GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 5分 / 3122文字 単位を換えて読む型 #488

15分のにわか雨で4,000ガロン:「グランド・ハイアット・アトランタ」の雨水タンクの大きさを、「雨何ミリ分か」で読み直す

米国ジョージア州アトランタの439室のホテル「グランド・ハイアット・アトランタ」は、3階の屋根に降る雨をタンクにため、冷却塔の水に使っている。

このホテルは、これまでに3回取り上げた。#215では技術部長の計算と数年後の確認を、#260では空調の結露の水と製氷機の水を、#357では下水と川の側から見た意味を紹介した。

この記事では、タンクの大きさを「屋根に降る雨の何ミリ分か」に換えて読む。そうすると、どんな雨で満杯になり、どれくらいで空になるのかが見えてくる。

「なんてもったいない」から始まった

米国の業界紙「グリーン・ロッジング・ニュース」の2013年7月5日の記事によると、きっかけはその約1年前だった。技術部長に就いて間もないウェス・シャーリーさんが、雨の日に3階のテラスを見下ろして、「なんてもったいない」と思ったのだという。

計画づくりには、配管の業者、地元のサザン・ポリテクニック大学の技術者の職員、そして授業の課題として取り組んだ学生たちが加わった。計画は、ホテルの持ち主にすぐ認められた。

それまで、3階の屋根に降った雨は、排水管から市の下水に流れていた。その排水管を切り離し、フィルターをつけた。今では、3階のテラスに降る雨のほぼすべてを集め、タンクにためて使っている。

電気を使わない仕組み

2013年の記事が伝える仕組みは、次のとおりだ。

  • タンク:2,500〜5,000ガロンの7基。ホテルの駐車場の建物の中に置いた
  • 置き場所:物置になっていた場所を片づけて空けた。駐車の場所は一つも減らしていない
  • 運び込み:「台車を50台はだめにした」と技術部長は話している
  • 電気:雨を集める過程では電気を使わない。ポンプで押し上げることもない
  • 測定:いくつかのメーターをつけている

ためた雨は、冷却塔の水に使う。冷却塔は夏に1日1万5,000ガロン(約5万7,000リットル)の水を必要とする。雨水を使い切ると、冷却塔は市の水道に切り替わる。

15分の雨で4,000ガロン

記事は、15分のにわか雨で約4,000ガロンが集まると書いている。

この数字を、屋根に降る雨の深さに換えてみる(InnBuddyによる計算)。米国の業界誌「ホテルズ」の2013年の記事によると、屋根は3万2,000平方フィート(約2,970平方メートル)で、1インチの雨は1平方フィートあたり0.62ガロンになる。

  • 屋根に1インチ(25.4ミリ)の雨:3万2,000×0.62=1万9,840ガロン
  • 4,000ガロンは、約0.2インチ、約5ミリの雨にあたる

5ミリほどの雨でも、これだけの広さの屋根なら、冷却塔の約4分の1日分が集まる。

タンクは、雨何ミリ分か

同じ計算で、タンクの大きさを雨の深さに換える。

  • 3万ガロン:約1.5インチ、約38ミリの雨
  • 5万ガロン:約2.5インチ、約64ミリの雨

ホテルズの記事は、タンクを3万ガロンと書いている。2016年5月31日のグリーン・ロッジング・ニュースの記事は、その後5万ガロンに広げたと伝えている。一方、水環境連盟(WEF)の2018年の記事は、タンクを8基、3万ガロン(約11万3,500リットル)と書いている。資料によって、タンクの数と容量の書き方が違う。

38ミリの雨で満杯になるタンクは、それより小さな雨なら、ほぼすべてを受け止められる。逆に、それより大きな雨では、あふれた分は流れていく。

タンクは、何日で空になるか

ためた水が出ていく速さも、同じように見ておく。

  • 3万ガロンのタンク:冷却塔の1日1万5,000ガロンで、2日分
  • 5万ガロンのタンク:約3.3日分

夏に冷却塔がよく動けば、満杯のタンクも数日で空になり、次の雨を受け止める余裕ができる。

雨の日以外の水

ホテルズの記事は、製氷機の排水と空調機の結露の水をタンクにつなぐ工事をしていて、夏は1週間に冷却塔の2日分、3万ガロン相当を集められると書いている。

2013年のグリーン・ロッジング・ニュースの記事で、技術部長は、空調の結露の水を1日1,500ガロン、製氷機の水を400〜500ガロン集めていると話している。2016年の記事では、空調機の結露の水は1日5,000ガロンになり、製氷機の水や、会議室の水差しに残った水も、雨水のタンクに入れている。

