GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 5分 / 2824文字 段取りから読む型 #479

使い直す水の管を、水道の管につながない:ベルギー・ゲントの「イビス」の計画が挙げた「配管、表示、タンク」を、日本の水道のルールで読む

ベルギー北部の町ゲント。ダンポールト駅の近くにある「イビス」のホテルが、シャワーで使った水を処理して、トイレを流す水に使う計画を進めている。この計画は、#188でシャワーが重なる朝とタンクの役割から、#231で数字の範囲から、#401でバルセロナの条例の線引きと比べて読んだ。

4回目となるこの記事では、計画を報告した欧州の研究プロジェクトがまとめた「学び」の一つに注目する。配管と表示と、ためておくタンクの大きさ。つまり、工事の前の段取りだ。日本で同じことをするなら、水道のどんなルールに気をつけるのかも見ていく。

計画の数字をおさらいする

北海の周りの国々が参加する欧州の協力事業「インターレグ北海」の研究プロジェクト「ANCHOR」は、2024年12月、ゲントで開いた水の再利用の学び合いの会の報告を公表した。イビスについては、次のように書いている。

  • 281室で、週末には600人が泊まれる。年に1万350立方メートルを超える水を使う
  • シャワーの水を処理する装置を入れ、トイレを流す水に使う計画
  • 多くの客が同時にシャワーを浴びると、処理の能力を超える。そこで、処理した水をためておく「賢い」タンクを置く
  • 見込まれる効果は、建物1棟あたり年1,500立方メートルの飲み水の節約。控えめな能力でも、7〜8年で投資を回収できる見込み
  • トイレの掲示で、使い直した水であることと、ときどき少し色がつくことを客に伝える

ANCHORの会の案内(2024年11月)は、ホテルは「近く」処理の装置に投資する、と書いていた。この記事を書いている時点で、設置されたという続報は見つからなかった。数字はすべて計画の段階のものだ。

報告がまとめた四つの学び

報告は、イビスと、同じ会で紹介された共同住宅「ジャン」の二つの例から、次の四つをまとめている。

  • 飲み水の節約:住宅でも商業の建物でも、使った水の再利用で、飲み水の使用を20〜30%減らせる
  • 規模が違いを生む:特に共同住宅やホテルでは、効率がよく、実現しやすい
  • 技術は準備ができている:コンピューターで制御する処理やセンサーで、導入はより簡単で確かになった
  • 計画が大切:配管や表示から、ためておく能力まで、よく準備すれば問題を防ぎ、費用も下がる

共同住宅ジャンの例でも、報告は、設計と工事の段階での注意深い計画が欠かせないと書いている。たとえば、装置の大きさと、配管の高さに気を配る必要があるという。

「表示」には、二つの相手がいる

イビスの計画の表示は、客に向けたものだ。トイレの掲示で、水の色が少し違う理由を先に伝えておけば、客は驚かずにすむ。

もう一つの表示の相手は、建物の中で働く人や、あとで工事をする人だ。使い直した水の管と、水道の管は、見た目では区別がつきにくい。どちらの管かが書かれていなければ、何年かあとの修理で、二つの管を誤ってつないでしまうおそれがある。

報告が「配管と表示」を一緒に挙げているのは、このためだと読める。

タンクが足りなくなったら

イビスの計画では、処理した水をタンクにためて、トイレに送る。報告は、タンクの水が足りなくなったときに何で補うかには触れていない。

ただ、トイレの水を止めるわけにはいかない。使い直した水が足りないときは、どこかから水を補う必要がある。その補い方は、工事の前に決めておくべき段取りの一つだ。日本で水道の水を補う場合には、守るべきルールがある。

日本の宿に置き換えると

日本では、水道法施行令の第6条が、水道の管とそれにつながる器具(給水装置)の構造の基準を定めている。その中に、次の二つがある。

  • 第1項第6号:給水装置は、それ以外の水管やその他の設備に、直接つながっていないこと
  • 第1項第7号:水槽、プール、流しなど、水をためたり受けたりする器具や施設に水を送る給水装置は、水の逆流を防ぐ適当な措置がとられていること

国土交通省の「給水装置標準計画・施工方法」は、これを次のように説明している。

  • 水道の管を、水道以外の管などにつなぐことを「クロスコネクション(誤接合)」という。水道の水に、排水や薬品、ガスなどが混ざるおそれがある
  • 用途の違う管が水道の管の近くに通り、見た目で区別しにくい場合がある。誤接合を防ぐため、管の外側に用途がわかるよう表示する必要がある
  • つながれやすい管の例として、井戸水や工業用水、再生利用水の管、雨水の管などを挙げている
  • 水槽などに水を送るときは、蛇口の口と水があふれる面とのあいだに、すき間(吐水口空間)をとる。これが逆流を防ぐ、もっとも一般的で確実な方法とされている。たとえば、口の大きさ(呼び径)が13ミリ以下なら、あふれる面から口の中心までを25ミリ以上離す

