GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 5分 / 3244文字 公的な目安と並べる型 #474

1室で年4.44立方メートルは、「シャワーを1日1分短く」とほぼ同じ量:デンマークの「アグアディオ」の節約の数字を、日本の省エネの目安と並べて読む

デンマークのアグアディオ(Aguardio)は、シャワーの時間を表示する装置の効果を、「1室1年あたり、水4.44立方メートル、エネルギー0.19メガワット時、CO2 33キログラムの節約」と紹介している。別の資料には「約48ドル」という金額もある。同じ装置の研究は#270と#472で読んだ。この記事では、この四つの数字を割り算して中身を確かめ、資源エネルギー庁の「シャワーを1日1分短くした場合」の目安と並べてみる。

四つの数字と、二つの書き方

アグアディオの事例のページと、ホテル向けのページは、どちらも次のように書いている。

  • 水:1室1年あたり4.44立方メートル(4,440リットル)
  • エネルギーとCO2:1室1年あたり0.19メガワット時と33キログラム

デンマークのオーフス大学の事例のページは、同じ研究を紹介して、次のように書いている。

  • デンマーク、スペイン、英国、米国のホテルで、2万5,488回のシャワーを測った
  • 表示だけでシャワーの時間が13.56%、言葉を加えると21.27%短くなった
  • この結果は、「1回のシャワーにつき1年あたり」約48ドル、4.44立方メートル、0.19メガワット時、33キログラムの節約にあたる

同じ4.44立方メートルが、一方では「1室1年あたり」、もう一方では「1回のシャワーにつき1年あたり」と書かれている。1回のシャワーで4.44立方メートルを節約することはありえないので、「1室1年あたり」と読むのが自然だ。ただ、どちらの資料も、1室で1年に何回シャワーが使われる前提かは書いていない。

割り算で、中身を確かめる

四つの数字を互いに割ると、次の目安が出る。いずれも資料には書かれておらず、計算で出した数字だ。

  • エネルギー÷水:190キロワット時÷4.44立方メートルで、水1立方メートルあたり約43キロワット時。水をお湯にするのに使ったエネルギーと読める
  • CO2÷エネルギー:33キログラム÷190キロワット時で、1キロワット時あたり約0.17キログラム
  • 金額÷水:48ドル÷4.44立方メートルで、水1立方メートルあたり約11ドル。水の代金と、お湯をわかすエネルギーの代金を合わせた数字と読める

水1立方メートルの温度を1度上げるには、約1.16キロワット時の熱が要る。1立方メートルあたり約43キロワット時なら、損失がないとしても、水を約37度温める計算になる。冷たい水をシャワーの温度に上げる量として、おかしくはない。

4.44立方メートルを、時間に直すと

4.44立方メートルを1年365日で割ると、1日約12リットルになる。

資源エネルギー庁の省エネポータルサイトは、シャワーを1分間使うと12リットルのお湯が流れると説明している。この流量を使うと、1室1年4.44立方メートルは、シャワーを1日約1分、1年続けて短くした量とほぼ同じになる。

日本の省エネの目安と並べる

省エネポータルサイトは、「45℃のお湯を流す時間を1分間短縮した場合」の1年の効果を、次のように示している。

  • ガス:12.78立方メートルの省エネ、約2,070円の節約
  • 水道:4.38立方メートルの節水、約1,140円の節約
  • 原油に換算して14.82リットル、CO2の削減量28.7キログラム
  • 合計で約3,210円の節約

アグアディオの数字と並べると、驚くほど近い。

  • 水:アグアディオ4.44立方メートル、省エネポータル4.38立方メートル
  • CO2:アグアディオ33キログラム、省エネポータル28.7キログラム

エネルギーも比べてみる。省エネポータルの算出の根拠では、ガスの料金は45メガジュールあたりで換算している。12.78立方メートル×45メガジュールは約575メガジュール、約160キロワット時になる。水1立方メートルあたりでは約36キロワット時で、アグアディオの約43キロワット時と近い。CO2を1キロワット時あたりにすると、省エネポータルは約0.18キログラムで、こちらもアグアディオの約0.17キログラムと近い。

料金の単価は、近くない

一方、金額は大きく違う。

  • アグアディオ:水1立方メートルあたり約11ドル(水とエネルギーの合計)
  • 省エネポータル:約3,210円÷4.38立方メートルで、水1立方メートルあたり約733円

省エネポータルの算出の根拠によると、水道は1立方メートル260円(水道料金136円、下水道使用料124円)、ガスは1立方メートル162円で換算している。いずれも家庭の料金の平均をもとにした単価だ。アグアディオの48ドルが、どの国の、どんな単価で計算されたかは、資料に書かれていない。

金額は、国、地域、契約、為替で大きく変わる。量(立方メートル、キロワット時、キログラム)は比べられても、金額はそのまま比べられない。

同じ研究から出た、別の見込み

サリー大学の研究のページは、同じ装置について、別の見込みを書いている。

  • 試験では、1回のシャワーで最大13リットルを節約でき、1室1年あたり60〜90ユーロの節約になる
  • 研究の成果を広げると、1年に約11万立方メートルの水、4,230メガワット時、420トンのCO2の節約が見込まれる
  • 1台(ホテルの1室)あたり、1年に約90ユーロの節約になる

