宿の魅力を言葉にできないまま求人を出していないか
求人票を書く。宿の紹介の欄で、手が止まる。「自然に恵まれた」「アットホームな」「創業数十年」。書いてみて、どれも自分の宿だけのことではないと気づく。消す。また書く。
手が止まるのは、魅力がないからではない
まず、置いておきたいことがあります。
手が止まるのは、魅力がない宿だからではありません。魅力はあるのに、言葉にする作業をこれまでやってこなかったからです。
宿の魅力は、毎日その中にいる人には見えにくくなります。当たり前になっているからです。当たり前になったものは、言葉になりません。
あなたの宿で、求人票の宿紹介の欄を、最後に書き直したのはいつでしょうか。思い出せないなら、その欄は何年も前の言葉のままです。
言葉になっていないとき、何が起きるか
求人票の宿紹介が空っぽだと、次のことが起きます。
- 応募者は、条件だけで宿を比べる
- 条件で並べると、時給の高い宿が勝つ
- 時給で勝てない宿は、応募が来ない
- 来た人は、条件が合うから来ている
- 条件が少し良い宿が見つかると、移る
この流れは、魅力が言葉になっていないことから始まっています。魅力がないのではなく、伝わっていないのです。
魅力は、3つの場所にある
言葉にするなら、次の3つの場所を見ると出てきます。
場所1:お客様が繰り返し言うこと
- 「お風呂がちょうどいい温度だった」
- 「朝ごはんのごはんがおいしかった」
- 「部屋の布団がふかふかだった」
- 「静かで、よく眠れた」
お客様の言葉は、宿の外側からの評価です。外から見える魅力は、応募者にも伝わります。
口コミサイトに並んでいる言葉を、1度読み直してみてください。3つ以上繰り返されている言葉があれば、それが宿の魅力の候補です。
場所2:スタッフが、外の人に話すこと
スタッフが、友人や家族に宿のことを話すとき、何を言うか。
- 「うちは、まかないがうまい」
- 「繁忙期はきついけど、終わったあとが楽」
- 「社長が、現場に出る」
- 「お客さんに名前を覚えてもらえる」
この4つは、求人票には書きにくい言葉です。ただ、応募者が本当に知りたいのは、こういう言葉です。
聞き方を変えると、出てきます。「この宿の、人に言いたいくらい良いところはどこですか」。この問いには、答えが返ってくることがあります。
場所3:やめずに続けていること
宿が、何年もやめずに続けていることがあります。
- 毎朝、廊下を水拭きしている
- 連泊のお客様に、2日目は違う花を飾る
- スタッフの誕生日に、まかないを1品足す
- 繁忙期のあとに、1日休ませる
続けていることは、その宿の価値観です。価値観は、言葉にすると魅力になります。
あなたの宿で、「うちは、これをずっとやっている」と言えることは何でしょうか。1つ出れば、そこから1行が作れます。
1行にする練習
3つの場所から見つかったものを、1行にします。練習の形はこうです。
`
うちの宿は、____を、____のために、____年続けています。
`
例を3つ挙げます。
- 「うちの宿は、地元の野菜を、お客様に季節を届けるために、2十年使い続けています」
- 「うちの宿は、繁忙期のあとに、スタッフが生活を取り戻せるように、3日の連休を入れています」
- 「うちの宿は、新人に、安心して質問できるように、最初の3ヶ月は先輩と組ませています」
3行とも、他の宿には真似しにくい1行です。真似しにくい1行が、採用では効きます。
書けないときは、事実だけ書く
1行が出てこないなら、無理に魅力を書こうとしなくてよいです。事実を書くだけで、応募者には伝わります。
- スタッフ8名、うち5名が勤続5年以上
- 月8日休み、希望休は月2日まで
- まかないは1日2食、夕食は仕出しではない
- 寮あり、個室、月額1万円
4行とも、自慢の言葉がありません。ただ、応募者はこの4行から宿の形を想像できます。想像できる情報があれば、魅力の言葉はなくても応募は来ます。
言葉にすると、社内のほうも変わる
宿の魅力を1行にしたとき、スタッフがそれを言えるようになることがあります。
言えるようになると、接客の場面でも使われます。「うちの宿は、こういうことを大事にしています」の1言が、お客様との会話に入ります。
採用のために書いた1行が、サービスの言葉にもなります。この2段目の効果は、書かないと起きません。
現場で共有したい1つの視点
口コミサイトを開いて、お客様の言葉を3つ書き出してみてください。 3つ書けたら、その中に何度も出てくる単語がないかを見ます。
「静か」「ごはん」「お風呂」「人のよさ」。繰り返し出てくる単語が、あなたの宿の魅力の場所です。
出てくる単語がなかったら、スタッフの1人に「この宿のいいところは?」と聞いてみてください。 答えが返ってこなかったら、それは魅力がないのではなく、聞いたことがなかったということです。聞くところから始められます。