GOAL 7 · TARGET 7.3 エネルギー・脱炭素 5分 / 2982文字 料金の単位を決める型 #468

「2時間無料」と「客ごとの請求」:カリフォルニアの二つの歴史あるホテルの充電器を、日本の「kWh課金」から読む

ホテルの充電器で、客から料金をとるなら、何を単位にするか。時間か、充電した電気の量か。カリフォルニアの二つの歴史あるホテル、サンディエゴ近くの「ホテル・デル・コロナド」と、ロサンゼルスの「ミレニアム・ビルトモア」は、クラウドで管理する充電器を入れ、料金の設定や客ごとの請求ができるようにした。この記事では、二つの事例を「料金の単位」から読み直し、日本で始まった充電した電気の量に応じた料金(kWh課金)のしくみにつなげる。

コロナド:見えなかった請求を、見えるように

充電の工事会社EMCの事例(2023年4月)によると、ホテル・デル・コロナドは、サンディエゴ湾を望む浜辺のリゾートで、歴史的建造物でもある。

  • 早くから充電器を置いていたが、最初の充電器はネットワークにつながっておらず、別の会社が所有し運営していた
  • 関係者はすぐに、客の利用と請求をよく見渡せる、監視と報告の機能と、将来の拡張が必要だと考えた
  • 電気の設備は、ネットワークにつながる普通充電器(レベル2)を最大23基まで置けるよう、すでに強化していた
  • そこで、11基をすぐに加え、需要に合わせて最大12基を足せるようにした

EMCは、監視と報告の機能、見た目、客の人気から選んだ壁かけ型の1口の充電器11基の設置をまとめた。事前に電気の設備と無線の電波を調べ、既存の配線の誤りを見つけてやり直した。組み立てと配線は1日で終えた。

結果として、ホテルは、エネルギーの使用量、温室効果ガスの排出量、客への請求などを記録するクラウドの管理画面を持った。EMCは、将来の機能として、充電が終わったあとも車を置き続ける客への料金(オーバーステイの請求)や、会員プログラム、建物の管理のしくみとの連携を挙げている。

ビルトモア:「2時間無料」から始めた

ミレニアム・ビルトモアは1923年に開業し、1969年にロサンゼルス市の歴史文化記念物に指定された、683室のホテルだ。充電器の会社ヌードゥー(Noodoe)は、2019年11月19日の発表で、ここに充電器「S1000」を10基設置したと伝えた。

  • ホテルは、2019年12月31日まで「2時間無料」の特典を設けた
  • 総支配人のジミー・ウー氏は、充電器を、多くの客に必要な設備であり、時とともに求められる流れになると述べた
  • ヌードゥーの充電器は、クラウドのOSで動き、クレジットカードやスマートフォンで支払える
  • 管理者は、料金を設定し、混む時間帯を変え、充電を見守ることができる

発表は、充電器の数と特典は伝えているが、何を単位に料金をとるかは書いていない。

二つの事例の重なり

この二つのホテルは、この連載で以前にも取り上げた(#248、#268、#313、#404)。元の記事は、ビルトモアについて「充電器を入れて6か月で、EVの客からの収入が15%、直接予約が27%、付帯の支出が12%増えた」と書いていた。しかし、#248で確かめたとおり、この数字はヌードゥーの2019年の発表には書かれていない。別のサイトが出どころとして挙げる「ヌードゥーの2023年の報告」も見つからず、確認できなかった。元の記事が挙げたマリオットの「500軒超」と評価の点数も、一次資料を確認できなかった。この記事では、どちらも使わない。

二つの事例に共通して確かめられるのは、「料金を設定できる」「客ごとに請求を記録できる」という管理の機能だ。

時間で区切るか、量で測るか

充電の料金には、大きく二つの単位がある。

  • 時間で区切る:「2時間無料」「1時間いくら」。わかりやすいが、同じ1時間でも、車によって入る電気の量が違う
  • 量で測る:充電した電気の量(キロワット時)に応じて払う。使った分だけ払うので、納得されやすい