この見込みを割り算すると、水1立方メートルあたり約38キロワット時、1キロワット時あたり約0.10キログラムのCO2になる。CO2の比率が、アグアディオの資料の約0.17キログラムと違う。お湯をわかす燃料や電気の前提が違うのかもしれないが、ページには書かれていない。

日本の宿に置き換えると

省エネポータルの目安は、家庭のガスの給湯器で、45℃のお湯を使う前提の数字だ。宿で使うときは、次の点を自分の宿に合わせて直す必要がある。

  • お湯の温度:宿の給湯の設定は45℃とは限らない
  • 給湯の方式:ガス、灯油、電気のヒートポンプなどで、使うエネルギーとCO2が違う
  • 料金:事業用の水道や下水道は、使う量が多いほど1立方メートルの単価が上がる地域がある。ガスも契約で違う
  • 回数:客室のシャワーが1年に何回使われるかは、稼働率と人数で決まる

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

アグアディオの数字を、20室の宿に当てはめる

20室の宿で、アグアディオの「1室1年4.44立方メートル」がそのまま当てはまるとする。

  • 水:20室×4.44立方メートル=88.8立方メートル
  • 水道と下水道で1立方メートル600円なら、年約5万3,000円
  • お湯をわかすのが家庭と同じガスの給湯器だとして、省エネポータルの比率(水4.38立方メートルにガス12.78立方メートル)を当てはめると、ガスは約259立方メートル
  • ガス1立方メートル162円(省エネポータルの家庭の単価)なら、約4万2,000円
  • 合わせて年約9万5,000円

ただし、稼働率が低い宿や、1室の人数が少ない宿では、1室あたりのシャワーの回数が減り、節約も小さくなる。アグアディオの数字が、どんな稼働率を前提にしているかはわからない。

自分の宿の1分を出す

自分の宿の数字で考えるなら、次の順に進める。

  • シャワーの流量を、バケツと時計で測る(たとえば毎分10リットル)
  • 1年のシャワーの回数を、延べ宿泊客の数から見積もる
  • 「1回1分短くなったら」の水の量を出し、自分の宿の水道、下水道、燃料の単価を掛ける

量はそろう、金額はそろわない

アグアディオの「1室1年4.44立方メートル」は、シャワーを1日約1分短くした量に近く、日本の省エネポータルの目安ともよく合う。エネルギーやCO2の比率も近い。一方、48ドルという金額は、単価の前提がわからず、そのまま日本の宿には持ち込めない。数字を借りるときは、量の数字を借り、金額は自分の宿の単価で計算し直したい。

持ち帰れる知識

  • 同じ数字に「1室1年」と「1回1年」の二つの書き方がある。1室1年と読むのが自然
  • 4.44立方メートルは、毎分12リットルのシャワーを1日約1分短くした量に近い
  • 省エネポータルの「1日1分短縮」の目安と、水とCO2の量はよく合う
  • 金額は単価の前提で大きく変わり、そのままは比べられない

宿で考えられること

  • シャワーの流量と、1年のシャワーの回数を見積もる
  • 給湯の温度と方式(ガス、灯油、電気)を確かめる
  • 自分の宿の水道、下水道、燃料の単価で計算し直す
  • 海外の数字は、量の数字を借り、金額は借りない

事業・予約への接続

「シャワーを1日1分短くすると、1年でこれだけ」という伝え方は、客にも職員にもわかりやすい。数字は、日本の公的な目安を添えると、信頼されやすい。

Sources / 参考情報

  • Aguardio(英文) - ホテルの事例
    裏付け: 1室1年あたり4.44立方メートル(4,440リットル)、0.19メガワット時、33キログラムのCO2
  • Aguardio(英文) - ホテル・観光向けの解決策
    裏付け: 1室1年あたり4.44立方メートル(4,440リットル)、0.19メガワット時のエネルギーと33キログラムのCO2
  • Aarhus University(英文) - アグアディオ(デジタル事業開発の事例)
    裏付け: デンマーク・スペイン・英国・米国のホテルで2万5,488回、13.56%と21.27%、約48ドル・4.44立方メートル・0.19メガワット時・33キログラムを「1回のシャワーにつき1年あたり」と記載
  • University of Surrey(英文) - シャワーを賢く:研究の概要
    裏付け: 1回最大13リットル、1室1年60〜90ユーロ、年約11万立方メートル・4,230メガワット時・420トンの見込み、1台(1室)あたり年約90ユーロ
  • 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト - 風呂・トイレ
    裏付け: 45℃のお湯を流す時間を1分間短縮した場合、ガス12.78立方メートル・約2,070円、水道4.38立方メートル・約1,140円、原油換算14.82リットル、CO2 28.7キログラム、合計約3,210円、シャワー1分間で12リットル
  • 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト - 無理のない省エネ節約(算出根拠)
    裏付け: ガス162円/立方メートル(45メガジュールに換算)、水道260円/立方メートル(水道料金136円・下水道使用料124円)、料金単価は時期や地域で異なる

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