GOAL 7 · TARGET 7.3 エネルギー・脱炭素 4分 / 2544文字 予測と比べる型 #450

稼働率と天気から「使うはずの量」を出し、実績と比べる:ヒルトンの「ライトステイ」の10億ドル超を、予測と警告の仕組みから読む

世界に多くのホテルを持つ「ヒルトン」は、2009年から自社の仕組み「ライトステイ」で、すべてのホテルのエネルギー、水、ごみを記録してきた。ヒルトンは、この仕組みで記録を始めてから、光熱費などで10億ドルを超える節約になったと発表している。この記事では、金額の大きさより、稼働率や天気から使うはずの量を予測し、実績と比べるという仕組みに注目する。

2年の試験を経て、2009年に始まった

ヒルトンの記事によると、ライトステイは2年の厳しい社内試験を経て、2009年に始まった。ホテルの環境の成績を記録するために、自社で作った仕組みだ。今では、世界のすべてのヒルトンのホテルで使われている。

ライトステイでは、ホテルが稼働率や天気などの条件を使って、エネルギー、水、ごみを量り、管理し、これから使う量を予測できる。同じ記事は、ライトステイを始めてから、ヒルトンのホテルが光熱費で10億ドルを超える節約をしたと書いている。

予測より悪ければ、知らせが届く

ヒルトンの2015年10月22日の発表は、ライトステイの改良の中身を説明している。1年がかりの改良は、過去5年分のホテルのデータの分析にもとづくという。

  • 過去のエネルギーと天気のデータから、これから使う量を予測する。稼働率や天気などの条件も考えに入れる
  • ホテルが出したデータを、予想される成績と照らし合わせる
  • 成績が予想を下回ると、ホテルのチームに自動で知らせが届く
  • 各ホテルのエネルギーと水の使用を3か月先まで予測し、食い違いを見つける

ホテルの運営チームやオーナーは、食い違いを見て、手を打てる。さらに、すべてのホテルのチームは、毎年、改善の工事を記録し、やり遂げることを求められている。発表の時点で、その数は4,800件を超えていた。

同じ発表には、米国のコロンバスにあるホテルが、自分の成績を、ヒルトンのホテルの平均を模したモデルと比べられる、という写真の説明もある。このホテルの照明は#447で読んだ。

1軒ごとの目標を、毎年見直す

ヒルトンの2019年4月のエネルギーの方針によると、ヒルトンはライトステイの予測と警告の仕組みでエネルギーを見守っている。さらに、仕組みの中のホテル同士の比較を使って、1軒ごとの省エネの目標を決め、毎年見直している。

毎年のライトステイの見直しで、次の年の省エネの手を探すことも書かれている。成績の低いホテルを見つけて、自己点検の道具や省エネの診断などで支えるという。

10億ドルの中身

同じ方針によると、2008年から2018年までに、ヒルトンは次のように原単位を減らした。

  • 二酸化炭素の排出の原単位:34%減
  • ごみの原単位:41%減
  • エネルギーの使用の原単位:24%減
  • 水の使用の原単位:20%減

この期間に、運営の効率化で10億ドルを超える効果があったという。ヒルトンの2023年12月13日の発表では、2009年以降、二酸化炭素の排出の原単位は44%減り、光熱費で10億ドルを超える節約になったとされている。

2025年のライトステイの資料では、2009年以降の累計の節約は「$1.38B+」(13億8,000万ドル超)で、中身はエネルギー、水、ごみの費用だと書かれている。累計の数字は年とともに増えるので、いつの時点の数字で、何の費用を含むのかを確かめて読む必要がある。資料は、ライトステイのデータは第三者が正確さを確かめているとも書いている。

日本の宿に置き換えると

日本にも、たくさんの事業所の数字を毎年まとめて報告する制度がある。東京都の「地球温暖化対策報告書制度」だ。都のページによると、2010年度に始まった制度で、都内で、エネルギーの使用が原油に換算して1年に1,500キロリットル未満の中小規模の事業所を持つ、または使う事業者が対象だ。

都内に持つ事業所(30キロリットル以上1,500キロリットル未満)の使用量の合計が3,000キロリットル以上の事業者は、報告書の提出と公表が義務になる。それ以外の事業者も、任意で提出できる。都は、1,500キロリットル未満の事業所の目安を、延べ床面積で3万平方メートル程度、光熱費で1年に1億円程度としている。

2025年度からの制度の改正で、都は省エネの「2030年度の達成水準」を2つ示した。事業者が選ぶのはどちらか1つだ。

  • 事業者の取組:報告するすべての都内の事業所の合計エネルギー使用量を、2000年度比で35%減らす
  • 事業所の取組:ベンチマークに合う事業所のエネルギー使用原単位を、都のベンチマークで「レンジA」にする

ベンチマークは、延べ床面積あたりのエネルギー使用量を、業種区分ごとに7段階に分けたものだ。事業者はどちらかを参考に自ら目標と計画を決め、2026年度に出す報告書から、達成状況を毎年度報告する。総量で見るか、原単位で見るか。ヒルトンの数字を読むときと同じ問いが、ここにもある。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

ある宿が、月の電気の使用を、宿泊の数から予測するとする。過去の記録から、宿泊がなくても使う分が月に4,000キロワット時、宿泊1室1泊あたり15キロワット時増えると分かったとする。

ある月の宿泊が500室泊なら、予測は4,000+15×500で1万1,500キロワット時だ。実績が1万2,900キロワット時だったとすると、予測より1,400キロワット時、約12%多い。

宿は差が10%を超えたら点検すると決めておき、空調の設定を調べると、空室の空調が止まっていなかったと分かる。次は、気温による違いも予測に入れて、夏と冬の比べ方をそろえる。

予測と比べて、早く気づく

ライトステイの仕組みは、使った量を記録するだけでなく、稼働率や天気から使うはずの量を予測し、実績と比べて、食い違いに早く気づくことにあった。1軒ごとの目標も、ほかのホテルとの比較から毎年見直している。大きな累計の金額は、その積み重ねの結果として読める。

持ち帰れる知識

  • 使う量は、稼働率や天気などの条件から予測できる
  • 予測と実績の差が大きいときに知らせると、早く手を打てる
  • 累計の金額は、時点と中身(エネルギーだけか、水やごみも含むか)を確かめる
  • 総量と原単位は、別々の物差しとして読む

宿で考えられること

  • 月ごとの電気の使用と宿泊の数を、同じ表に記録する
  • 宿泊の数から予測を作り、差が大きい月に点検する
  • 点検の基準(たとえば10%)を前もって決めておく
  • 原単位と総量の両方を、毎年記録する

事業・予約への接続

予測と比べる仕組みは、設備の不具合を早く見つけ、客の快適さを守ることにもつながる。省エネの数字を伝えるときは、総量か原単位か、いつの時点の数字かを明記する。

Sources / 参考情報

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