料金が上がった年の節水は、どう測るか:イングランドの28室の宿「ザ・ロッジ・アット・ウィンチェルシー」の2,500ポンドの改修を請求書で読み、日本の水道料金の改定につなげる
イングランド南東部のサセックスにある28室の宿「ザ・ロッジ・アット・ウィンチェルシー」は、2013年の秋、客室のシャワー、蛇口、トイレに節水の部品を付けた。費用は約2,500ポンド。その結果は、2014年9月にブライトン大学で開かれた水の効率の会議で、論文として報告された。
この記事では、改修の中身に加えて、論文が「水の量」と「料金」を分けて確かめた方法に注目する。改修のあいだに水道料金が上がっていたからだ。最後に、日本で続く水道料金の改定とつなげる。
宿と水道会社と大学が組んだ
論文の著者は4人。宿の総支配人、建材の販売会社チャンドラーズの技術の担当者、地域の水道会社サザン・ウォーターの節水の担当者、ブライトン大学の水の効率の研究室の研究者だ。
宿は、28室のほか、受付、バーとレストラン、厨房、宴会場1室、客とスタッフのトイレ、洗濯の設備、スタッフの寮を持つ。客は年に約6,160人。
二つの組織には、それぞれの理由があった。
- 宿:客室の水と電気は、客が使うので見張りにくい。水を減らしつつ、客の快適さは下げないことを目指した
- 水道会社:中小の事業者に新しい製品やサービスをどう届けるかを知るための試験だった。同じ時期に、大学、ゲストハウス、美容院、学校でも調べていた
水道会社がこの宿を選んだ理由の一つは、総支配人がもともと、トイレのタンクに入れて流す量を減らす袋を、自分から頼んでいたことだった。
客室が、水の8割
2012年5月からの1年の請求書と、2013年10月の水まわりの調査から、客室(清掃を含む)が宿全体の水の8割強を使っているとわかった。
客室の水の内訳は、英国の住宅の節水の計算方法と稼働のデータから、次のように見積もられた。
- シャワー:53%
- トイレ:18%
- 清掃:15%
- 蛇口:14%
清掃の水は見落とされやすい。論文は、トイレ1回、蛇口とシャワー1分ずつと仮定すると、清掃は客室の水の最大19%で、部屋に客が0.5〜1人増えたのと同じくらいになることがある、と書いている。
替えたものと、見込み
改修は、すぐに付けられて、宿の営業を止めず、大きな投資の要らないものに絞った。
- シャワー:水圧の高い部屋では、メスベン社の節水シャワーで、最大で毎分9リットル減る。平均8分浴びると仮定して、シャワーの水を35〜40%減らせる見込み。客が4〜5分に縮めれば、さらに20%
- 蛇口:水の蛇口は平均毎分20リットル、お湯の蛇口は毎分8リットル出ていた。流量の調整器を付けた混合水栓は毎分5リットル
- トイレ:1回13リットルのタンクに、大と小を分ける部品(エコベータ)を付けて、平均9.5リットルに。流す水を20〜25%減らせる見込み
- 清掃:節水の器具で、清掃の水を25〜35%減らせる見込み
- 外:200リットルの雨水タンクを3台
費用は約2,500ポンド。内訳は、工賃800ポンド(移動の費用を含む)と、材料1,700ポンドだ。
4か月の請求書で確かめた
改修のあと、論文は2013年11月から2014年2月までの122日の請求書を、前の年の同じ時期と比べた。前の年の請求書は期間が190日だったので、122日分に直してから比べている。
- 水の量:686.54立方メートルから521.54立方メートルへ、24%減
- 料金(付加価値税を含む):2,568.98ポンドから2,049.73ポンドへ、519.25ポンド減、約20%減
水が24%減ったのに、料金は20%しか減っていない。理由は、2013年2月から、水道の料金が約3%、下水道の料金が約5%上がっていたことだ。論文は、料金の改定がなかった場合の請求額も計算し、それと比べると24%の節約になる、と示した。
客1人あたりでは、改修のあとの4か月の平均が1日242リットル(月ごとに210〜267リットル)。1年では210〜250リットルになる見込みだと書いている。
