GOAL 7 · TARGET 7.2 水・衛生・循環 5分 / 2943文字 仕組みで読む型 #495

太陽で温めた水を、どこで60度にするか:「レジデンス・イン・サンカルロス」の60枚の集熱器を、「予熱」という方式から読む

米国カリフォルニア州サンカルロスの「マリオット・レジデンス・イン」は、屋根の太陽の熱でお湯をつくっている。太陽熱の集熱器をつくる米国の会社サンアースの事例紹介によると、2017年に施工会社のアズテック・ソーラーが、4フィート×10フィートの平板型の集熱器「サーモレイ TRB-40」を60枚取り付けた。

このホテルは、#455で、ほかの2つのホテルとあわせて紹介した。この記事では、事例紹介に1行だけ書かれた「方式」に注目する。そこには「太陽で予熱した水(Solar pre-heated water)」とある。

事例紹介に書かれていること

サンアースの事例紹介は短い。書かれているのは次のことだ。

  • 場所:カリフォルニア州サンカルロス、イースト・サンカルロス・アベニュー800番地
  • 設置:2017年、施工はアズテック・ソーラー
  • 集熱器:サーモレイの4フィート×10フィート(TRB-40)の平板型を60枚
  • 方式:太陽で予熱した水

事例紹介は、太陽熱の給湯は「15か月未満で投資を回収することも多い」と書いている。ただし、これは太陽熱の給湯一般についての説明で、このホテルの回収の期間ではない。このホテルの節約の量や、お湯のうち太陽で賄った割合は、書かれていない。

集熱器の外形の寸法から計算すると、60枚×4フィート×10フィート=2,400平方フィート、約223平方メートルになる。

なお、元の記事にあった「80%」や「年10万キロワット時」という数字は、この事例紹介には書かれていない。地名も、事例紹介では「サンカルロス」だ。

「予熱」とは、何をすることか

予熱は、太陽の熱で水を「ある程度まで」温めておき、残りを別の熱源で温める方式だ。

日本の一般社団法人ソーラーシステム振興協会の「業務用太陽熱利用システムの設計・施工ガイドライン」(平成25年4月)は、給湯で使う場合、仕組みや使い方によっては飲み水に適さないことがあるため、飲用に使うときは熱交換器などを通して「給水予熱」とする、と書いている。

同じガイドラインは、補助の熱源について、太陽のエネルギーの量は天候に左右されるため、補助の熱源の能力は、原則として必要な負荷の100%を賄える規模にする、としている。

つまり、太陽の熱を入れても、ボイラーや給湯器を小さくできるとは限らない。曇りや雨の日でも、必要なお湯を全部つくれる能力が要る。

資源エネルギー庁の「業務用太陽熱利用システムの施工・保守ガイドライン」(平成21年12月)も、同じ考え方を説明している。集熱器と蓄熱槽の水をそのまま回す「直接集熱」の方式は、循環の経路が開いているため、汚れや変質が起きることがあり、衛生上、飲用には適さない。飲用に使う場合は、給湯の回路を集熱の回路から分け、熱交換器で給水を温める。

同じガイドラインは、一般の建物の蓄熱槽の大きさの目安として、給湯では集熱面積1平方メートルあたり50〜100リットルとするものが多い、と書いている。サンカルロスの約223平方メートルに当てはめて計算すると、約1万1,000〜2万2,000リットルになる。これは一般の目安から計算した値で、このホテルの実際の槽の大きさは事例紹介に書かれていない。

太陽の割合を、高くしすぎない

ガイドラインは、太陽で賄う割合(太陽依存率)についても注意している。高く設定しすぎると、集熱器の面積が増え、集熱の温度が上がり、夏に熱がむだになって、結果として経済性を損なうという。

資源エネルギー庁の太陽熱の導入の手引きの第2章は、太陽熱の給湯の仕組みを入れることで、給湯の需要の30〜40%を太陽熱で賄うことができる、と説明している。使う温度が40〜60度と低いので集熱の効率も高くなり、太陽熱の利用に最も適した用途だという。貯湯槽を設ければ、補助のボイラーの容量が小さくても、瞬間的な給湯の需要に応えられるとも書いている。

ソーラーシステム振興協会のガイドラインは、給湯の仕組みの集熱効率を、適正に設計されたものでおおむね30〜60%としている。また、機器や配管はできるだけお湯を使う場所の近くに置き、十分に断熱する、としている。

日本の宿に置き換えると

日本の宿で太陽の熱をお湯に使うとき、考えておきたいのが、レジオネラ属菌を防ぐための温度だ。

厚生労働省の「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(平成15年厚生労働省告示第264号)は、給湯の設備について、湯の温度の管理が、レジオネラ属菌の汚染を防ぐために最も必要だとしている。

  • 貯湯式の給湯設備や循環式の中央式給湯設備では、貯湯槽の中の湯の温度が60度以上、末端の給湯栓でも55度以上になるような加熱装置を備える
  • 滞留した水を捨てられるよう、貯湯槽などに排水弁を設ける
  • 滞留している湯水を定期的に排水し、1年に1回以上、貯湯槽などを清掃する

