GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 5分 / 3240文字 時間軸で読む型 #491

交換の予定表に、水の節約を書き込む:「ハイアット・リージェンシー・アトランタ」の35%を、設備を替える時期から読む

米国ジョージア州アトランタの「ハイアット・リージェンシー・アトランタ」は、客室1,260室、延べ床面積150万平方フィートの大きなホテルだ。米国環境保護庁(EPA)の節水の仕組み「ウォーターセンス」の2014年7月の事例紹介によると、このホテルは2013年の水の使用量を、2000年より35%減らした。2013年だけで3,600万ガロンの節約だ。

同じホテルは、#317で「年100万ドルの節約は、何と比べた額か」という点から紹介した。この記事では、35%が「いつ」「どの設備を替えたときに」減ったのかを、時間の順に並べ直す。すると、水の節約が、設備を替える予定と結びついていたことが見えてくる。

長い期間の設備の計画

事例紹介によると、ホテルは、冷凍機、空調、ボイラーなど、将来替えることになる建物の設備をすべて記録した、長い期間の設備投資の計画をつくっている。

替える時期を考えるときは、効率がよくなる分を、その設備の一生の中に組み込む。投資の回収(ROI)が、工事の時期を左右するようにするためだ。事例紹介は、例として、予定の寿命に近づいた冷凍機を、より効率のよい新しい機種に替えれば、水と光熱費の節約になり、それが交換の時期に影響する、と書いている。

全部の機械の設備は、自動の建物の管理の仕組み(BAS)で動かしている。事例紹介は「測らないものは管理できない」と書き、水とエネルギーの使い方を記録し、傾向を見て、改善する場所を絞っているという。

時間の順に並べると

事例紹介に出てくる取り組みを、時期の順に並べると、次のようになる。

  • 約17年前(2014年の資料から数えて):1回流すだけの水で冷やしていた製氷機25台を、すべて空気で冷やす機種に替えた
  • 2000年代の初め:水で冷やす空調機2台を取り外し、1回流すだけの水で冷やす仕組みをなくした
  • 15年かけて:6基の冷却塔の濃縮倍数を5.0から8.0に上げた
  • 時期の書かれていない取り組み:空調機と室内の冷房機で出る結露の水を、年約100万ガロン冷却塔に回す
  • 2011年から2013年:冷凍機とボイラーの設備を新しくし、効率を上げて、エネルギーを10.6%減らした

事例紹介のグラフの説明は、大きな減り方が2つの時期にあったと書いている。2002年までの減少は、1回流すだけの水で冷やす仕組みをなくしたことによるもの。2007年から2013年の大きな減少は、冷却塔の運転の見直し、結露の水の回収、そして冷凍機とボイラーの交換によるものだ。

つまり、35%は一度の工事で生まれた数字ではない。古い機械を替える時期ごとに、少しずつ積み上がった数字だ。

冷凍機を替えると、なぜ水が減るのか

事例紹介によると、冷凍機の省エネを進めると、冷却塔が捨てる熱が減る。熱が減れば、蒸発させる水も減る。ボイラーも同じで、エネルギーの効率は水の効率につながるという。

結露の水の回収は、1万2,000ドルの設備で、6か月で元が取れた。ホテル内部の投資の回収率は200%を超えたという。

1回流すだけの水で冷やす仕組み

EPAの手引き「ウォーターセンス・アット・ワーク」の6.2節(2012年10月)によると、1回流すだけの水で冷やす仕組みは、水を機器に一度通したあと、そのまま下水に流す。同じ熱を取り除くのに、濃縮倍数5で動く冷却塔の約40倍の水を使う。対象になる機器として、製氷機、空調機、空気圧縮機、冷蔵の機器などを挙げている。

同じ手引きは、取り替えるときは空気で冷やす機器にすることを勧めている。ただし、空気で冷やす機器に替えるときは、水だけでなくエネルギーの使用量も評価し、水の節約がエネルギーの増加で打ち消されないようにすること、と注意している。

事例紹介は「約40倍」とだけ書いているが、元の手引きでは「濃縮倍数5の冷却塔と比べて」という条件がついている。

35%と3,600万ガロンから計算すると

事例紹介は、2000年と2013年の使用量そのものは書いていない。35%と3,600万ガロンが同じ比較を指しているとすると、計算できる。

  • 2000年:3,600万÷0.35=約1億300万ガロン
  • 2013年:約1億300万-3,600万=約6,690万ガロン(約25万3,000立方メートル)
  • 2013年の1室1日あたり:約6,690万÷1,260室÷365日=約145ガロン

これは計算した値で、事例紹介に書かれた数字ではない。また、客室だけでなく、会議場や厨房、冷却塔の水も含めた建物全体の量を、客室の数で割ったものだ。

日本の宿に置き換えると

日本で設備を替える時期を考えるとき、目にする「年数」には種類がある。

一つは税金の計算に使う年数だ。減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一では、建物附属設備のうち、冷房・暖房・通風・ボイラーの設備は、冷凍機の出力が22キロワット以下のものが13年、そのほかのものが15年。給排水・衛生・ガスの設備は15年だ。これは税金の上の年数で、機械が実際に使える期間ではない。

もう一つは、建物を管理する人が使う、更新の目安の年数だ。国土技術政策総合研究所の2006年の研究報告の参考資料は、設備ごとに、建築・設備維持保全推進協会(BELCA)、官庁営繕、法定(税法上)の年数を並べている。

| 設備 | BELCA | 官庁営繕 | 法定 |
|---|---|---|---|
| 往復動の冷凍機 | 15年 | 15年 | 15年 |
| ターボ式・吸収式の冷凍機 | 20年 | 20年 | 15年 |
| 冷却塔(FRP製) | 15年 | 13年 | 15年 |
| 鋼板製の温水ボイラー | 15年 | 15年 | 15年 |
| 空調機・冷却水のポンプ | 15年 | 20年 | 15年 |
| 貯湯槽(ステンレス製) | 15年 | 25年 | 15年 |

