GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 5分 / 2926文字 原単位で確かめる型 #481

「1ポンドあたり2.82ガロンが0.99に」から、年間の量を自分で計算してみる:サンアントニオの「ウェスティン・リバーウォーク」の洗濯場を、原単位で読み直す

米テキサス州サンアントニオ。473室の「ウェスティン・リバーウォーク」は、2011年に市の水道局の「ウォーターセーバー・ホテル」という事業に参加し、洗濯場の水を減らした。米環境保護庁(EPA)は2014年7月、この改修を事例集にまとめている。

#258では、同じ市の「ホリデイ・イン・サンアントニオ」の話の中で、このホテルを1段落だけ紹介した。この記事では、事例集にある「洗濯物1ポンドあたりの水の量」(原単位)に注目する。原単位が分かると、年間の量を自分で計算して、発表の数字と比べられる。

何をしたか

事例集によると、ホテルは1992年より後に建てられ、トイレはすでに節水型だった。そこで、洗濯場に目を向けた。事例集は、トイレと洗濯場の水を合わせると、ホテル全体の水の半分近くになることがあると書いている。

  • 125ポンド(約57キログラム)の洗濯機3台と、55ポンド(約25キログラム)の洗濯脱水機1台を、効率のよい機種に替えた。これで水が45%減った
  • 「最後のすすぎの水を、次の洗濯の最初の洗いに使う」仕組みを、水道局と一緒に入れた。これでさらに20%減り、合わせて65%減った

最後のすすぎの水は、ほとんどの場合、処理をしなくても使い直せる。こうした仕組みで、1回の洗濯に要る水の10〜35%を減らせる、と事例集は説明している。

EPAが施設向けに出している節水の点検表にも、「洗濯機に水の再利用の仕組みを付ける」「最後のすすぎの水を、次の洗濯の洗いの水にする」という項目がある。特別な技術というより、点検表に載る基本の対策の一つだ。

2.82から0.99へ:原単位の意味

事例集によると、洗濯物1ポンドあたりの水は2.82ガロンから0.99ガロンになった。

  • 2.82×0.35=0.987。65%減ると約0.99になり、数字は合っている(InnBuddyによる確認)
  • メートル法に直すと、洗濯物1キログラムあたり約23.5リットルから約8.3リットル(InnBuddyによる換算。1ガロン=約3.785リットル、1ポンド=約0.4536キログラム。米国立標準技術研究所の換算表では、概数で3.79リットルと0.45キログラム)

#344では、洗濯物1キログラムあたりの水の目安が、資料によって5リットルから33リットルまで開いていることを紹介した。このホテルの改修前の23.5リットルはその幅の上のほう、改修後の8.3リットルは下のほうにあたる。

年間の量を、原単位から計算する

事例集は、このホテルが1日平均7回、1回240ポンドを洗うと書き、年間で「220万ガロンを超える」節水になったとしている。原単位を使って、この数字を確かめてみる(InnBuddyによる計算)。

  • 1ポンドあたりの減った量:2.82−0.99=1.83ガロン
  • 1日の洗濯物:7回×240ポンド=1,680ポンド
  • 1年:1.83×1,680×365=約112万ガロン

計算では約112万ガロンになり、事例集の220万ガロンの約半分にとどまる。220万ガロンにするには、1日に約13.7回分の洗濯が必要になる。事例集には計算の方法が書かれていないので、どの数字が違うのか(回数が洗濯機1台あたりなのか、洗濯物の量が別の数え方なのか)は分からない。

220万ガロンは6.75エーカー・フィート(約8,300立方メートル)と書かれていて、この換算は合っている。数字の食い違いは、換算ではなく、もとの量のところにある。

「全体の65%」と「洗濯の65%」

もう一つ、読むときに気をつけたい点がある。事例集の本文は「洗濯場の水を65%減らした」と書いている。一方、写真に添えた説明文は「ホテル全体の水を65%減らした」と読める書き方になっている。

本文の内容から見ると、65%は洗濯場の水の話だ。トイレと洗濯場を合わせても全体の半分近くなので、洗濯場だけで全体の65%を減らすことはできない。数字を引用するときは、何に対する割合かを、本文で確かめたい。

お金の数字は合っている

事例集によると、ホテルは改修に7万9,000ドルをかけ、水道局の補助で2万7,000ドルが戻った。

  • 年の節約:水道と下水道で約1万1,000ドル、エネルギーでほぼ9,000ドル、合わせて約2万ドル
  • 回収期間:2.6年

(7万9,000−2万7,000)÷2万ドル=2.6年で、事例集の数字は合っている(InnBuddyによる確認)。量の数字に食い違いがあっても、お金の数字は請求書から来ている可能性が高く、こちらのほうが確かな手がかりになる。

日本の宿に置き換えると

日本では、洗濯の水の量を「浴比」という言葉で表すことがある。ライオンの解説によると、浴比は、洗濯物1キログラムあたりの洗濯の水のリットルで表す。1キログラムを30リットルで洗えば、浴比は30だ。日本石鹸洗剤工業会の調査では、日本の家庭の平均は、縦型の洗濯機で17程度、ドラム式で8程度だという。