また、同じ指針の入浴設備の項目には、湯の温度が60度に満たない貯湯槽には、60度以上に保つ能力のある加熱装置を設けるなどして、槽の中でレジオネラ属菌が増えないようにする、という定めもある。

太陽の熱だけでは、いつも60度に届くとは限らない。予熱の方式では、太陽で温めた水を、最後にどこで60度以上にするかを、設計の段階で決めておく必要がある。予熱の槽をどう管理するかも含めて、設計者や保健所に確かめておきたい。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

ある宿が、1日2,000リットルのお湯を使うとする。水道の水は15度、貯湯槽では60度にする。1リットルを1度温めるのに1.163ワット時かかるとして計算する。

必要な熱

2,000リットル×(60-15)度×1.163ワット時=1日約104.7キロワット時。

晴れた日:太陽で35度まで予熱できた

  • 太陽の分:2,000×(35-15)×1.163=約46.5キロワット時(約44%)
  • 補助の熱源の分:35度から60度まで、約58.2キロワット時

曇りの日:太陽で20度までしか温まらなかった

  • 太陽の分:2,000×(20-15)×1.163=約11.6キロワット時(約11%)
  • 補助の熱源の分:20度から60度まで、約93.0キロワット時

雨の日:太陽の熱がない

  • 補助の熱源が、104.7キロワット時をすべて賄う

晴れた日だけを見れば、補助の熱源は半分ほどで足りるように見える。けれども、雨の日には全部を賄わなければならない。ガイドラインが補助の熱源の能力を負荷の100%としているのは、このためだ。太陽の熱が減らすのは、おもに燃料や電気の量で、機械の大きさではない。数字はすべて仮定だ。

太陽と補助の熱源の、役割分担

レジデンス・イン・サンカルロスの事例紹介は、60枚の集熱器で「太陽で予熱した水」をつくる、とだけ書いている。節約の量や太陽の割合は分からない。けれども、「予熱」という言葉から、太陽が水を温め始め、別の熱源が仕上げるという役割分担が読み取れる。

日本の宿で同じことを考えるなら、太陽でどこまで温め、どこで60度以上にし、雨の日にどう賄うかを、最初に決めておきたい。

持ち帰れる知識

  • 事例紹介には、節約の量も太陽の割合も書かれていない
  • 予熱は、太陽で途中まで温め、別の熱源で仕上げる方式
  • 補助の熱源は、原則として負荷の100%を賄える規模にする
  • 太陽の割合を高くしすぎると、夏に熱がむだになる
  • 日本の指針では、貯湯槽は60度以上、末端の給湯栓は55度以上

宿で考えられること

  • 1日に使うお湯の量と、季節ごとの変化を調べる
  • 太陽の熱を、どこまでの予熱に使うかを決める
  • 60度以上にする場所と、雨の日の賄い方を、設計の段階で決める
  • 貯湯槽の排水弁と、年1回以上の清掃を、管理の予定に入れる

事業・予約への接続

屋根の集熱器は、客の目にも見える取り組みだ。衛生の管理と組み合わせて説明できれば、安心と環境の両方を伝えられる。

Sources / 参考情報

  • SunEarth(英文) - 事例:マリオット・レジデンス・インの持続可能な太陽熱の給湯
    裏付け: サンカルロス・イーストサンカルロスアベニュー800番地、2017年設置、施工はアズテック・ソーラー、サーモレイ4フィート×10フィート(TRB-40)の平板型60枚、方式は太陽で予熱した水、太陽熱の給湯は15か月未満で投資を回収することも多い(一般の説明)
  • 一般社団法人ソーラーシステム振興協会 - 業務用太陽熱利用システムの設計・施工ガイドライン(PDF)(平成25年4月)
    裏付け: 給湯システムの集熱効率は概ね30〜60%、飲用に供する場合は熱交換器等を介して給水予熱とする、太陽依存率を高くしすぎると集熱面積が増え夏に熱量がむだになり経済性を損なう、機器や配管は負荷に近く十分に断熱、補助熱源装置の能力は原則として負荷の100%
  • 資源エネルギー庁 - 太陽熱利用システムの基本的事項(第2章、PDF)
    裏付け: 給湯の需要の30〜40%を太陽熱で賄える、使用温度40〜60度で集熱効率が高く最も適した用途、貯湯槽を設ければ補助ボイラの容量が小さくても瞬時に対応、補助熱源機は太陽熱で足りないとき所定の温度まで加熱
  • 厚生労働省 - レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針(PDF)(平成15年厚生労働省告示第264号)
    裏付け: 給湯設備では湯温の制御が最も必要、貯湯槽内60度以上・末端の給湯栓55度以上の加熱装置、排水弁、定期的な排水と年1回以上の清掃、入浴設備で湯温が60度に満たない貯湯槽には60度以上に保つ加熱装置を設置するなど
  • 資源エネルギー庁 - 平成21年度 業務用太陽熱利用システムの施工・保守ガイドライン 第1章(PDF)(平成21年12月)
    裏付け: 直接集熱方式は集熱循環系が開放で汚れや変質が起きることがあり衛生上飲用に適さない、飲用は給湯回路を分離し熱交換器で給水を加熱、蓄熱槽容量は一般建物で給湯50〜100リットル/平方メートルが多い、機器はできるだけ負荷に近く配置

関連する記事