GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 5分 / 2908文字 物差しで読む型 #499

「1日50万ガロン」と「1か月63万ガロン」:ヒルトンの2つのホテルの水の数字を、同じ物差しで並べて読む

米国のホテル業界誌ホテル・マネジメントの2018年1月23日の記事は、大きなホテルと小さなホテルが、洗濯の持続可能性にどう取り組んでいるかを伝えた。そこに、ヒルトンの2つのホテルが出てくる。テキサス州の「ヒルトン・アメリカズ・ヒューストン」と、ニューメキシコ州の「ヒルトン・サンタフェ・バッファロー・サンダー」だ。

元の記事は、バッファロー・サンダーの「1日50万ガロンの水をリサイクルし、ゴルフ場に使う」という数字を大きく扱っていた。この記事では、その数字を、ヒューストンの洗濯の水の数字と同じ物差しで並べてみる。

ヒューストン:2015年に入れた装置

ホテル・マネジメントの記事によると、1,200室のヒルトン・アメリカズ・ヒューストンの総支配人ジャック・ドロヴァンクール氏は、ホテルに水をリサイクルする装置を入れた。

  • 2015年9月に、16万6,000ドルで設置した
  • 2017年10月までに、76万3,217ドルを節約した
  • 洗濯の水をきれいにして、最大5回まで洗濯に使い直す

節約の額は、設置の費用の約4.6倍だ(InnBuddyによる計算)。総支配人は「回収が早かったので、難しい説得ではなかった」と話している。

記事は、自前の大きな洗濯場は、初めの投資は大きいが、元が取れる可能性があるとも伝えている。2017年のハリケーン・ハービーのとき、ホテルにつながるコンベンションセンターは、家に帰れない1万人を受け入れた。赤十字から頼まれて、ホテルはそのリネンを1日14時間洗い続けたという。

ヒューストン:2010年の発表

同じホテルは、2010年にも洗濯の水のリサイクルを発表している。宿泊業の環境の専門メディア、グリーン・ロッジング・ニュースの2010年5月19日の記事によると、ホテルの洗濯場にアクアリサイクル社の装置が入った。

  • 洗濯場の広さは2万7,000平方フィート。リネンを月67万5,000ポンド超、年900万ポンド洗う
  • 自分のホテルのほか、隣のジョージ・R・ブラウン・コンベンションセンターと、近くの7つのホテルの洗濯も請け負う
  • 装置を入れる前の水の使用量は月63万ガロンで、これを75%減らす。年550万ガロン超の飲み水の節約になる
  • 洗濯機に戻る水は華氏120度を保ち、水を温めるガスを減らす

2010年の装置と、2015年の装置がどういう関係なのか(入れ替えか、追加か)は、どちらの記事にも書かれていない。引用するときは、どの年の、どの装置の数字かを分けておきたい。

バッファロー・サンダー:「1日50万ガロン」

同じ2018年の記事で、ヒルトン・サンタフェ・バッファロー・サンダーの客室部門の責任者ラファエル・アバロス氏は、こう話している。

  • リゾートは1日50万ガロンの水をリサイクルし、グレーウォーターにして、ゴルフ場の水やりに使う
  • 「水は使われ、きれいにされ、使い直されてから、グレーウォーターの系統に回る。グレーウォーターは27ホールすべてに行き、ほかのどこにも行かない」

アバロス氏は、大きな連続式の洗濯機が、ホテルの洗濯の85%をこなしているとも話している。

同じ物差しで並べる

ここで、二つの数字を1日あたりにそろえてみる。

  • ヒューストンの洗濯場の、装置を入れる前の水:月63万ガロンは、30日で割ると1日約2万1,000ガロン
  • バッファロー・サンダーの「1日50万ガロン」は、その約24倍

ヒューストンの洗濯場は、1,200室のホテルに加えて、コンベンションセンターと7つのホテルのリネンを洗う、市内で最も大きなホテルの洗濯場だ。一方、業界誌ホテル・マネジメント・ネットワークの紹介によると、バッファロー・サンダーは2008年に開業した395室のリゾートだ。

この規模の差から見ると、「1日50万ガロン」が洗濯の水だけの数字とは考えにくい。同じ紹介は、リゾートの計画で、水を100%リサイクルできる排水の処理施設を建てる必要があったと書いている。50万ガロンが、リゾート全体の排水を処理した水を指すのか、別の意味なのかは、記事からは分からない。

1ポンドあたりの水

ヒューストンの2010年の数字から、リネン1ポンドあたりの水も計算できる。月63万ガロンを月67万5,000ポンドで割ると、1ポンドあたり約0.93ガロンだ(InnBuddyによる計算)。

ホテル業界紙ホテル・ビジネスの2004年10月21日の記事は、一般的な洗濯工場では1ポンドあたり約3ガロンを使うと書いている。同じ記事に出てくる、ニュージャージー州にあるヒルトンの子会社の洗濯工場(メリテックス)は、連続式の洗濯機を使い、水のリサイクルを始める前から1ポンドあたり1.29ガロンだった。ヒューストンの0.93も、装置を入れる前の数字だ。大きな連続式の洗濯機を使う洗濯場は、もともと水が少なくて済むことが読み取れる。ただし、2004年と2010年の記事で、数え方が同じかどうかは分からない。

日本の宿に置き換えると

日本では、下水処理場できれいにした水を、芝生の水やりなどに使う例がある。国土交通省の「下水処理水の再利用水質基準等マニュアル」(平成17年4月)は、その水質の基準を、用途ごとに決めている。

