GOAL 12 · TARGET 12.5 水・衛生・循環 5分 / 2833文字 しくみを読む型 #498

水を抜く機械と、水を足す工場:「シェラトン・サンディエゴ」の生ごみの二つの行き先を、体積と重さの違いから読む

米国カリフォルニア州の「シェラトン・サンディエゴ・ホテル&マリーナ」は、2つの棟で生ごみを分ける取り組みを広げてきた。その歩みは#324で取り上げた。

この記事では、2023年の記事に出てくる二つの仕組みに注目する。一つは、生ごみから水を抜いて小さくする機械。もう一つは、生ごみに水を足して、どろどろにする工場だ。同じ記事に並んでいるが、向きは正反対に見える。

2023年の記事が伝えたこと

ホテル業界の専門メディア、ホテル・ダイブの2023年9月8日の記事によると、このホテルは2021年に、ごみの中身を調べて、食べ物が大きな割合を占めていることに気づき、堆肥化の取り組みを見直した。

  • 廃棄物処理の大手ウェイスト・マネジメント(WM)の「CORe」という仕組みと組んだ。生ごみを「有機のスラリー」に変え、エネルギーをつくる仕組みだ
  • 総料理長のマルコス・セビル氏は、フィーディング・サンディエゴ(食料を必要な人に届ける団体)に寄付できない食べ物を、埋め立てに回さないようにしている、と話す。目標は、2023年に食べ物のごみを20%減らすこと
  • 220ポンドの脱水機を使い始めた。生ごみから水分を抜き、ごみを小さくする
  • 今は、宴会の料理から出る生ごみを脱水し、体積を80%以上減らしている。そのあと、堆肥の施設に運ばれ、マルチ(土の表面を覆う資材)になる

記事は、脱水した生ごみが CORe に行くのか、堆肥の施設だけに行くのかを、はっきり書いていない。また、「220ポンド」が一度に入れられる量なのか、1日に処理できる量なのか、機械の重さなのかも書かれていない。

CORe:生ごみに水を足す

WM の南カリフォルニアの案内によると、CORe は、生ごみから異物を取り除き、液状にして「エンジニアード・バイオスラリー」と呼ぶ物をつくる。それをタンク車で下水処理場に運び、下水の汚泥といっしょに発酵させる。出てくるバイオガスで、電気と熱をつくる。案内では、ロサンゼルス郡の衛生区の、カーソンにある下水処理場が使っている。

廃棄物業界の専門メディア、ウェイスト・ダイブの2017年9月11日の記事は、ボストンの CORe の様子を伝えている。受け入れた物の約9%を異物として取り除き、残りに水や、ほかの有機の液体を混ぜてスラリーにする。できあがりは、煮たオートミールのような固さだという。

つまり、CORe の行き先では、生ごみの水分はじゃまにならない。むしろ、水を足して、ポンプで送れるようにしている。

脱水機:生ごみから水を抜く

一方、脱水機は、生ごみから水分を抜く。運ぶ量が減り、堆肥の施設に運ぶ前に小さくできる。

ここで気をつけたいのは、「80%以上」が体積の話だということだ。体積は、すき間や形で大きく変わる。重さがどれだけ減ったかは、生ごみにどれだけ水分があったか、どこまで乾かしたかで決まる。記事には、重さの数字は出てこない。

ごみの料金が、容器の大きさや回数で決まる町なら、体積が減れば費用も下がりやすい。重さで決まる町なら、体積が80%減っても、料金は80%は下がらないことがある。

2014年の数字:「寄付するホテル」の0.49ポンド

サンディエゴのホテルの生ごみについては、もう一つ資料がある。堆肥の専門誌バイオサイクルの2014年1月21日の記事は、市の事業系の生ごみの堆肥化の取り組みを紹介している。

  • 最初に参加したのは「ヒルトン・サンディエゴ・ベイフロント」で、2010年5月。100人を超える従業員の研修を含め、1か月で始めた
  • 参加しているホテルの食べ物のごみは、平均で1食あたり0.85ポンド
  • 食べられる余りを寄付し、従業員の食堂でも使っているホテルは、平均で1食あたり0.49ポンド

0.85と0.49は、二つのグループの平均を並べた数字だ。同じホテルが寄付を始めて0.85から0.49に減った、という意味ではない。それでも、寄付と従業員の食堂で、ごみになる前に食べ物を回すことの大きさは読み取れる。シェラトンの総料理長の「寄付できないものを」という言葉も、同じ順番を示している。

日本の宿に置き換えると:豊橋市の下水処理場

CORe のように、生ごみを下水処理場で汚泥といっしょに発酵させる仕組みは、日本にもある。愛知県豊橋市の「豊橋市バイオマス利活用センター」だ。

豊橋市上下水道局によると、このセンターは平成29年10月に使い始めた。下水処理場である中島処理場に、下水の汚泥、し尿や浄化槽の汚泥、そして生ごみを集め、メタン発酵させる。

  • 受け入れの計画量:汚泥が1日約472立方メートル、生ごみが1日約59トン
  • 生ごみは、砕いて分け、発酵に向かない物を除く(毎時6トン、3系列)
  • 発酵の槽は5,000立方メートルが2基。バイオガスで発電する(発電機1,000キロワット)
  • 発酵のあとの汚泥は、水分とにおいを除いて、炭の燃料にする