回収の年数は、今の節約の水準で1.25年、料金の値上げを考えに入れると約1年とされた。
数字の単位に気をつける
この論文には、読むときに気をつけたい点がいくつかある。
- 改修の前の使用量は「1床あたり270〜310立方メートル」と書かれている。しかし、請求書の年1,909立方メートル(377日分)を客6,160人で割ると、1人あたり約310リットルになる。立方メートルではなく、リットルと読むのが自然だ
- 比べるグラフの目盛りは「リットル」だが、表では同じ数字(522と687)が立方メートルになっている
- 論文は比べた期間を「四半期」と呼ぶが、表の期間は122日だ。122日分の519.25ポンドを365日に直すと約1,553ポンドで、2,500ポンドの回収は約1.6年になる(InnBuddyによる計算)。論文の1.25年が、どのように1年分に直したものかは書かれていない
また、水道料金の表では、下水道の量を水の量の95%として計算している。英国では、使った水がすべて下水に流れるとは扱っていないことがわかる。
トイレの水は、かえって増えた
改修の前と後で、客室の水の内訳も比べている。
- シャワー:52.9%から50.4%へ
- 蛇口:13.9%から12.5%へ
- トイレ:17.7%から21.1%へ
- 清掃:15.6%から16.0%へ
シャワーと蛇口の水は減ったが、トイレの水は測ってみると増えていた。清掃の水もわずかに増えた。論文は、客の使い方の変化、古いタンクに付けた部品の性能のために何度も流すこと、大と小のボタンの使い分けの誤りなどを理由の候補に挙げ、さらに調べるとしている。
論文はまた、4か月だけのデータなので、節約が続くかどうか、季節で変わるかどうかは、これからの測定で確かめる必要がある、と書いている。
日本の宿に置き換えると
日本でも、水道料金の値上げが続いている。日本水道協会が2025年に公表した、水道料金の制度に関する調査の結果(概要版)によると、次のとおりだ。
- 2019〜2024年度に料金を改定した、水道を家庭や事業所に届ける事業体の回答では、値上げの改定率の平均は16.0%、最大は44.0%だった
- 改定の中身では、回答の60.2%が基本料金を引き上げていた
国の資料も、同じ流れを示している。
- 国土交通省の「令和7年版 日本の水資源の現況」によると、10立方メートルあたりの家庭用の水道料金の全国平均は、2022年度に1,581円で、増加傾向にある
- 国土交通省の2024年4月の全国水道主管課長会議の資料によると、2022年度(2023年4月1日を含む)に値上げをした事業者は59、値下げは4。最高の値上げ率は54.0%で、15%以上の値上げをした事業者は19だった
- EY Japanと水の安全保障戦略機構の2024年の試算では、2046年までに約96%の事業体で値上げの可能性があり、値上げ率は全体の平均で48%とされた。これは将来の試算で、決まった値上げではない
ザ・ロッジ・アット・ウィンチェルシーの値上げは約3%と5%だった。日本で10%を超える値上げがあれば、前の年の請求額と比べるだけでは、節水の効果はもっと見えにくくなる。
もう一つは、基本料金だ。基本料金は、使う水の量が減っても下がらない。基本料金の割合が大きいほど、料金の減り方は、水の減り方より小さくなる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)
年に1,200立方メートルの水を使う宿が、節水の部品で水を20%減らしたとする。上下水道の料金は、量に応じた部分が1立方メートル500円、基本料金が月2万円とする。
- 改修の前:1,200立方メートル×500円+2万円×12か月=84万円
- 改修のあと(960立方メートル):48万円+24万円=72万円。12万円減で、料金は約14.3%減。水の20%より小さい
次の年に、料金が量の部分も基本料金も16%上がったとする(1立方メートル580円、月2万3,200円)。
- 改修のあとの請求額:960立方メートル×580円+2万3,200円×12か月=83万5,200円