イビスのような仕組みで、使い直した水のタンクに水道の水を補うなら、水道の管をタンクの管にそのままつなぐのではなく、すき間をとって上から落とすような形が考えられる。具体的な方法は、地元の水道事業者と、給水装置の工事の資格を持つ業者に確かめたい。

また、旅館などの大きな建物(建築物衛生法の特定建築物)で、水道以外の水を水源にした雑用水を使う場合、同法の施行規則第4条の2は、雑用水の水槽の点検などで汚染を防ぐこと、水が人の健康を害するおそれを知ったときは、すぐに供給を止めて、使う人に危険を知らせることを求めている。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

補う水のメーターで、使い直した量を知る

80室、稼働率75%、1室に1.5人の宿(1日90人)が、シャワーの水をトイレに使い直す。トイレは1人1日5回、1回6リットルとする。タンクに補う水道の水には、別のメーターを付ける。

  • トイレに要る水:90人×30リットル=1日2,700リットル
  • 補う水のメーターが、1日平均600リットルを示したとする。使い直した水は2,100リットルで、トイレの水の約78%
  • 1年:2,100リットル×365日=約767立方メートル。上下水道を1立方メートル600円とすると、約46万円

ある月、補う水が1日1,200リットルに増えたとする。

  • 使い直した水は1,500リットルに下がり、トイレの水の約56%
  • この状態が1年続くと、補う水は年に約219立方メートル増え、約13.1万円の損になる

補う水のメーターを読んでいれば、処理の装置の不調や、タンクの大きさの不足に早く気づける。

工事の前に、段取りを決める

イビスの計画は、シャワーとトイレの時間のずれをタンクで埋め、トイレの掲示で客に伝えるという、よく考えられたものだ。報告がまとめた学びは、その手前の段取りの大切さを示している。

管にどの水が流れているかを書く。足りないときの補い方を決める。補う量を測る。日本の宿で同じ仕組みを考えるなら、水道のルールに沿ってこの三つを決めてから、工事に進みたい。

持ち帰れる知識

  • 使い直す水の計画では、配管、表示、タンクの大きさを工事の前に決める
  • 表示には、客に向けたものと、管を扱う人に向けたものがある
  • 日本では、水道の管を水道以外の管に直接つなぐことは認められていない
  • 水槽に水道の水を補うときは、逆流を防ぐすき間(吐水口空間)が基本になる

宿で考えられること

  • 使い直した水の管に、用途を書いた表示を付ける
  • タンクの水が足りないときの補い方を、水道事業者と業者に確かめる
  • 補う水道の水に別のメーターを付け、毎月読む
  • トイレに、使い直した水であることを伝える掲示を置く

事業・予約への接続

使い直した水を、客に正直に伝えると、宿の姿勢として信頼につながる。見えない配管の段取りまで整えておけば、仕組みを長く安心して続けられる。

Sources / 参考情報

  • Interreg North Sea ANCHOR(英文) - グレーウォーターの再利用が未来である理由(2024年12月16日)
    裏付け: ゲントの水の再利用の学び合いの会、281室・週末600人・年1万350立方メートル超、シャワーの水を処理してトイレに使う計画、同時のシャワーで処理能力を超えるため賢いタンク、建物1棟あたり年1,500立方メートル、控えめな能力でも7〜8年で回収の見込み、トイレの掲示で再生した水と少しの変色を伝える、共同住宅ジャンでは設計と工事の段階の計画が欠かせず装置の大きさと配管の高さに注意、20〜30%、規模、技術の準備、配管と表示からためる能力までの計画
  • Interreg North Sea ANCHOR(英文) - グレーウォーターの仕組み:フランデレンの学び合いの会(2024年11月)
    裏付け: イビスは近くグレーウォーターの処理に投資する
  • e-Gov法令検索 - 水道法施行令
    裏付け: 第6条(給水装置の構造及び材質の基準)第1項第6号の直接連結の禁止、第7号の水槽などへの給水での逆流防止の措置
  • 国土交通省 - 給水装置標準計画・施工方法(PDF)
    裏付け: クロスコネクション(誤接合)の説明、排水・薬品・ガスが混ざるおそれ、用途の異なる管は管の外面に用途を表示、つながれやすい管の例(井戸水・工業用水・再生利用水・雨水管など)、吐水口空間は逆流防止のもっとも一般的で確実な手段、呼び径13ミリ以下は越流面から吐水口の中心まで25ミリ以上
  • e-Gov法令検索 - 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則
    裏付け: 第4条の2、雑用水の水槽の点検等による汚染の防止、健康を害するおそれを知ったときの供給の停止と周知、水道の水だけを水源とする場合は除く

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