採用 / RECRUITMENT採用コスト・人件費
HRBP対象: 経営者・支配人

ホテルの人件費率はどう考えるか

人件費率の求め方は、1行で書けます。人件費率 = 人件費 ÷ 売上高 × 100。難しいのは計算ではなく、出てきた数字をどう読むかです。同じ数字でも、宿の型によって意味が変わります。


人件費率に含まれるもの

「人件費」と言ったときに、どこまで含めるかで数字は動きます。宿によって集計範囲が違うと、比較は成り立ちません。まずは自分の宿の範囲を決めてください。

  • 基本給・各種手当・賞与
  • 法定福利費(社会保険の事業主負担分)
  • 通勤交通費
  • 残業代、深夜・早朝の割増分
  • 採用にかけた費用(求人媒体費・紹介手数料)
  • 教えるために使った既存スタッフの時間

最後の2つは、人件費率に入れない宿が多いようです。ただし実際に発生しているコストなので、別の場所で見ておかないと、採用の判断を誤ります。

あなたの宿では、どこまでを人件費として集計しているでしょうか。集計の範囲が決まっていないなら、まず範囲を決めるのが最初の1歩です。範囲が決まらないまま数字を出すと、月ごとの比較ができなくなります。

率が高い/低い、だけでは何も決まらない

人件費率が高いと聞くと「削らなければ」と反応したくなります。ただ、その前に確認したいことがあります。

分子(人件費)が増えたのか、分母(売上)が減ったのか。

稼働率が落ちれば分母が縮み、人数を変えなくても率は上がります。この場合に人を減らすと、稼働が戻ったときに回りません。

逆に、人が足りなくて取りこぼしている売上があるなら、それは率には現れません。率だけを見て削ると、この見えない損失がさらに大きくなります。

直近の数字について、分子が動いたのか分母が動いたのかを分けてみてください。分けるだけで、打つ手が変わります。

宿の型によって、率は違う

回転型のビジネスホテルと、1組1組に手数をかける旅館では、売上の作り方そのものが違います。だから率を並べても、そのままでは比べられません。

比較するなら、同じ型の宿の、同じ月です。季節変動が大きい業種なので、前月より前年同月を見たほうが実態に近くなります。

外部の数字と比べたくなるときは、比べる目的をはっきりさせておくことが大切です。「うちは高いのか」を知りたいのか、「下げる余地があるのか」を知りたいのか。後者なら、外部の平均値はあまり役に立ちません。自分の宿の中身を見るほうが速いです。

率を下げると、現場で何が起きるか

人件費率は、下げようと思えば下げられます。シフトを削り、残業を止め、募集を止める。数字は改善します。

そのあとに起きるのは、多くの場合こういう流れです。

• 残った人の持ち場が増える

• 休憩が取れなくなる

• 有給が出せなくなる

• 辞める人が出る

• 採用が追いつかず、さらに持ち場が増える

数字は1度よくなって、半年後に戻ってくることがあります。人件費率は、削った結果を後から見せる指標でもあります。

もし直近で率を下げたなら、そのあとに残業時間と有給の取得状況を見てみてください。両方が悪化しているなら、削った分は現場に移っただけです。数字は改善して、人が減る準備が進んでいます。

率と1緒に見ておきたい3つの数字

| 見るもの | 求め方 | 何が見えるか |

|---|---|---|

| 労働分配率 | 人件費 ÷ 付加価値額 | 生み出した価値のうち、どれだけ人に配っているか |

| 時間当たり売上 | 売上高 ÷ 総労働時間 | 人の時間の使い方 |

| 1人当たり売上 | 売上高 ÷ 従業員数 | 体制の厚み・薄さ |

人件費率だけを見ると「高い/低い」で終わります。この3つを並べると、高い理由が見えてきます。時間が長いのか、人が少ないのか、売上が薄いのか。打つ手はそれぞれ違います。

3つ全部を出さなくても構いません。時間当たり売上だけでも、人件費率より多くのことを教えてくれます。同じ売上なら、かけた時間が少ないほど良い数字です。あなたの宿の総労働時間は、すぐに出せるでしょうか。

経営会議で使える言い方

「人件費率が高いので下げましょう」は、会議では通りやすい言い方です。ただ、現場には「削れ」としか届きません。

言い換えるなら、こうです。

「いまの人件費率で、現場は回っていますか。回っていないなら、率ではなく配置を見直しましょう。」

率は結果です。配置と業務が原因です。原因に触れないまま結果だけを動かそうとすると、現場に負担が移ります。

会議で「現場は回っていますか」と聞くと、多くの場合「回っています」と返ってきます。そこで終わらせず、「回っていて、休憩は取れていますか」まで聞くのが要点です。この2段目の問いに、率には出ない実態が入っています。

最初の1歩としての小さな実践

直近12ヶ月の人件費率を、月ごとに並べてみてください。 12ヶ月あれば、季節の動きが見えます。

並べたら、率が1番高い月と1番低い月で、何が変わったのかを1行で書きます。「稼働が落ちた」なのか「残業が増えた」なのか「賞与の月だった」なのか。書けたら、その宿の率の動き方には理由があるとわかります。

理由が書けないなら、集計の範囲を見直すところから始めてください。数字が出せないことより、数字の理由が言えないことのほうが、経営では困ります。

もう1つだけ。率を並べたあとに、同じ12ヶ月の離職者数を隣に置いてみてください。率が下がった月に離職が増えているなら、その下げ方は現場に負担を移した形です。2つを並べる習慣があると、人件費の判断を誤りにくくなります。



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