GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 5分 / 2841文字 単位を読む型 #455

「36.61キロワット時」は、1年の量ではない:1891年築のナンタケットのホテルの21枚の太陽熱の集熱器を、面積と出力の換算から読む

米国の太陽熱の集熱器のメーカー「サンアース」は、自社の製品を使ったホテルの事例をいくつも公開している。ロサンゼルスの「カワダ・ホテル」の36枚、マサチューセッツ州ナンタケット島の「ナンタケット・ホテル&リゾート」の21枚などだ。ナンタケットの事例のページには、「定格の出力:562.8÷10.76×0.7=36.61キロワット時」という計算式が載っている。この記事では、この式が何を計算しているのかを読み解く。

3つの事例に書かれていること

サンアースの事例のページから、3つのホテルの内容を並べる。

  • カワダ・ホテル(ロサンゼルス、サウス・ヒル通り200番地):2019年、サンアースの平板型の集熱器36枚で給湯の仕組みを入れた。施工はオール・バレー・ソーラー
  • ナンタケット・ホテル&リゾート(ナンタケット、イーストン通り77番地):2018年の改修で、平板型の集熱器(TRB-26)21枚の給湯の仕組みを入れた
  • マリオットのレジデンス・イン(カリフォルニア州サンカルロス):2017年、施工会社のアズテック・ソーラーが、4フィート×10フィートの平板型の集熱器(TRB-40)60枚で太陽熱の給湯を入れた

カワダ・ホテルの事例は、#321で詳しく読んだ。事例のページには、給湯の費用が「大きく減った」とあるが、具体的な数字はない。

サンアースのホテル向けのページには、太陽熱の給湯で「1年に最大70%」の節約ができる、と書かれている。これはメーカーの一般的な説明で、3つのホテルのどれかで量った数字ではない。レジデンス・インの事例にある「15か月未満で投資を回収することも多い」という文も、太陽熱の給湯全般についての説明として書かれている。

1891年の建物の、2018年の改修

ナンタケットの事例のページによると、ナンタケット・ホテル&リゾートは1891年に建てられた建物だ。2012年に修復と大きな改修を受け、外観は昔のナンタケットの姿のまま、中を現代の旅行者向けにした。

2018年に、ホテルはもう一度改修を行った。その目玉の一つが、21枚の平板型の集熱器で動く新しい給湯の仕組みだった。工事はその年のうちに終わり、2018年12月13日に正式に動き始めた。太陽熱で温めたお湯は、ハイドロフレックス社の貯湯の槽にためる。

古い建物に新しい設備を入れる機会として、大きな改修のときを選んだ形だ。屋根や配管の工事を、改修とまとめて行える。

「562.8÷10.76×0.7」を分解する

ページの式を、1つずつ分けてみる。

  • 562.8:集熱器の面積(平方フィート)と読める。21枚で割ると、1枚あたり約26.8平方フィート
  • 10.76:1平方メートルは約10.76平方フィート。562.8÷10.76で、約52.3平方メートル
  • 0.7:1平方メートルあたり0.7キロワットという換算の係数

国際エネルギー機関の「太陽熱の冷暖房の研究計画」(IEA SHC)は、2004年に、各国の業界団体とともに、集熱器の面積を設備の能力に換算する方法を決めた。統計のために、集熱器の開口部の面積(平方メートル)に0.7を掛けて、熱の能力(キロワット熱)とする。係数は、覆いのない型、平板型、真空管型に同じように使う。

この決まりに従えば、52.3平方メートル×0.7=約36.6は、「キロワット」の能力だ。1時間あたりの熱の出し方の大きさで、1年に集める熱の量(キロワット時)ではない。ページでは単位が「キロワット時」と書かれているが、計算の中身は能力の換算にあたる。また、IEA SHCの決まりは開口部の面積を使うが、ページの562.8平方フィートが、開口部の面積か、外形の面積かは書かれていない。

キロワットとキロワット時

キロワットは「力の大きさ」、キロワット時は「使った量や集めた量」だ。36.6キロワットの能力があっても、1年に集める熱の量は、日射の量や季節、お湯の使い方で変わる。

IEA SHCの2004年の文書も、面積を能力に換算する方法とは別に、面積を1年に得られるエネルギーに換算する方法を、当時検討中だと書いていた。能力と量は、別の物差しだ。

日本の宿に置き換えると

ナンタケットのホテルは、1891年の外観を守りながら、屋根に新しい設備を載せた。日本でも、町並みを守る地域では、屋根の上の設備に決まりがある。

京都市は、2007年(平成19年)9月から新しい景観の政策を進め、屋根の景観を大切な要素と位置づけて、太陽光のパネルにも設置の基準を定めた。市の運用基準によると、勾配のある屋根では、共通の基準として次のことが求められる。

  • パネルの色は、黒、濃い灰色、濃紺色(原則として彩度2以下)
  • 配管や配線の色は、屋根や外壁と同じような色にして目立たないようにする
  • パネルのいちばん上は、建物の棟の高さを超えず、屋根に密着させる
  • 枠は黒か濃い灰色
  • 屋根とパネルにすき間ができるときは、軒先に黒いカバーを付ける

地域によっては、さらに細かい基準があり、設置の前に景観の手続きが必要になる。市は、景観の情報を調べられる仕組みで、場所がどの地区に当たるかを確かめるよう案内している。

ただし、この運用基準は「太陽光パネル」を対象にした基準だ。お湯を作る太陽熱の集熱器にどう当てはまるかは、基準の中には書かれていない。町並みを守る地域で太陽熱を考える宿は、設置の前に、市の景観の窓口に確かめる必要がある。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

ある宿が、屋根に平板型の集熱器を10枚載せるとする。1枚の開口部の面積を2.0平方メートルとすると、合計20平方メートルだ。

  • 能力:20×0.7で14キロワット(熱)

この14という数字を、「1年に14キロワット時」と読んではいけない。1年に集める熱の量は、別に考える。仮に、1平方メートルあたり1年に400キロワット時の熱を集めるとすると、20平方メートルで1年に8,000キロワット時になる。

業者の見積もりを見るときは、次の3つを分けて確かめる。

  • 面積:開口部の面積か、外形の面積か
  • 能力:キロワット(熱)
  • 1年の量:キロワット時。どの地域の日射の量と、どんなお湯の使い方を前提にしたか

単位を見れば、数字の意味が分かる

ナンタケットの1891年の建物に載った21枚の集熱器について、メーカーのページは「36.61キロワット時」と書いた。けれども、式を分解すると、それは集熱器の面積に0.7を掛けた能力の換算で、1年に集める熱の量ではない。カワダ・ホテルの36枚の事例にも、ホテル向けのページの「最大70%」にも、それぞれのホテルで量った数字はない。太陽熱の数字を読むときは、面積、能力、量のどれなのかを、単位から確かめたい。

持ち帰れる知識

  • IEA SHCは、集熱器の開口部の面積×0.7で能力(キロワット熱)に換算する
  • キロワットは能力、キロワット時は量
  • 面積には、開口部の面積と外形の面積がある
  • 京都市の景観の運用基準は、太陽光パネルを対象にしている

宿で考えられること

  • 太陽熱の見積もりを、面積・能力・1年の量に分けて読む
  • 大きな改修のときに、屋根と配管の工事をまとめる
  • 町並みを守る地域では、設置の前に市に確かめる
  • 入れたあとは、お湯を沸かす燃料の量を毎月記録する

事業・予約への接続

歴史のある建物で再生可能エネルギーを使うことは、宿の物語になる。伝えるときは、「最大」や能力の数字ではなく、宿で量った量を使う。

Sources / 参考情報

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