- 前の年の請求額84万円と比べると、減ったのは4,800円、約0.6%だけ
- 新しい料金で改修の前の使い方を計算すると97万4,400円。それと比べれば、13万9,200円、約14.3%の節約になる
請求額だけを並べると、節水はほとんど効かなかったように見える。水の量で比べ、料金は同じ料金表で計算し直すと、効果が見えてくる。
水の量と料金を、分けて確かめる
ザ・ロッジ・アット・ウィンチェルシーの改修は、約2,500ポンドの小さな投資だった。論文は、水の量の24%と、料金の20%を分けて示し、料金の値上げを外した24%も計算した。トイレの水が増えたことも隠さずに書いた。
料金が上がる時代には、節水の効果は、まず立方メートルで確かめる。料金で伝えるときは、同じ料金表で計算し直す。その二つを分けることが、小さな宿の改修を正しく評価する近道になる。
持ち帰れる知識
- 客室の水には、清掃の水も含まれる。客室の水の最大19%という見積もりもある
- 料金が上がった年は、請求額の比較だけでは節水の効果が小さく見える
- 基本料金の割合が大きいほど、料金の減り方は水の減り方より小さくなる
- 論文の数字も、単位と期間を確かめてから使う
宿で考えられること
- 節水の効果は、まず水道メーターの立方メートルで、前の年の同じ時期と比べる
- 料金で伝えるときは、同じ料金表で計算し直す
- トイレ、蛇口、シャワー、清掃に分けて、どこが減り、どこが増えたかを見る
- 地元の水道の料金改定の予定を、水道事業者の発表で確かめておく
事業・予約への接続
小さな改修でも、水の量と料金を分けて示せば、取引先や金融機関にも説明しやすい。料金が上がる時代には、節水は費用の上昇を和らげる手段にもなる。
Sources / 参考情報
- WATEF(英文) - 水の効率の会議2014 予稿集(PDF)(2014年9月、ブライトン大学、29〜37ページ「水の効率のための改修:ホテルの事例研究」)
裏付け: 著者4人と所属、28室と施設の構成、宿と水道会社の理由、ゲストハウス・美容院・学校・大学での調査、トイレの袋の依頼、客室が全体の8割強、内訳53・18・15・14%、清掃は最大19%で0.5〜1人分、最大毎分9リットル・8分で35〜40%・4〜5分でさらに20%、蛇口の毎分20・8・5リットル、13リットルを平均9.5リットル・20〜25%、清掃25〜35%、200リットルの雨水タンク3台、約2,500ポンド(工賃800・材料1,700)、270〜310立方メートルの記述、年1,909立方メートル(377日)、客約6,160人、242リットル(210〜267)、210〜250リットルの見込み、122日の表で686.54と521.54立方メートル・2,568.98と2,049.73ポンド、519.25ポンド、料金約3%と5%の値上げ、値上げを外して24%、回収1.25年と約1年、下水道は95%で計算、内訳の前後の比較、トイレの増加と理由の候補、4か月だけのデータ - 日本水道協会 - 水道料金制度に関する調査(アンケート)結果(概要版)(PDF)(2025年)
裏付け: 回答937事業体、料金改定年度2019〜2024年度、末端給水の値上げの平均16.0%・最大44.0%、基本料金の引き上げ60.2% - 国土交通省 - 令和7年版 日本の水資源の現況(PDF)(2025年)
裏付け: 10立方メートルあたりの家庭用料金の全国平均は2022年度に1,581円で増加傾向 - 国土交通省 - 令和6年度 全国水道主管課長会議 資料(PDF)(2024年4月22日)
裏付け: 2022年度(2023年4月1日を含む)に値上げ59事業者・値下げ4事業者、最高の値上げ率54.0%、15%以上の値上げは19事業者、料金体系のみの改定も含む - EY Japan - 人口減少時代の水道料金はどうなるのか?(2024版)を発表(2024年4月24日)
裏付け: 水の安全保障戦略機構との共同研究、2046年までに約96%の事業体で値上げの可能性、値上げ率は全体平均で48%