1日5,000ガロンは、冷却塔の1日1万5,000ガロンの3分の1にあたる。結露の水は、暑くて空調がよく動く日、つまり冷却塔が水を多く使う日に多く出る。雨の日だけでなく、晴れた暑い日にもタンクに水が入ることになる。

2018年のWEFの記事によると、仕組みが動き始めた2013年から、冷却塔の水として約1,700万リットル(450万ガロン)を供給した。

日本の宿に置き換えると

タンクの大きさを雨の深さで考えると、自分の地域の雨の降り方と比べられる。

気象庁の平年値(1991〜2020年)によると、東京の年間の降水量は1,598.2ミリだ。1日の降水量ごとの、1年の日数は次のとおりだ。

  • 1ミリ以上:102.5日
  • 10ミリ以上:45.3日
  • 30ミリ以上:14.3日
  • 50ミリ以上:6.2日
  • 100ミリ以上:1.2日

1ミリ以上の雨の日のうち、半分以上は10ミリ未満の雨だ。大きなタンクが本当に役立つのは、30ミリを超えるような雨の日で、東京では年に14日ほどになる。

夏の暑さも見ておく。同じ平年値で、東京の最高気温が30度以上の日は、7月が16.8日、8月が22.6日だ。一方、1ミリ以上の雨の日は、7月が10.5日、8月が7.9日。冷房がよく動く夏ほど雨の日は少なく、雨水だけに頼るとタンクが空になりやすい。結露の水のような、晴れた日にも出る水を足す考え方は、日本の夏にも当てはまる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

20室の宿で、屋根の300平方メートルに降る雨を、3立方メートルのタンクにためるとする。雨のうち実際に集まるのは8割とする。

タンクは雨何ミリ分か

  • 1ミリの雨で集まる水:300平方メートル×1ミリ×0.8=0.24立方メートル
  • 3立方メートルのタンクが満杯になる雨:3÷0.24=12.5ミリ
  • 10立方メートルのタンクなら:約42ミリ

屋根が受け止める1年の雨

1,598.2ミリ×300平方メートル×0.8=約384立方メートル。これは、すべての雨をためられた場合の上限だ。

3立方メートルのタンクで集まる量の目安

10ミリ以上の雨の日(年45.3日)にいつも満杯になり、次の雨までに使い切ると仮定すると、3立方メートル×45.3日=約136立方メートル。屋根の上限の約35%だ。1立方メートル600円なら、年約8.2万円にあたる。10ミリ未満の雨の分は数えていない、ざっくりした目安だ。

タンクを大きくすると

10立方メートルにしても、増えるのは、12.5ミリを超える雨の日の、あふれていた分だけだ。しかも、次の雨までにタンクを空にできるだけの使い道(トイレ、庭の水やりなど)がなければ、大きなタンクは満杯のまま待つことになる。タンクの大きさは、雨の降り方と、毎日の使う量の両方で決めたい。

単位を換えると、決め方が見える

「3万ガロンのタンク」と聞いても、大きいのか小さいのかは分からない。屋根の広さで割って「雨38ミリ分」と言い換え、冷却塔の使う量で割って「2日分」と言い換えると、どんな雨を受け止め、どれくらいで次の雨に備えられるかが見えてくる。

自分の宿でも、タンクや設備の大きさを、雨の深さや日数に換えて考えてみたい。

持ち帰れる知識

  • 15分のにわか雨の4,000ガロンは、この屋根では約5ミリの雨にあたる
  • 3万ガロンのタンクは約38ミリの雨、冷却塔の2日分にあたる
  • タンクの数と容量は、資料によって書き方が違う
  • 東京では、1ミリ以上の雨の日のうち半分以上が10ミリ未満、30ミリ以上は年14日ほど
  • 暑い夏ほど雨の日は少なく、結露の水のような晴れた日に出る水が役立つ

宿で考えられること

  • タンクの大きさを、屋根の広さで割って「雨何ミリ分か」に換える
  • 毎日使う量で割って、タンクが「何日で空になるか」も確かめる
  • 自分の地域の気象庁の平年値で、雨の日の数を調べる
  • 空調の結露の水など、雨以外にためられる水を探す

事業・予約への接続

雨水の設備は、大きさの理由を説明できると、取引先や客にも伝わりやすい。「屋根の雨何ミリ分をためる」「何日分の水になる」と言い換えると、数字が身近になる。

Sources / 参考情報

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