シャワーの水は、どこまで減らせるのか:ドイツの山の宿「ベルクホテル・レーレック」の節水シャワーを「流れの下限」から読み、日本のガス給湯器の「号数」につなげる
ドイツ南東部、ベルヒテスガーデン地方のラムザウにある山の宿「ベルクホテル・レーレック」は、館内のシャワーヘッドと浴室の水栓を節水型にしている。持続可能な旅の情報サイト「グリーン・トラベル・ブログ」は2023年、この宿が年に750万リットルの水を節約していると紹介した。
この事例は#246で、節約の額を決める「1人1日何分浴びるか」という計算の前提から読んだ。この記事では逆の方向から考える。シャワーの流れは、どこまで減らしてよいのか。その下限を決めるのは、客の気分と、お湯をつくる機械だ。
毎分20リットルのシャワーもある
ブログはまず、高級ホテルで流行してきた「レインシャワー」や「滝のシャワー」を取り上げている。これらは毎分20リットルを使い、5分で100リットルになる、と書いている。
ブログは、シャワーの水の量を次のように並べている。
- 毎分6リットルの節水シャワー:5分で30リットル
- 毎分12リットルのふつうのシャワーヘッド:5分で60リットル
- 「ヨーロッパの平均的な人」は、1回に100リットルを使うといわれる
同じ5分でも、シャワーヘッドによって水の量は3倍以上違う。
レーレックの数字をおさらいする
ブログによると、レーレックの数字は次のとおりだ。
- 年に750万リットルの節約。これは宿自身の数字
- 館内すべてに節水型のシャワーヘッドと浴室の水栓を付けたことで、比べられるホテルより41%少ない水ですんでいる
ブログは、節水シャワーについて「水がちょろちょろとしか出ない」という心配を「ナンセンス」と書き、レーレックのシャワーでは、節水型のヘッドから水が出ていることに気づきもしないだろう、と紹介している。
下限を決めるもの、一つ目:客の気分
ブログには、ほかの宿の声も並んでいる。
- オーストリア・チロル州ゼーフェルトの家族経営の「ホテル・クロスターブロイ」は、すべてのシャワーに流量の制限器を付けたあと、水の使用が30%減ったと報告している
- イタリア・南チロルのリッテンにある「ホテル・ヴァイラーホーフ」のクラウス・ピヒラーさんは、節水シャワーは楽しいかと聞かれて「もちろん」と答える。この宿のシャワーは毎分6リットル。「それより少ないと、休暇らしい気分にならない」と話す
この宿は、標高1,200メートルの湖のすぐそばにある。ブログは、客は飲み水を使わずに、湖で自然に水を浴びることもできる、と書いている。
ピヒラーさんの「毎分6リットル」は、節水と客の満足の釣り合いを、宿の主人が自分の言葉で示した数字だ。
泡と循環で、少ない水を補う
少ない水でも満足を保つ工夫もある。
- オーストリアの東チロルの「ナトゥアホテル・アウトサイド」は、シャワーを新しい節水の仕組みに切り替えている最中だった。空気を混ぜるシャワーヘッドで30%の水を減らし、毎分5リットルしか使わないという。石灰がつきにくく、掃除も楽になると経営者は話している
- 水に空気の泡が混ざると、水が泡立って量が多く感じられる、とブログは説明する
- ドイツ・エアランゲンの「クリエイティブホテル・ルイーゼ」には、使った水をろ過し、温め直して、何度も使うシャワーがある。1回のシャワーに使う水は全部で5リットルだという。このシャワーは#224で詳しく読んだ
流れを減らすだけでなく、浴び心地をどう保つかが、下限を少し下げる鍵になる。
下限を決めるもの、二つ目:お湯をつくる機械
日本の宿で節水シャワーを考えるとき、もう一つの下限がある。お湯をつくる機械だ。
給湯器の大手ノーリツは、「1か所からだけお湯がでない」という質問に、次のように答えている。
- 給湯機器に流れる水の量が少ないと、お湯にならないことがある
- 2つのハンドルの水栓なら、水のハンドルを閉めて、お湯のハンドルだけを開いて量を増やす
- サーモスタットの混合栓では、水栓の温度と給湯器のリモコンの温度が近いとお湯にならない。約10℃の差をつける
- 節水シャワーヘッドに替えたなど、使い方が変わったことが原因の場合も考えられる
つまり、シャワーヘッドで流れを絞りすぎると、瞬間式の給湯器がお湯をつくらないことがある。どこまで絞れるかは、機種によって違う。替える前に、給湯器の取扱説明書や販売店で確かめたい。
日本の宿に置き換えると
給湯器の力は「号数」で表される。ノーリツの説明によると、次のとおりだ。
- 号数は、水の温度より25℃高いお湯を、1分間に何リットル出せるかを表す。24号なら、毎分24リットル
- 出せるお湯の量は、号数×25÷(設定温度−水の温度)で計算できる
- 24号で設定温度40℃の場合、水の温度が20℃の夏は毎分30リットル、5℃の冬は毎分17.1リットル
