試して、基準を決めて、入札する:英国の「トラベロッジ」の388か所のLEDと260軒の空調の制御を、「選び方」の手順から読む
英国の格安ホテルチェーン「トラベロッジ」は、2017年から、エネルギーの会社「SMS」と組んで、388か所のホテルの照明をLEDに替え、続いて260軒に空調の管理の仕組み(BEMS)を入れた。SMSの事例のページは、LEDで導入から20.2ギガワット時の節約、エネルギーと保守の費用で年300万ポンドを超える節約と書く。この記事では、節約の大きさより、大きな数のホテルに入れる前に、何を試し、何を基準にして選んだかという手順に注目する。
まず、チェーン全体に「似た」ホテルで試す
SMSのページによると、SMSは2015年からトラベロッジのエネルギーのサービスの相手を務めてきた。最初の省エネの事業が、英国のホテル全体の照明をLEDに替えることだった。
手順は次のとおりだ。
- 2017年11月:チェーン全体をよく表すホテルを選んで、LEDへの入れ替えを試す
- 2018年3月:本格的に広げ始める
- 2020年7月:388か所のトラベロッジで、入れ替えを終える
試すホテルを「チェーン全体をよく表す」ように選んだ点が大切だ。条件のよい1軒だけで試すと、広げたときに結果が合わなくなる。LEDの事業は、導入から20.2ギガワット時、二酸化炭素に換算して4,283トンを節約したという。
空調の制御は、基準を決めてから入札した
LEDの次に、SMSは2019年から、BEMSを入れ始めた。BEMSは、暖房、換気、冷房などのエネルギーを使う設備を見守り、制御する仕組みだ。
ページによると、SMSは、BEMSを入れる機会を見つけて評価したうえで、機能や費用の手ごろさなどの基準を決め、複数の候補の会社による入札を行った。その結果、「SmarterDM」(現在はグレン・ディンプレックスの一部)を組む相手に選んだ。
工事には、暖房、冷房、換気の新しい制御の設計、納入、取り付け、試運転が含まれる。時間ごとに温度を変え、暑くしすぎや、空室の暖房を避けるためだ。客室には、制御装置とセンサーを組み込んだ新しい電気の暖房器も入れ、BEMSのネットワークにつないだ。
古い制御を「捨てずに、つなぐ」
ページは、トラベロッジのホテルが、多くの商業ビルと同じように、メーカーごとに違う独自の制御の仕組みで建てられていたと書く。そこでSMSは、既存の制御装置をつなぎ、その上から全体を見守り制御するBEMSを設計した。
2022年の終わりまでに、BEMSは260軒のホテルに入った。客室の暖房に使う電気の40%ほど、共用の設備の電気も同じくらいの割合を節約するのが一般的だという。2023年と2024年も工事は続き、すべてのホテルに広げれば、1年に19ギガワット時を超えるエネルギーを節約できると見込んでいる。
20.2ギガワット時はLEDの導入からの累計、19ギガワット時はBEMSを全体に広げたときの1年の見込みで、数字の種類が違う。この違いは#233で詳しく読んだ。会社全体の電気とガスの量と並べた読み方は#403にある。
大きさの目安として、会社の年次報告では、2023年12月期のトラベロッジは598軒・4万6,046室で、電気とガスの合計の使用は2億2,309万4,599キロワット時(約223ギガワット時)だった。会社の持続可能性の報告書では、2024年の合計は2億1,771万1,875キロワット時で、前の年より2.4%減った。
「300万ポンド」は、保守の費用も含む
ページの成果の欄には、「これまでに、エネルギーと保守の費用で、年300万ポンドを超える純節約」とある。LEDは寿命が長く、ランプを替える手間が減る。300万ポンドは電気代だけの数字ではない。
ページに載ったトラベロッジのリスクとコンプライアンスの責任者の言葉では、SMSが400か所を超えるホテルでLEDと賢い制御を広げたことで、それぞれの取り組みが運営の費用を年300万ポンド減らしたという。ページは、「概念上の節約」ではなく、節約を実際の時間で追うことで信頼性を示した点も強調している。
日本の宿に置き換えると
LEDを選ぶときの物差しの一つが、「1ワットあたり何ルーメンの明るさが出るか」(ルーメン毎ワット)だ。日本の省エネ法には、メーカーに効率の目標を課す「トップランナー制度」があり、照明もその対象になっている。
資源エネルギー庁のページによると、照明器具(LED電灯器具)の効率は、定格の光束(ルーメン)を定格の消費電力(ワット)で割った値で、目標年度は2020年度以降の各年度だ。目標の値は、光の色で2つに分かれる。
- 昼光色・昼白色・白色:100.0ルーメン毎ワット
