GOAL 12 · TARGET 12.3 廃棄物・循環経済 5分 / 2823文字 小さく試して測り直す型 #446

重点は3〜5か所、確かめるのは2週間後:ジャカルタの「フェアモント・ジャカルタ」の食品ロス16%減を、小さく試して測り直す手順から読む

インドネシアの首都ジャカルタにある「フェアモント・ジャカルタ」は、アコーの2023年の発表で、1年で食品ロスを16%(1.6トン)減らしたホテルとして紹介された。このホテルはその後、インドネシアの食品協定などと組んだ試行にも参加している。この記事では、数字の大きさではなく、試行で使われた「重点を絞り、安く早く手を打ち、測り続ける」という手順に注目する。

アコーの発表の「1年で16%」

アコーの2023年9月29日の発表によると、ウィノー社の「ウィノー・ビジョン」は2016年から、捨てられる料理をカメラで読み取り、量と種類のデータを集めてきた。厨房はそのデータを見て献立を変え、食品ロスを減らす。この仕組みは当時、約100軒で使われていた。その1つがフェアモント・ジャカルタで、1年で食品ロスを16%、量にして1.6トン減らしたという。

同じ発表には、アコーが示す業界全体の見方も載っている。ホテル1軒で出る食品ロスは平均で年に20トン近くあり、ホテルのごみ全体の約43%に当たる。食品ロスのうち45%は加工や作りすぎ、34%は皿の残り、残りの20%は在庫の管理がうまくいかないことから出るという。これはこのホテルの内訳ではない。

試行の手順:重点を3〜5か所に絞る

WRAPの2026年8月28日の事例によると、フェアモント・ジャカルタはその後、インドネシアの食品協定「GRASP 2030」、国際食品ロス連合(IFWC)、WRAPと組んで試行を行った。数字の詳しい中身は#428で読んだので、ここでは進め方を見る。

WRAPの説明では、IFWCとWRAPの手法は次のように進む。

  • データを使って、重点の場所(ホットスポット)を少数、通常は3〜5か所選ぶ
  • 投資がほとんど要らない、実際的な手に絞る
  • 手は素早く入れ、計測と見守りを続けて、試行の後も減った状態を保つ

このホテルで選ばれた重点は3つで、成果が出るまで2週間しかかからなかったという。試行の前から、このホテルには食品ロスの計測、従業員の参加、余った食べ物の寄付の仕組みがあった。それでも、データを見直すと、まだ減らせる場所が見つかった。

毎日の数字を、職員と共有する

取った手の中に、運営の習慣に関わるものが2つある。1つは、毎日の食品ロスの結果と減らす目標を、従業員と共有したこと。もう1つは、寄付の対象を温かいビュッフェの料理にまで広げたことだ。WRAPは、料理人が積極的に関わり、こまめに話し合ったことも、取り組みを毎日の仕事に根付かせる助けになったと書いている。

WRAPはこの事例のまとめとして、手は実際的でほかでも使えるとし、「measure waste, identify hotspots, engage teams and make targeted operational changes」(量る、重点を見つける、チームを巻き込む、狙いを定めて運営を変える)と書いている。

「目標を決め、量り、手を打つ」

GRASP 2030は、インドネシア持続可能な開発のための経済人会議(IBCSD)が率いる自主的な協定で、2021年9月8日に始まった。開始時の署名者は9社で、資金はP4Gという国際的な枠組みから出ている。立ち上げの記事によると、P4Gのイアン・デ・クルーズ氏はGRASP 2030の進め方を「Target, Measure, Act, Invest」(目標を決め、量り、手を打ち、投資する)と説明した。目指すのは、SDGsのターゲット12.3に沿って食品ロスを減らすことだ。

WRAPの2025年11月7日の発表によると、各国の食品協定をつなぐ「食品協定ネットワーク」は、9か国の10の協定からなる。GRASP 2030の加盟は45に増え、ホテル・飲食店・カフェの分野で食品ロスを減らす試行も行ってきた。南アフリカやイギリスの協定でも、「目標を決め、量り、手を打つ」の進め方が広く使われているという。フェアモント・ジャカルタの試行は、この進め方を1軒の厨房で回した例として読める。

日本の宿に置き換えると

日本にも、宿の宴会で「量って、手を打って、もう一度量る」を試した例がある。環境省の「自治体職員向け 食品ロス削減のための取組マニュアル」は、福井県が平成26年度に県内5つのホテルと3回のワークショップを開き、宴会の食べ残しが少ない「のっこさんメニュー」を考えた例を載せている。

福井県は宴会後の食べ残しを、工夫を試す前に14回、試した後に9回量った。1人あたりの平均の食べ残しは、113.2グラムから109.0グラムになった。工夫は、料理の構成、見せ方、出し方、客の好み、食べやすさ、注文の取り方と勧め方の6つにまとめられた。