さらにホテルでは、もう一つの問題がある。夜に充電を始めた車が、充電を終えたあとも朝まで場所をふさぐことだ。コロナドの事例が将来の機能として挙げた「オーバーステイの請求」は、この問題への答えの一つだ。

日本の宿に置き換えると

日本では長く、充電の料金は時間で区切るのが一般的だった。経済産業省の充電インフラ整備促進に関する検討会の資料(2023年6月23日)は、その理由と変化を次のように説明している。

  • これまで、計量法では、キロワット時あたりの料金で取引をするには、計量法に基づく検定に合格した計量器で測る必要があった
  • 2020年の電気事業法の改正で「特定計量制度」が設けられ、2022年4月1日に施行された。一定のルールの下で、充電器などの機器の中の計量の機能を、取引に使えるようになった
  • この制度は、事前に届け出た事業者に、機器の計量の精度の確保や、利用者への説明などを求め、その取引については計量法の規定を一部適用しない

経済産業省は2023年10月18日、「充電インフラ整備促進に向けた指針」を公表し、充電した電気の量に応じた料金を、2025年度からサービスとして実現することを目指すとした。

実際に、急速充電の大手のe-Mobility Powerは、2026年4月1日から、直営の急速充電スポットの一部でkWh課金を始めた。

  • 開始時点の対象は96か所。特例計量器を載せた急速充電器のある直営スポット
  • 理由として、車の電池の容量や、車と充電器の充電の力が多様になり、より公平なkWh課金の需要が高まっていることを挙げている
  • 特例計量器がなく、すぐにkWh課金にできないスポットは、立地と最大出力と時間に応じた料金に移った

宿の充電器でkWh課金をするなら、検定に合格した計量器を使うか、特定計量制度の届出をする事業者のサービスを使うことになる。どちらにするかは、充電器を選ぶ段階で確かめておきたい。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

ある宿が、6キロワットの普通充電器を1基置き、2台の電気自動車の客が順に2時間ずつ充電するとする。

  • 車Aは6キロワットで受け入れられ、2時間で12キロワット時入る
  • 車Bは車の側の上限が3キロワットで、2時間で6キロワット時しか入らない

料金を「1時間200円」にすると、AもBも400円を払う。「1キロワット時35円」にすると、Aは420円、Bは210円になる。同じ時間を使っても、入った電気が半分のBにとっては、kWh課金のほうが納得しやすい。

夜の使い方も考える。車Aが夜8時に充電を始め、10時に終わっても、朝8時まで置いたままだと、10時間は充電せずに場所をふさぐ。2台目の客は充電できない。

  • 「充電が終わったら、フロントに連絡して車を動かす」というルールを決める
  • 充電の終わりを客に知らせる機能のある充電器を選ぶ
  • 終わったあとの駐車に料金をかける(オーバーステイの請求)

1基で2台に対応するのか、2基置くのかは、kWhあたりの料金より先に決めておきたい。

料金の単位は、充電器を選ぶ前に

コロナドとビルトモアが入れたのは、料金を設定し、客ごとの請求を記録できる充電器だった。日本では、kWh課金を支える制度が整い、大手の急速充電でも始まっている。宿が充電器を選ぶときは、無料にするのか、時間で区切るのか、量で測るのか、そして充電が終わった車をどうするのかを、先に決めておきたい。

持ち帰れる知識

  • 充電の料金の単位には、時間と電気の量がある
  • 日本では、2022年4月の特定計量制度で、充電器の中の計量の機能を取引に使えるようになった
  • 国は、kWh課金を2025年度からサービスとして実現する目標を掲げた
  • e-Mobility Powerは、2026年4月に96か所でkWh課金を始めた

宿で考えられること

  • 無料、時間、量のどれで料金をとるかを、充電器を選ぶ前に決める
  • kWh課金をするなら、計量器か特定計量制度の対応を確かめる
  • 充電が終わった車を動かすルールを決める
  • 客ごとの利用と請求を記録できる機能を確かめる

事業・予約への接続

充電器があることは、予約の決め手になりうる。予約のページには、充電器の数と出力、料金の単位、予約できるかどうかを書いておくと、客が計画を立てやすい。

Sources / 参考情報

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