GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 5分 / 2968文字 比べ方で読む型 #483

1か月ずつ比べた「オゾン洗濯」の結果を、誰が書いたかから読む:カリフォルニアの104室の宿「アップル・ファーム・イン」の22ガロンと11分

米カリフォルニア州の中部、サンルイスオビスポ。104室の「アップル・ファーム・イン・アンド・スイーツ」は、2006年の終わりから2007年の初めにかけて、洗濯場でふつうの洗濯とオゾンを使う洗濯を比べた。

この比較は、2010年7月に、圧縮空気の業界誌のウェブサイトに記事として載った。書いたのは、オゾンの洗濯の装置をつくる会社「クリアウォーター・テック」の技術者だ。

オゾンの洗濯は、#364でテネシー州のホテルの例を紹介した。この記事では、比べ方の設計と、誰が書いた資料かという点に注目する。そして、日本でオゾンを扱うときの決まりにつなげる。

何を比べたか

記事によると、宿の洗濯場には、80ポンド(約36キログラム)の業務用洗濯機が2台、120ポンド(約54キログラム)の乾燥機が2台ある。洗うのは、シーツ、毛布、枕カバー、客室とプールのタオル、バスマット、バスローブ。1日平均20回、合わせて1,600ポンド(約726キログラム)を洗っていた。

比べ方は、次のとおりだ。

  • 最初の1か月:ふつうの洗濯
  • 次の1か月:オゾンの洗濯

入れた装置は、1時間に最大8グラムのオゾンをつくる発生器、酸素を濃くする装置、洗濯機の水だめに入れる散気装置、そして室内の空気中のオゾンを測る計器だ。

1回の洗濯で、何が減ったか

記事は、1回の洗濯の工程を図で比べている。オゾンの洗濯では、脱水の工程を一つなくし、洗剤の工程と漂白の工程を一つにまとめた。

  • 工程が2つ減った
  • 水が22ガロン(約83リットル)、18%減った
  • 時間が11分短くなった
  • 温めた水が37ガロン(約140リットル)、27%減った
  • 薬品が1.6オンス、21%減った

温めた水が減れば、湯を沸かす天然ガスも減る。記事は、水、薬品、電気、ガス、人件費のすべてで、年1万3,248ドル(38%)の節約になったとしている。

数字を確かめると、そろわないところがある

記事の数字から、1回あたりの元の量を逆算してみる(InnBuddyによる計算)。

  • 水:22ガロンが18%なら、元は約122ガロン
  • 温めた水:37ガロンが27%なら、元は約137ガロン

温めた水(約137ガロン)が、水全体(約122ガロン)より多くなってしまう。二つの割合は、違う基準で計算されている可能性がある。記事には、その説明はない。

お金の数字にも、二つの値がある。

  • 本文:年1万3,248ドル(38%)、回収は8か月未満
  • 図8の説明:人件費を含めて月1,756ドル、年2万2,517ドル、回収7.7か月

月1,756ドルを12倍すると2万1,072ドルで、年2万2,517ドルとも合わない。どれも人件費を含むと書かれているので、どの数字を使うかは、読む人には決められない。

「時間が減った」は、「人件費が減った」とは限らない

記事の中で、正直に書かれている点がある。洗濯の時間が短くなったことを「人件費の節約」として数えているが、それは、宿が実際に払う給料が減ったという意味ではなく、従業員がほかの客室清掃の仕事に回れるようになったという意味だ、と書いている。

洗濯の時間が短くなり、水と工程が減ったことで、宿は1か月に約60回多く洗えるようになった、とも書いている。時間の節約は、「多く洗える」「ほかの仕事ができる」という形で表れた。

1か月ずつ比べる設計の弱み

ふつうの洗濯を1か月、オゾンの洗濯を次の1か月、という比べ方は分かりやすい。ただし、次のような違いが入りこむ。

  • 季節:冬に向かう時期で、客の数や洗濯物の汚れが変わる
  • 稼働率:記事は、稼働率が平均より低いことが、導入を考えたきっかけだったと書いている。月によって洗濯の回数も変わる
  • 慣れ:新しい工程に、従業員が慣れるまでの時間