同じ冷凍機でも、どの資料を見るかで年数が違う。

同じ研究報告の本文は、保全の方式を分けて説明している。ボイラー、温水器、冷凍機、冷却塔などは、止まると影響が大きい「危機管理方式」の設備の例だ。耐用年数を考えて定期的に更新することを基本とし、やむを得ないときは整備の時期を判定し、点検を入念にして、更新を少し遅らせる、としている。

ハイアットのやり方を日本の宿に当てはめるなら、こうした年数をもとに、どの設備がいつ替え時になるかを一覧にし、そこに「替えるとき、水とエネルギーがどれだけ減るか」を書き添えることになる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

20室の宿が、給湯か空調の設備を1台替えると考える。標準の機種は100万円、効率のよい機種は120万円。効率のよい機種は、水と光熱費を年4万円減らすとする。

A:寿命が来たときに、効率のよい機種を選ぶ

どのみち替えるので、比べるのは差額の20万円だ。20万円÷年4万円=5年で差額を取り戻せる。

B:まだ使える機械を、5年早く替える

この場合、120万円の全額を、年4万円の節約で取り戻すことになる。30年かかり、機械の寿命を超える。節約だけを理由に、早く替えるのは難しい。

C:壊れてから、急いで替える

故障で止まると、在庫のある機種を急いで入れることになりやすい。もし標準の機種しか間に合わなければ、年4万円の節約を、次の交換まで逃すことになる。15年なら60万円だ。

同じ設備でも、替える時期をあらかじめ決めておくかどうかで、効率のよい機種を選べるかどうかが変わる。数字はすべて仮定で、実際の価格や節約額は、機種や使い方で大きく変わる。

予定表があれば、選べる

ハイアット・リージェンシー・アトランタの35%は、冷却塔の運転、結露の水、冷凍機とボイラーの交換を、長い年月をかけて積み上げた結果だった。

宿の設備も、いつかは替える時が来る。その日を前もって予定表に書いておけば、効率のよい機種を比べて選ぶ時間ができる。水を減らす機会は、交換の予定の中にある。

持ち帰れる知識

  • 35%の減少は、2002年までと、2007年から2013年の2つの時期に分かれている
  • 冷凍機の省エネは、冷却塔で蒸発させる水も減らす
  • 1回流すだけの水で冷やす仕組みは、濃縮倍数5の冷却塔の約40倍の水を使う
  • 空気で冷やす機器に替えるときは、エネルギーの増加も確かめる
  • 税法上の耐用年数と、更新の目安の年数は別のもの

宿で考えられること

  • 給湯、空調、厨房の機械を一覧にし、それぞれの替え時の目安を書く
  • 替え時が近い機械について、効率のよい機種との差額と節約額を調べておく
  • 水で冷やしている機械がないか確かめる
  • 壊れてから慌てないよう、交換の予算を前もって組む

事業・予約への接続

設備の交換を計画的に行えば、急な故障で客室や厨房が使えなくなる危険も減る。水と光熱費の節約は、毎年の経費を下げ、宿の体力を支える。

Sources / 参考情報

  • U.S. EPA WaterSense(英文) - ジョージア州のホテルが機械設備を生かして年100万ドルを節約(事例紹介、PDF)(2014年7月)
    裏付け: 1,260室・150万平方フィート、2013年は2000年より35%少ない・2013年に3,600万ガロンの節約、長い期間の設備投資の計画・効率をライフサイクルに組み込みROIが時期を左右・冷凍機の例、BAS・測らないものは管理できない、約17年前に製氷機25台を空冷に、2000年代初めに水冷の空調機2台を撤去、1回流すだけの冷却は冷却塔の約40倍、15年で濃縮倍数5.0から8.0、結露の水を年約100万ガロン・1万2,000ドル・6か月・ROI200%超、グラフの説明(2002年までと2007年から2013年)、2011年から2013年に冷凍機とボイラーでエネルギー10.6%減、冷凍機の省エネで冷却塔の蒸発が減る
  • U.S. EPA WaterSense(英文) - ウォーターセンス・アット・ワーク 6.2 1回流すだけの冷却(PDF)(2012年10月)
    裏付け: 水を一度通して下水に流す、対象の機器(製氷機・空調機・空気圧縮機・冷蔵の機器など)、濃縮倍数5の冷却塔の約40倍、空冷の機器への取り替え、エネルギーの増加で水の節約が打ち消されないよう評価する
  • e-Gov法令検索 - 減価償却資産の耐用年数等に関する省令
    裏付け: 別表第一の建物附属設備、冷房・暖房・通風・ボイラー設備は冷凍機の出力22キロワット以下13年・その他15年、給排水・衛生・ガス設備15年
  • 国土技術政策総合研究所 - プロジェクト研究報告 第4号 参考資料(PDF)(2006年)
    裏付け: 設備ごとのBELCA・官庁営繕・法定の年数(往復動の冷凍機15・15・15年、ターボ式・吸収式20・20・15年、冷却塔FRP製15・13・15年、鋼板製温水ボイラー15・15・15年、空調機・冷却水ポンプ15・20・15年、ステンレス製貯湯槽15・25・15年)
  • 国土技術政策総合研究所 - プロジェクト研究報告 第4号 第1章(PDF)(2006年)
    裏付け: 保全の方式の分類、温水器・ボイラー・冷凍機・冷却塔などを危機管理方式の例とする、耐用年数を考えて定期に更新・やむを得ないときは整備時期を判定し点検を入念にして更新を若干遅らせる

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