見本市会場「エクセル」にいちばん近いホテルだ。会場の催しに訪れる人に向いた立地だと紹介している。環境認証の「グリーンキー」も受けている。
39%と45%
アコーの2023年9月29日の発表によると、ウィノー社の仕組み「ウィノー・ビジョン」は2016年から、余った食べ物を読み取り、量と種類を細かく記録してきた。発表の時点で約100の施設で使われ、ノボテル・ロンドン・エクセルは食品ロスを39%、12トン減らしたという。
ウィノー社の2024年1月18日の記事は、ヨーロッパのアコーのホテルと組んでいると書き、ノボテル・ロンドン・エクセルが食品ロスを45%減らしたと紹介している。2つの数字は、発表の時期が違う。
7割が少なく見積もる
ウィノー社の2026年7月7日の記事は、2025〜26年の報告書の中身を紹介している。ウィノー社は、ヨーロッパと北アフリカの140を超える飲食の事業者に調査を行った。その結果、70%の事業者が、自分たちが捨てている食べ物の量を少なく見積もっていた。40%は、食品ロスをまったく測っていなかった。
同じ記事によると、ウィノー社の仕組みを使う事業者は、3,500を超える場所で、年に1億ドルを超える食材の費用を節約している。記事は、ほとんどの食品ロスは傷んだものや食べられないものではない、とも書いている。
測ると、何が変わるのか
ウィノー社の2025年12月の発表によると、多くの業務用の厨房は、買った食べ物の5〜15%を捨てている。そして、測った結果として減る量は、たいてい50%を超えるという。
ウィノー社の2024年1月の記事は、ホテルや飲食の業界では、食品ロスが食材の費用全体の4〜12%を占めることがある、と書いている。
少なく見積もっている厨房では、本当の量が見えていない。測って初めて、思っていたより多いことに気づき、減らす手を打てる。ノボテル・ロンドン・エクセルの削減は、測る仕組みを入れた厨房の結果として読める。
手を止めずに測る
同じ2025年12月の発表は、ウィノー社の新しい仕組み「スロー・アンド・ゴー」も紹介している。食品ごみを、何にも触れずに記録できる仕組みで、量の多い厨房で特に、測ることを速く、楽にするという。発表によると、アコーでは200を超えるホテルがウィノー社の仕組みを使っている。
日本の宿に置き換えると
見本市や国際会議のように人が集まる催しは、まとめて「MICE(マイス)」と呼ばれる。東京観光財団は2019年3月、「TOKYO MICEサステナビリティガイドライン」を作った。催しの運営の持続可能性についての国際規格「ISO20121」を参考にしている。主催者、会場、宿泊、飲食、輸送のそれぞれに、チェックリストがある。
ガイドラインは、食べられるのに捨てられてしまう「フードロス」について、次のような取り組みの例を挙げている。
- 主催者は、フードロスを減らす取り組みをしている会場を優先して選ぶ。例として、ビュッフェで料理を細かく分け、少しずつ出す工夫が挙げられている
- フードロスを減らすための配慮として、料理の量を調整する。食べ残しを減らすよう呼びかけるアナウンスを入れる
主催者が会場を選ぶとき、食品ロスへの取り組みが判断の材料の1つになる、という考え方だ。会議や宴会を受ける日本の宿にとっては、自分たちの取り組みを数字で示せるかどうかが問われることになる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)
会議や宴会を受けるある宿で、担当者は、宴会の料理の残りを1日10キログラムほどと見積もっていたとする。2週間、毎日量ってみると、平均は1日16キログラムだったとする。
- 見積もりとの差:16キログラム-10キログラム=1日6キログラム
- 見積もりは、実際の量より約38%少なかった(6÷16)
そこで、ビュッフェの料理を小さな器で少しずつ出すように変え、残りが1日16キログラムから11キログラムに減ったとする。減った量は1日5キログラムで、約31%の削減になる。この結果を、会議の主催者向けの資料に載せる。
まず、測ってみる
ノボテル・ロンドン・エクセルは、測る仕組みを入れ、食品ロスを大きく減らした。一方、ウィノー社の調査では、多くの事業者が自分たちの捨てる量を少なく見積もり、測っていない事業者も4割いた。日本の宿でも、まず2週間量ってみるだけで、見積もりとの差が見え、主催者に示せる数字も手に入る。
持ち帰れる知識
- 多くの事業者は、自分たちが捨てる量を少なく見積もっている
- ウィノー社によると、測った結果として減る量はたいてい50%を超える
- TOKYO MICEサステナビリティガイドラインは、主催者が食品ロスに取り組む会場を選ぶことを例に挙げている
- 測る手間を減らす仕組みも出てきている
宿で考えられること
- 宴会や会議の料理の残りを、まず2週間量る
- 見積もりと実際の量の差を、厨房で共有する
- ビュッフェの料理を小さな器で少しずつ出す
- 取り組みと結果を、主催者向けの資料に載せる
事業・予約への接続
会議や宴会の主催者が会場を選ぶとき、食品ロスへの取り組みが判断の材料になることがある。量った数字を示せれば、提案の説得力が増す。
Sources / 参考情報
- Accor(英文) - 食品ロス:AIがアコーのホテルを支える(2023年9月29日)
裏付け: ウィノー・ビジョンは2016年から余った食べ物を読み取り量と種類を記録、約100の施設で使用、ノボテル・ロンドン・エクセルは39%・12トン削減 - Accor(英文) - ノボテル・ロンドン・エクセル
裏付け: 見本市会場エクセルにいちばん近いホテル、グリーンキーの認証 - Winnow(英文) - フランスの生ごみの分別の法律が、どう経済の機会になるか(2024年1月18日)
裏付け: ヨーロッパのアコーのホテルと協力、ノボテル・ロンドン・エクセルは45%削減、食品ロスは食材の費用全体の4〜12%を占めることがある - Winnow(英文) - ウィノーの2025〜26年の報告書:ホテルや飲食の業界が食材の費用を1億ドル節約した年(2026年7月7日)
裏付け: ヨーロッパと北アフリカの140を超える事業者への調査、70%が捨てる量を少なく見積もり、40%はまったく測っていない、3,500を超える場所で年1億ドルを超える節約、ほとんどの食品ロスは傷んだものや食べられないものではない - Winnow(英文) - ウィノーを使うホテルや飲食の事業者が、年1億ドルの食品ロスを節約(2025年12月4日)
裏付け: 多くの業務用の厨房は買った食べ物の5〜15%を捨てる、測った結果として減る量はたいてい50%超、スロー・アンド・ゴー(触れずに記録)、アコーでは200を超えるホテルが使用 - 東京観光財団 - TOKYO MICEサステナビリティガイドライン(PDF)(2019年3月)
裏付け: ISO20121を参考に策定、主催者・会場・宿泊・飲食・輸送のチェックリスト、食品ロスを減らす取り組みをしている会場を優先して選ぶ(例:ビュッフェで細かく分けて少量ずつ提供)、食品の量を調整、食べ残しを減らす呼びかけのアナウンス