振り返りでは、幹事と事前に打ち合わせて声をかけても、その日の進み方によっては食べ残しが出ることや、「足りないよりは余ってもいい」という客の求めと、ホテルの取り組みが一致しないことがあると書かれている。かかった費用は約10万円、担当者は2名だった。

福井県のページには、協力した4つのホテルの名前と、県民向けの「宴会5箇条」が載っている。たとえば、酒宴の席では、開始30分、終了10分など、席を立たずにしっかり食べる時間を作ろう、という呼びかけだ。宿の側の工夫と、客の側の行動の両方に手を打つ形になっている。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

ある宿が、1週間の食品ロスを場所ごとに量ったとする。重点の候補を3つに絞ると、次のようになったとする。

  • 下ごしらえの切りくずのうち、使えるもの:10キログラム
  • 朝食ビュッフェの残り:15キログラム
  • 宴会の食べ残し:7キログラム

合計は32キログラムだ。そこで、安くすぐできる手を2つだけ試す。朝食ビュッフェは大皿の補充をやめ、少量ずつ出す。宴会は、予約のときに幹事と量を相談する。2週間後に同じ方法で量り直し、ビュッフェが15キログラムから12キログラムに、宴会が7キログラムから6キログラムになったとする。

1週間の合計は32キログラムから28キログラムになり、4キログラム、12.5%減る計算だ。下ごしらえの10キログラムには、まだ手を付けていない。次の2週間は、ここを重点にして同じ手順を回す。

小さく試して、測り直す

フェアモント・ジャカルタの試行は、すでに計測や寄付の仕組みを持つホテルでも、重点を絞って測り直せば、減らせる場所が見つかることを示した。福井県の例は、客の求めという、厨房だけでは動かせない壁があることも教えてくれる。どちらにも共通するのは、手を打ったら、同じ方法でもう一度量ることだ。

持ち帰れる知識

  • 重点の場所は少数(通常3〜5か所)に絞る
  • 投資がほとんど要らない手を素早く入れ、計測を続ける
  • 毎日の数字と目標を、厨房の全員で共有する
  • 宴会の食べ残しは、客の求めと宿の取り組みがずれると減りにくい

宿で考えられること

  • 食品ロスを場所ごとに1週間量り、重点を3つまで選ぶ
  • 安くすぐできる手を試し、2週間後に同じ方法で量り直す
  • 宴会は、予約のときに幹事と量や食べる時間を相談する
  • 毎日の数字を、厨房の見える場所に貼る

事業・予約への接続

宴会の予約時に量を一緒に考える提案は、幹事にとって費用の相談にもなる。食べきりの工夫を説明できれば、宿の姿勢として客に伝えられる。

Sources / 参考情報

  • Accor(英文) - 食品ロス:AIがアコーのホテルを支える(2023年9月29日)
    裏付け: ウィノー・ビジョンは2016年から捨てられる料理を読み取り、約100軒で使用、フェアモント・ジャカルタは1年で16%(1.6トン)削減、ホテル1軒の食品ロスは平均で年20トン近くでごみの約43%、内訳は加工や作りすぎ45%・皿の残り34%・在庫管理20%
  • WRAP(英文) - フェアモント・ジャカルタは食品ロスをどう25%減らし、21万6,000米ドルを節約したか(2026年8月28日)
    裏付け: GRASP 2030(IBCSD)・IFWC・WRAPの試行、重点は通常3〜5か所、投資がほとんど要らない手、計測と見守りの継続、重点3か所で2週間で成果、毎日の結果と目標の共有、寄付を温かいビュッフェの料理に拡大、まとめの英文
  • GRASP 2030(英文) - GRASP 2030の立ち上げ
    裏付け: 2021年9月8日に開始、開始時の署名者9社、P4Gのイアン・デ・クルーズ氏の「Target, Measure, Act, Invest」
  • IBCSD(英文) - GRASP 2030
    裏付け: 自主的な協定(Voluntary Agreement)、資金はP4G、WRAPの実績をもとに作られた
  • WRAP(英文) - 世界の食品協定ネットワークが食品ロスと排出を大きく減らす(2025年11月7日)
    裏付け: 9か国の10の協定、GRASP 2030の加盟は45、ホテル・飲食店・カフェの分野で試行、南アフリカやイギリスで「目標を決め、量り、手を打つ」の進め方
  • 環境省 - 自治体職員向け 食品ロス削減のための取組マニュアル(PDF)
    裏付け: 福井県が県内5ホテルと3回のワークショップ、宴会後の食べ残しを前期14回・後期9回計量、1人あたり113.2グラム→109.0グラム、6つのポイント、客の求めと取り組みの不一致、平成26年度の費用約10万円・担当者2名
  • 福井県 - ホテルにおける食べきり運動の取組み
    裏付け: 協力した4つのホテル、のっこさんメニューの6つのポイント、宴会5箇条(開始30分、終了10分など席を立たずにしっかり食べる時間を作る)

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