業務用では、さらに少ない水で洗う機械もある。業務用の洗濯機をつくる東京洗染機械製作所は、ホテルのリネンを洗う連続洗濯機の水の量を、洗濯物1キログラムあたり2.5リットルからと説明している(病院のものは3.8リットルから)。これはメーカーの説明で、実際の量は、汚れや設定で変わる。

浴比は1回の洗いの比率、ウェスティンの原単位は洗濯全体の比率で、そのまま比べることはできない。それでも、「洗濯物1キログラムあたり何リットルか」という物差しを持っておくと、機械を替える前と後を同じ尺度で比べられる。外部の業者に洗濯を頼んでいる宿なら、業者にこの数字を尋ねることもできる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

自分の洗濯場で、1日40キログラムのリネンを洗う宿を考える。

原単位で年間の量を出す

  • 改修前:1キログラムあたり23.5リットル×40キログラム=1日940リットル
  • 改修後:1キログラムあたり8.3リットル×40キログラム=1日約330リットル
  • 1年で減る量:(23.5−8.26)×40×365=約223立方メートル
  • 上下水道を1立方メートル600円とすると、年約13.4万円

発表の数字を確かめる

業者から「年450立方メートル減る」と説明されたとする。原単位から計算した約223立方メートルの約2倍だ。このとき確かめたいのは次の三つだ。

  • 1日の洗濯物の量(40キログラムでよいか)
  • 改修前の原単位を、実際に測ったか(カタログの値ではないか)
  • 年間の日数(休館日や、洗濯をしない日を引いたか)

三つの数字を掛け算に戻すと、どこが違うのかが見えてくる。

原単位は、数字の「検算の道具」になる

ウェスティン・リバーウォークの事例集は、原単位、1日の回数、1回の量、年間の量を、すべて書いている。だからこそ、読む人が自分で掛け算をして、食い違いに気づくことができる。

宿が自分の節水を伝えるときも、年間の量だけでなく、原単位と、その元になった数字を一緒に示すとよい。読む人が確かめられる数字は、それだけ信頼される。

持ち帰れる知識

  • 原単位(洗濯物1キログラムあたりの水)が分かると、年間の量を自分で計算できる
  • 事例集の原単位と回数から計算すると年約112万ガロンで、発表の220万ガロンと合わない
  • 65%は洗濯場の水に対する割合で、ホテル全体ではない
  • 最後のすすぎの水は、処理せずに次の洗いに使えることが多い

宿で考えられること

  • 洗濯場の水を、洗濯物1キログラムあたりのリットルで記録する
  • 洗濯を外に頼んでいるなら、業者に原単位を尋ねる
  • 機械を替えるときは、最後のすすぎの水を使い直す仕組みも検討する
  • 発表する数字には、原単位と元の数字を添える

事業・予約への接続

節水の数字は、読む人が確かめられる形で示すと信頼される。原単位と年間の量をそろえて示せば、取引先や環境の認証の審査でも説明しやすい。

Sources / 参考情報

  • 米環境保護庁(EPA)(英文) - 洗濯の日に大きな節約:テキサス州サンアントニオのホテル(PDF)(EPA-830-F-14-002-E、2014年7月)
    裏付け: 473室、2011年にウォーターセーバー・ホテル事業に参加、1992年より後の建物でトイレは節水型、トイレと洗濯場で全体の半分近く、125ポンドの洗濯機3台と55ポンドの洗濯脱水機1台で45%減、最後のすすぎの水の再利用で20%・合わせて65%減、すすぎの水の再利用は10〜35%、2.82→0.99ガロン/ポンド、1日7回・1回240ポンド、年220万ガロン超・6.75エーカー・フィート、写真の説明文の「全体の65%」、投資7万9,000ドル・補助2万7,000ドル、水道と下水道約1万1,000ドル・エネルギーほぼ9,000ドル、回収2.6年
  • ライオン(LIDEA) - 洗濯機の適切な水量や時間、水温など、汚れ落ちを左右するポイント
    裏付け: 浴比は洗濯物の重さ(kg)あたりの洗濯水の容積(L)、日本石鹸洗剤工業会の調査で家庭の平均は縦型17程度・ドラム式8程度
  • 東京洗染機械製作所(TOSEN) - 連続洗濯機(リネンサプライ機器)
    裏付け: ホテルリネン用の連続洗濯機の水の量は1キログラムあたり2.5リットルから、病院用は3.8リットルから(メーカーの説明)
  • 米国立標準技術研究所(NIST)(英文) - 米国の慣用単位とメートル法のおおよその換算
    裏付け: 1ガロンは約3.79リットル、1ポンドは約0.45キログラム(概数)
  • 米環境保護庁(EPA)(英文) - 商業・公共施設のための簡易な水の点検表(PDF)(2016年7月)
    裏付け: 洗濯機に水の再利用の仕組みを付ける(項目26)、最後のすすぎの水を次の洗いの水にする(項目145)

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