GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 5分 / 2845文字 測るものを確かめる型 #472

シャワーの装置が測っているのは、水の量ではなく時間:デンマークの「アグアディオ」の「21.27%」を、測り方と日本の計量のルールで読む

デンマークのアグアディオ(Aguardio)は、シャワー室の壁に貼る小さな装置をつくっている。同社の事例のページは、この装置と環境への呼びかけの言葉を組み合わせると、ホテルの客のシャワーの時間が21.27%短くなったと紹介している。同じ装置の研究は#270で読んだ。この記事では、装置が「何を、どうやって」測っているかに目を向け、宿の水道の請求書の数字との違いを、日本の計量のルールで確かめる。

装置は、四つの手がかりでシャワーを見つける

英国のサリー大学の研究のページによると、試験に使った装置は、シャワーの使用を目立たずに見つけるセンサーと、客に見える時計の表示でできていた。センサーは、動き、音、湿度、温度を測る。

同じ研究に参加した英国のプリマス大学の発表は、もう少し詳しく書いている。

  • センサーは、水の音、動き、温度、湿度を続けて感じ取る
  • これらをもとに、計算の手順(アルゴリズム)で、その時にシャワーが使われているかを見分ける
  • 見分けたシャワーの長さを、表示の時計に映す
  • 研究のときは、シャワーのデータをWi-Fiでクラウドに送った。新しい型ではBluetoothを使う

つまり、この装置は、水道管の中を流れる水の量を直接は測っていない。音や湿度から「シャワーが出ている時間」を見分けている。

事例のページが書いていること

アグアディオの事例のページは、次のように説明している。

  • 学術的な事例で、デンマーク、スペイン、英国、米国の六つの宿で、行動に働きかける試みをした
  • 目的は、客のシャワーの時間を短くして、水とエネルギーを節約し、宿の炭素の排出を減らすこと
  • 2019〜2020年に、実際の宿に装置を付けて行った。宿は、場所、行き先の種類、快適さの水準、滞在の型、事業の型がさまざまだった
  • 環境の価値に訴える言葉を添えた。たとえば「水は命に欠かせない。ここでのふつうのシャワーは3分30秒。時計に勝てるか。節水はあなたから。違いをつくろう」
  • 装置の表示と言葉で、比べる組よりシャワーの時間が21.27%短くなった

同じページの「効果」の欄には、1室1年あたり水4.44立方メートル、エネルギー0.19メガワット時、CO2 33キログラムの節約とある。この数字の読み方は、#474で扱う。

「六つ」と「七つ」と「七か国」

宿の数は、資料によって違う。

  • 事例のページ:デンマーク、スペイン、英国、米国の六つの宿
  • 同社のホテル向けのページ:「七か国のホテルで、シャワーの時間を21.27%短縮」
  • サリー大学の研究のページ:デンマーク、スペイン、英国、米国の七つの宿に276台を付け、三つの実験をした
  • 学術誌の論文(2024年):デンマーク、スペイン、英国の六つの宿で、1万7,500回を超えるシャワー

サリー大学のページが書くように、研究は三つの実験からなる。資料ごとに、どの実験を指しているかが違うと考えられる。ただ、ホテル向けのページの「七か国」は、ほかの資料が挙げる国の数(四か国)と合わない。数字を引くときは、どの資料の、どの実験かを書き添えたい。

測り方そのものが、研究の対象になっている

シャワーの時間をどう測るかは、それ自体が研究の題になっている。2025年には、観光の学術誌に「測れないものは、改善できない:ホテルの客のシャワーの時間を測る技術の比較」という題の論文が出た。

装置の数字を読むときは、次の点を頭に置いておきたい。

  • 音や湿度でシャワーを見分ける方法では、水を止めて体を洗う間をどう数えるかで、時間が変わる
  • 時間を水の量に直すには、そのシャワーの1分あたりの水の量(流量)が要る
  • 流量は、シャワーヘッドや水圧で違う