令和2年度の実績では、生ごみの受け入れは1日47トンで、計画の59トンを下回った。一方、発電して売った電気は年682万3,541キロワット時で、計画の680万キロワット時を上回った。市の事業の募集要項では、受け入れる生ごみに、家庭の生ごみと事業所の生ごみ(事業系一般廃棄物)の両方が含まれている。

このように、湿ったまま受け入れて発酵させる行き先なら、宿の側で水を抜く必要は小さい。堆肥の施設に運ぶ、あるいは重さや体積で料金がかかる収集に出すなら、水を抜く意味が出てくる。どちらが合うかは、生ごみの行き先で決まる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

20室の宿の厨房で、生ごみが1日10キログラム出るとする。生ごみの80%が水分で、脱水機がその水分の4分の3を抜くとする。

  • 抜ける水:10キログラム×80%×4分の3=6キログラム
  • 残る重さ:4キログラム。重さは60%減る
  • 体積は、かさが減って80%減るとする

料金が重さで決まる場合(1キログラム46円)

  • 脱水しない:1日460円
  • 脱水する:1日184円。減るのは276円で、60%

料金が容器の数で決まる場合(45リットルの袋1枚400円)

  • 脱水しない:1日に袋2枚で800円
  • 脱水する:体積が5分の1になり、袋1枚に収まって400円

同じ脱水機でも、「80%減」がそのまま費用の80%減になるとは限らない。脱水機の電気の費用も、ここに入っていない。生ごみを発酵の施設に出せる地域なら、脱水しない選び方もある。数字はすべて仮定だ。

行き先から考える

シェラトン・サンディエゴの記事には、水を足す CORe と、水を抜く脱水機が並んでいた。向きは正反対だが、どちらも、生ごみを埋め立てに回さないための道具だ。

宿が生ごみの機械を考えるときは、まず生ごみの行き先と、料金が重さで決まるのか体積で決まるのかを確かめたい。「80%減」が、何の80%なのかも。

持ち帰れる知識

  • CORe は、生ごみに水を足してスラリーにし、下水処理場で汚泥といっしょに発酵させる
  • 脱水機の「80%以上」は体積で、重さの数字ではない
  • 料金が重さで決まるか、体積で決まるかで、脱水の効き目は変わる
  • サンディエゴの0.85と0.49ポンドは、二つのグループの平均を並べた数字
  • 日本でも、豊橋市が下水処理場で汚泥と生ごみをいっしょに発酵させている

宿で考えられること

  • 生ごみの行き先(堆肥、発酵、焼却)を確かめる
  • ごみの料金が、重さで決まるか、容器の数で決まるかを確かめる
  • 機械のカタログの「何%減」が、体積か重さかを確かめる
  • 寄付や従業員の食事で、ごみになる前に回せる食べ物を探す

事業・予約への接続

生ごみの行き先まで説明できれば、取り組みの中身が伝わる。「発電に使われる」「堆肥になる」と具体的に示せば、客や取引先にも分かりやすい。

Sources / 参考情報

  • Hotel Dive(英文) - ホテルが食品ロスに取り組む3つの独自の方法(2023年9月8日)
    裏付け: 2021年にごみを調べて食べ物が大きな割合と気づき堆肥化の取り組みを見直し、WM の CORe と組み有機のスラリーにしてエネルギーに、総料理長マルコス・セビル氏、フィーディング・サンディエゴに寄付できない食べ物、2023年に20%減らす目標、220ポンドの脱水機、宴会の生ごみを脱水して体積を80%以上減らす、堆肥の施設でマルチに
  • Waste Management(英文) - WM CORe:南カリフォルニアの生ごみを、きれいな再生可能エネルギーに(PDF)
    裏付け: 生ごみから異物を除き液状にしてエンジニアード・バイオスラリーに、タンク車でロサンゼルス郡衛生区のカーソンの下水処理場へ、下水の汚泥といっしょに発酵、バイオガスで電気と熱
  • Waste Dive(英文) - ボストンの CORe の内側:ウェイスト・マネジメントの、都市の生ごみへの答え(2017年9月11日)
    裏付け: 受け入れた物の約9%を異物として取り除く、残りに水やほかの有機の液体を混ぜてエンジニアード・バイオスラリーに、煮たオートミールのような固さ
  • BioCycle(英文) - サンディエゴのホテルの生ごみの堆肥化(2014年1月21日)
    裏付け: ヒルトン・サンディエゴ・ベイフロントが2010年5月に最初に参加、100人超の研修を含め1か月で開始、参加ホテルの平均は1食0.85ポンド、余りを寄付し従業員の食堂でも使うホテルは平均1食0.49ポンド
  • 豊橋市上下水道局 - 豊橋市バイオマス資源利活用施設整備・運営事業
    裏付け: 平成29年10月供用開始、中島処理場、受け入れ計画量は汚泥約472立方メートル/日・生ごみ約59トン/日、生ごみの破砕・分別・発酵不適物の除去(毎時6トン×3系列)、発酵槽5,000立方メートル×2基、発電機1,000キロワット、炭化燃料、令和2年度の生ごみ47トン/日(計画59)・売電6,823,541キロワット時(計画680万)
  • 豊橋市 - 豊橋市バイオマス資源利活用施設整備・運営事業 募集要項(修正版)(PDF)(平成26年7月)
    裏付け: 受け入れるバイオマスに家庭系一般廃棄物(生ごみ)と事業系一般廃棄物(生ごみ)、汚泥約472立方メートル/日、生ごみ約59トン/日

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