冬は、同じ給湯器でも出せるお湯がほぼ半分になる。給湯器1台で、いくつかのシャワーを同時にまかなう小さな宿では、シャワー1か所の流れが、同時に何人が浴びられるかを左右する。
また、資源エネルギー庁の省エネポータルサイトは、家庭で45℃のお湯を流す時間を1日1分短くすると、1年でガス12.78立方メートル、水4.38立方メートル、合わせて約3,210円の節約になると試算している。シャワーは1分間に12リットルとしている。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)
給湯器1台で、同時に何か所のシャワーをまかなえるか
24号の給湯器1台で、設定温度40℃のシャワーをまかなう宿を考える。ノーリツの式で、冬(水5℃)は毎分17.1リットル、夏(水20℃)は毎分30リットルのお湯が出せる。
- シャワー1か所が毎分10リットルの場合:冬は約1.7か所、夏は3か所
- シャワー1か所が毎分7リットルの場合:冬は約2.4か所、夏は約4.3か所
冬の朝、毎分10リットルのシャワーが2か所で同時に使われると、お湯が足りなくなるおそれがある。毎分7リットルなら、2か所はまかなえる計算だ。ただし、流れを下げすぎると、今度は給湯器がお湯をつくらない下限に近づく。
水の量
20室、稼働率70%、1室に1.8人の宿(年9,198人泊)で、シャワーを毎分10リットルから7リットルに替え、1人1日7分浴びるとする。
- 1人1日の節水:毎分3リットル×7分=21リットル
- 1年:21リットル×9,198人泊=約193立方メートル
- 上下水道を1立方メートル600円とすると、約11.6万円
下限を知ってから、絞る
レーレックは、館内の水まわりを節水型にして、比べられるホテルより41%少ない水ですんでいるという。一方、ヴァイラーホーフの主人は、毎分6リットルより少ないと休暇の気分にならないと話す。
シャワーの流れは、少なければ少ないほどよいわけではない。客の気分と、お湯をつくる機械という二つの下限を確かめたうえで、その少し上を選ぶ。冬にも、同時に何人が浴びても、お湯が気持ちよく出ることが、節水シャワーが長く使われる条件になる。
持ち帰れる知識
- シャワーの水の量は、ヘッドによって同じ5分で3倍以上違う
- 流れの下限は、客の気分と、お湯をつくる機械の両方で決まる
- 瞬間式の給湯器は、流れる水が少ないとお湯をつくらないことがある
- 給湯器の号数から、冬と夏に出せるお湯の量を計算できる
宿で考えられること
- 今のシャワーの流れを、バケツと時計で測る
- 給湯器の号数と、取扱説明書の注意を確かめてから、シャワーヘッドを選ぶ
- 冬の朝、何か所のシャワーが同時に使われるかを数える
- 替える前に、スタッフが冬の水温で浴び心地を試す
事業・予約への接続
節水シャワーは、「水が弱い」と感じられると、口コミで損をする。流れの下限を確かめてから選べば、節水と満足の両方を守れる。
Sources / 参考情報
- Green Travel Blog(英文) - シャワーを浴びて、世界を救おう(2023年6月20日)
裏付け: レインシャワーと滝のシャワーは毎分20リットル・5分で100リットル、レーレックは年750万リットル(宿自身の数字)・館内すべての節水型シャワーヘッドと水栓で比べられるホテルより41%少ない、ちょろちょろの心配はナンセンス、クロスターブロイは制限器で30%減、ヴァイラーホーフのピヒラーさん・毎分6リットル・それより少ないと休暇の気分にならない・標高1,200メートルの湖、ルイーゼの循環シャワーは全部で5リットル、毎分6リットルで5分30リットル・毎分12リットルで60リットル・平均的なヨーロッパの人は100リットル、ナトゥアホテル・アウトサイドは空気を混ぜて30%減・毎分5リットル・石灰がつきにくい・泡で量が多く感じる - ノーリツ - 1か所からだけお湯がでない(よくあるご質問)
裏付け: 給湯機器に流れる水が少ないとお湯にならないことがある、2バルブ水栓はお湯側だけで量を増やす、サーモスタット混合栓は約10℃の差、節水シャワーヘッドへの交換など使用環境の変化による場合も - ノーリツ - 教えて!夏の給湯機器
裏付け: 号数は水温+25℃のお湯を1分間に何リットル出せるか、出湯量=号数×25÷(設定温度−水温)、24号・40℃で夏(水20℃)毎分30リットル・冬(水5℃)毎分17.1リットル - 資源エネルギー庁 省エネポータルサイト - 風呂・トイレ
裏付け: 45℃のお湯を流す時間を1分間短縮した場合、ガス12.78立方メートル、水道4.38立方メートル、合計約3,210円、シャワー1分間で12リットル - Berghotel Rehlegg(ドイツ語) - ベルクホテル・レーレック
裏付け: ラムザウにある山のホテル