- 温白色・電球色:50.0ルーメン毎ワット
電球(LEDランプなど)は別の区分で、2027年度以降の各年度の目標は、昼光色・昼白色・白色で110.0、温白色・電球色で98.6ルーメン毎ワットだ。
大切なのは、目標が「1台ずつの最低の値」ではないことだ。ページは、メーカーが出荷した台数で効率を加重平均した値が、区分ごとの目標を下回らないこと、と定めている。つまり、目標より効率の低い製品が売られていることもありうる。一方で、製品の効率(固有エネルギー消費効率)や光の色は、カタログなどに表示することになっている。
宿がLEDを選ぶときは、「トップランナー制度があるから、どれでも同じ」と考えず、カタログの効率と光の色を見比べる。トラベロッジが機能や費用の基準を先に決めて入札したように、宿も「同じ明るさで、何ワットか」という基準を先に決めておくと、選びやすい。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)
ある宿が、廊下の照明40台をLEDに替えるとする。廊下の照明は24時間つけたままだとする。候補は2つあり、どちらも明るさは2,000ルーメン、光の色は昼白色だ。
- A:消費電力20ワット。2,000÷20で100ルーメン毎ワット
- B:消費電力16ワット。2,000÷16で125ルーメン毎ワット
1台あたりの差は4ワット。40台で160ワット、1年の8,760時間で1,401.6キロワット時の差になる。電気が1キロワット時30円なら、1年に4万2,048円だ。
宿は、まず数台を試しに付けて、明るさや色が客室の前の廊下に合うかを確かめる。合えば、残りを広げる。電球色の製品と昼白色の製品は、目標の値が違う区分なので、同じ光の色どうしで比べる。
数字より先に、手順を読む
トラベロッジの388か所のLEDと260軒のBEMSは、20.2ギガワット時や年300万ポンドという大きな数字で語られる。けれども、その前には、チェーン全体に似たホテルでの試験、機能と費用の基準、複数の会社の入札、古い制御をつなぐ設計という手順があった。規模の大きさは、手順の確かさから生まれている。
持ち帰れる知識
- 試験は、全体をよく表す場所で行う
- 入札の前に、機能や費用の基準を決める
- 古い制御は、捨てずにつなぐ方法もある
- トップランナー制度の目標は出荷台数の加重平均で、1台ずつの最低の値ではない
宿で考えられること
- 照明の候補を、同じ明るさ・同じ光の色で、ワット数で比べる
- 数台を試しに付けてから、全体に広げる
- 節約は、電気代と交換の手間の両方で記録する
- 今の空調の制御の型と、つなげられるかを業者に確かめる
事業・予約への接続
廊下や客室の明かりの色は、宿の印象を左右する。省エネの製品を選ぶときも、客の目で試してから広げると、快適さと節約の両方を守れる。
Sources / 参考情報
- SMS(英文) - トラベロッジ:エネルギーの費用で300万ポンドの節約
裏付け: 2015年からのパートナー、2017年11月の試験はチェーン全体を表すホテル、2018年3月に本格、2020年7月に388か所、20.2ギガワット時・4,283トン、BEMSは2019年から、機能や費用などの基準と複数社の入札でSmarterDM(現グレン・ディンプレックス)、設計・納入・取付・試運転、客室の電気の暖房器、既存の独自の制御をつなぐ設計、2022年末260軒・客室の暖房の電気の40%・共用も同程度、全体で年19ギガワット時超の見込み、エネルギーと保守の費用で年300万ポンド超の純節約、400か所超、実際の時間での節約の追跡 - 資源エネルギー庁 - 照明器具(トップランナー制度)
裏付け: LED電灯器具の効率は定格光束÷定格消費電力、目標は昼光色・昼白色・白色100.0、温白色・電球色50.0、2020年度以降の各年度、出荷台数による加重平均、固有エネルギー消費効率と光源色の表示 - 資源エネルギー庁 - 電球(トップランナー制度)
裏付け: 2027年度以降の各年度の目標は昼光色・昼白色・白色110.0、温白色・電球色98.6、加重平均、カタログなどへの表示 - Thame and London Limited(英文) - 2023年12月期の年次報告(2024年)
裏付け: 598軒・4万6,046室、電気とガスの合計2億2,309万4,599キロワット時 - Travelodge(英文) - 持続可能性の報告書(2024年)(2025年)
裏付け: 51ページ:2024年の合計2億1,771万1,875キロワット時(2.4%減)