  • 「散水用水」は、植樹帯、芝生、路面、グラウンドなどに散水する水
  • 大腸菌は検出されないこと。pH は5.8〜8.6。見た目とにおいは不快でないこと
  • 濁度は2度以下を管理の目標にする。砂ろ過の施設か、同じ以上の働きの施設を設ける
  • 散水は、利用者が少ない時間帯に行うなど、利用者が飛沫を吸い込まないよう気をつける

このマニュアルは、下水処理場から、不特定多数の人が使う施設に送る水が対象だ。宿の中で処理する水には、そのまま当てはまるわけではない。それでも、芝生にまく水に求められる水準の目安になる。マニュアルによると、平成14年度の時点で、下水処理水の再利用は全体の2%未満だった。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)

20室の宿で、稼働率70%、1室1泊あたりのリネンを4キログラムとする。1日のリネンは56キログラムだ。

  • 洗濯の水を、1キログラムあたり25リットルとすると、1日1.4立方メートル
  • その75%をリサイクルできれば、1日1.05立方メートルの節約
  • 1年では約383立方メートル。1立方メートル600円なら、年約23万円

この宿の洗濯の水は、1日1.4立方メートル。「1日50万ガロン」は約1,893立方メートルで、その約1,350倍になる。大きな数字を読むときは、まず1日あたり、1室あたり、1キログラムあたりにそろえてみると、何の水なのかの見当がつく。数字はすべて仮定だ。

単位をそろえてから比べる

ヒューストンの数字は、洗濯場の水の量と、費用と、節約の額がそろっていた。バッファロー・サンダーの「1日50万ガロン」は、洗濯の記事の中に出てくるが、洗濯の水とは考えにくい規模だった。

宿が水の数字を伝えるときも、聞くときも、「1日か、1か月か」「どこの水か」を書き添えたい。

持ち帰れる知識

  • ヒューストンの洗濯場の水は、装置を入れる前で1日約2万1,000ガロン
  • 「1日50万ガロン」はその約24倍で、洗濯の水だけとは考えにくい
  • 2010年と2015年の装置の関係は、記事からは分からない
  • ヒューストンの洗濯場は、導入前でもリネン1ポンドあたり約0.93ガロン
  • 日本の下水処理水の散水用水は、大腸菌が検出されないことなどが基準

宿で考えられること

  • 水の数字は、1日あたりと1キログラムあたりにそろえて記録する
  • 洗濯の水と、建物全体の排水の数字を分けておく
  • 装置の数字は、どの年の、どの装置のものかを書き添える
  • リサイクルした水を外の水やりに使うなら、時間帯と水質に気をつける

事業・予約への接続

水の数字を単位をそろえて示せば、客や取引先が比べやすい。洗濯の水をどれだけ節約したかを、1キログラムあたりで示すのも一つの方法だ。

Sources / 参考情報

  • Hotel Management(英文) - 大きなホテルと小さなホテルは、洗濯の持続可能性にどう取り組むか(2018年1月23日)
    裏付け: 1,200室のヒルトン・アメリカズ・ヒューストン、総支配人ジャック・ドロヴァンクール氏、2015年9月に16万6,000ドルで設置、2017年10月までに76万3,217ドル節約、最大5回使い直す、回収が早かった、ハリケーン・ハービーでコンベンションセンターが1万人を受け入れ赤十字のリネンを1日14時間、バッファロー・サンダーの客室部門の責任者ラファエル・アバロス氏、1日50万ガロンをリサイクルしグレーウォーターでゴルフ場の水やり、27ホールすべてに行き、ほかには行かない、連続式の洗濯機が洗濯の85%
  • Green Lodging News(英文) - ヒルトン・アメリカズ・ヒューストンが、アクアリサイクルの洗濯の装置で節約(2010年5月19日)
    裏付け: 洗濯場2万7,000平方フィート、月67万5,000ポンド超・年900万ポンド、ジョージ・R・ブラウン・コンベンションセンターと7つのホテルの洗濯も請け負う、導入前の月63万ガロンを75%減らす、年550万ガロン超、華氏120度、市内で最も大きなホテルの洗濯場
  • Hotel Management Network(英文) - バッファロー・サンダー・リゾート&カジノ(米国)
    裏付け: 2008年8月開業(式典は9月3日)、客室395、ポホアキの人々とヒルトンの共同事業、水を100%リサイクルできる排水の処理施設の建設が必要だった
  • Hotel Business(英文) - ヒルトンの洗濯工場が、水の再利用で節約(2004年10月21日)
    裏付け: ヒルトン・ホテルズの子会社メリテックス、ニュージャージー州、トンネル洗濯機3台、一般は1ポンドあたり約3ガロン、1日10万ポンド超を12万5,000ガロン・1ポンドあたり1.29ガロン
  • 国土交通省・国土技術政策総合研究所 - 下水処理水の再利用水質基準等マニュアル(PDF)(平成17年4月)
    裏付け: 散水用水は植樹帯・芝生・路面・グラウンド等への散水、大腸菌不検出・pH5.8〜8.6・外観と臭気が不快でない・濁度2度以下(管理目標値)・砂ろ過施設又は同等以上、散水は利用者が少ない時間帯に、不特定多数の人が利用する施設に直接供給する形態に限定、平成14年度の再利用は下水処理水全体の2%未満

関連する記事