トイレの水も、清掃の習慣を映す

アグアディオのホテル向けのページは、シャワーのほかに、トイレの漏れのセンサーも紹介している。

  • 漏れているトイレの最大20%を見つける手助けをする
  • トイレを流した記録から、節水の機会を見つけられる。たとえば、ホテルの清掃の職員は、清掃のときにふつう5回トイレを流すが、2〜3回に減らせる

ページには、元ヒルトン・ワールドワイドで業務の効率化を担当した責任者の「清掃の職員が、ホテルの浴室を掃除するときにトイレを5回流すのが習慣になることがよくある」という言葉も載っている。客の行動だけでなく、職員の作業の習慣も、記録から見えてくる。

日本の宿に置き換えると

宿が水道局に払う料金は、水道メーターの数字で決まる。このメーターは、計量法のルールで管理されている。

  • 東京都水道局によると、水道メーターは、計量法の定めにより8年の有効期間に合わせて取り替えなければならない(計量法第72条第2項)
  • 東京都の計量検定所によると、貸しビルやマンション、寮などで、管理者と入居者の間で水道代や電気代を分けるために使う「子メーター」も、計量法で検定の有効期間が決まっている
  • 検定を受けていないものや、有効期間の切れたものは、料金の精算(取引・証明)に使えない。水道メーターの有効期間は8年
  • 東京都の計量検定所は、子メーターを使う管理者に立入検査をし、不備があれば早く交換するよう指導している

宿の建物に、食堂や売店などの入居者がいて、子メーターで水道代を分けている場合は、そのメーターの検定と有効期間を確かめたい。

一方、シャワーの装置の時間は、宿が自分の運営のために使う目安だ。料金の精算に使う数字とは、性質が違う。装置の数字で効果を見るときも、最後は水道メーターの数字と照らし合わせると確かになる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

時間を、水の量に直す

20室の宿で、年5,110室泊、1室泊あたり1.5回シャワーが使われるとする。年7,665回だ。

  • 装置を付けたら、1回の平均が7分から5分30秒に、1分30秒短くなったとする
  • 10リットルのバケツが、シャワーで60秒でいっぱいになったとする。流量は毎分10リットル
  • 1回15リットル、年約115立方メートルの節約になる
  • 水道と下水道で1立方メートル600円なら、年約6万9,000円。お湯をわかす燃料の分は別

同じ時間の短縮でも、流量が毎分8リットルなら、1回12リットル、年約92立方メートル、約5万5,000円になる。装置の時間だけでは、水の量は決まらない。

メーターで確かめる

装置を付ける前と後で、同じ季節の、同じくらいの稼働率の月を選び、水道メーターの数字を比べる。ほかの工事や漏れがあると数字は動くので、その月にあったことも記録しておく。

測っているものを、まず確かめる

アグアディオの装置が測るのは、音や湿度から見分けたシャワーの時間だ。21.27%は、時間の短縮の数字で、水の量に直すには流量が要る。宿の料金を決めるのは、計量法で管理された水道メーターだ。装置の数字は運営の目安として使い、効果はメーターの数字で確かめたい。

持ち帰れる知識

  • シャワーの装置は、水の量ではなく、シャワーの時間を測っている
  • 時間を水の量に直すには、流量が要る
  • 研究の数字は、どの資料の、どの実験かを書き添えて引く
  • 日本では、料金の精算に使うメーターは、計量法の検定と有効期間が要る

宿で考えられること

  • シャワーの流量を、バケツと時計で測っておく
  • 子メーターで入居者と水道代を分けているなら、検定の有効期間を確かめる
  • 清掃のときにトイレを何回流しているか、作業の手順を見直す
  • 装置の効果は、水道メーターの数字でも確かめる

事業・予約への接続

シャワーの時計は、客が自分で節水に参加できる仕掛けだ。伝えるときは、「時間が何%短くなったか」と「水が何リットル減ったか」を分けて書くと、誤解が少ない。

Sources / 参考情報

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