だから、月の合計ではなく、1回あたり、1キログラムあたりで比べることが大切になる。記事の22ガロンや11分は、1回あたりの数字で、この点では比べやすい。

誰が書いた資料か

この記事の筆者は、装置をつくる会社の技術者だ。記事の最後には、会社の連絡先と製品のウェブサイトが載っている。

メーカーが書いた資料だから間違っている、ということではない。工程の図や1回あたりの数字は、具体的で役に立つ。ただし、第三者が測った結果ではないことと、数字の一部がそろわないことは、知ったうえで使いたい。記事自身も、洗い方の設計や結果は施設によって違うと書いている。

日本の宿に置き換えると

オゾンは、汚れや菌を分解する力が強い一方で、吸い込むと体に悪い気体だ。日本では、働く人がオゾンにさらされる程度について、新しい基準が始まっている。

厚生労働省の通達(基発0508第3号、2024年5月8日)によると、労働安全衛生規則にもとづく「濃度基準値」の告示が改正され、オゾンを含む112の物質が加わった。オゾンの値は、2025年10月1日から適用されている。

  • オゾンの短時間濃度基準値:0.1ppm
  • 8時間の濃度基準値:定められていない
  • 短時間濃度基準値は、1日の作業のうち、濃度が最も高くなると思われる15分間の、時間で重みをつけた平均で見る

労働安全衛生規則第577条の2第2項は、こうした物を製造したり取り扱ったりする業務を行う屋内作業場で、働く人がさらされる程度を、この基準以下にしなければならないと定めている。洗濯場でオゾンの発生器を使う作業がどこまで当てはまるかは、作業の内容によるので、導入する前に専門家や労働基準監督署に確かめたい。

また、職場のあんぜんサイトのモデルSDS(安全データシート)によると、日本産業衛生学会はオゾンの許容濃度を0.1ppmと勧告している。

アップル・ファーム・インが、オゾンの発生器と一緒に室内の空気のオゾン計を入れていたことは、日本の宿にとっても参考になる。洗濯場の空気を測れるようにしておくことが、オゾンを使う前提になる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

自分の洗濯場で、オゾンの洗濯を1か月ずつ比べた宿を考える。

月の合計で比べると

  • ふつうの洗濯の月:稼働率60%、洗濯100回、水30立方メートル
  • オゾンの洗濯の月:稼働率80%、洗濯130回、水33立方メートル
  • 月の合計では、水が10%増えたように見える

1回あたりで比べると

  • ふつうの洗濯:30,000÷100=1回300リットル
  • オゾンの洗濯:33,000÷130=1回約254リットル
  • 1回あたりでは約15.4%減っている

時間の節約を、どう数えるか

1回11分短くなるとすると、130回で約23.8時間になる。この時間で、従業員がほかの仕事をしたのか、勤務の時間そのものが減ったのかで、お金の効果は変わる。人件費として数えるなら、勤務表で確かめたい。

比べ方と書き手を知ってから、数字を使う

アップル・ファーム・インの比較は、工程の図と1回あたりの数字を示した、具体的な記録だ。一方で、1か月ずつの比較であること、メーカーの技術者が書いたこと、数字の一部がそろわないことも、読み取れる。

オゾンの洗濯を考える日本の宿は、1回あたりの水と時間を自分で測り、洗濯場の空気のオゾンを測る用意をしたうえで、判断したい。

持ち帰れる知識

  • 1か月ずつの比較は、月の合計ではなく1回あたりで読む
  • 記事の割合から逆算すると、温めた水が水全体より多くなり、基準がそろっていない
  • 時間の節約は、払う給料が減ったことと同じではない
  • 日本では、オゾンの短時間濃度基準値0.1ppmが2025年10月1日から適用されている

宿で考えられること

  • 洗濯の水と時間を、1回あたり、1キログラムあたりで記録する
  • メーカーの資料の数字は、自分の洗濯場で測り直す
  • オゾンを使うなら、洗濯場の空気を測る計器と換気を用意する
  • 時間の節約を、勤務表のどこに表れるかで確かめる

事業・予約への接続

洗濯の水と薬品を減らす取り組みは、働く人の安全とセットで説明すると信頼される。測った数字と安全の対策を並べて示せば、取引先や認証の審査にも伝えやすい。

Sources / 参考情報

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