外国人スタッフとのトラブルが起きたときの対応手順
言い合いが起きた。お客様からの指摘が入った。ルール違反があった。対応が遅れたり感情で動いたりすると、1つの問題が3つに増えます。増やさない手順があります。
最初に、3つを分ける
トラブルの場面で、リーダーが最初にすることは「分ける」ことです。
- 起きたこと(事実)
- 起きた人(本人)
- 国籍・文化(属性)
3つが混ざると「外国人スタッフとのトラブル」という塊になり、直す場所が見えなくなります。
属性で説明すると、次回から同じ形が繰り返されます。見るのは、起きたことだけです。
あなたの現場で起きた直近のトラブルは、3つに分けて説明できますか。分けて説明できるなら、手順の半分は終わっています。
対応は5つの段階
読みながら、あなたの現場の直近の「もめごと」を段階に当てはめてみてください。
段階1:場を止める(当日・その場)
言い合いが起きているなら、まず人を分けます。同じ場所で続くと、声は大きくなります。
- 「話は聞きます。今は1度、仕事を分けましょう」
- お客様が関わっているなら、別の場所に案内する
- 安全に関わる場面(物が飛ぶ、押す)なら、間に入るより人を呼ぶ
止めるのは正しさの判断のためでなく、落ち着いた状態で聞くためです。
段階2:別々に聞く(当日中)
関係した人を1人ずつ聞きます。1緒だと、言いにくいことが出ません。
聞く形は3つです。あなたの現場に、本人の言葉を引き出す手段はありますか。
- 事実から聞く:「何時ごろ、どこで、何が起きましたか」
- 気持ちをあとで聞く:「そのとき、どう感じましたか」
- 言葉の壁があるなら、手段を先に用意する:翻訳アプリ、書面の記述、外部の通訳(登録支援機関・監理団体に相談できることがあります)
「あとで」は避けます。あとになると、記憶と気持ちが動きます。当日中に、形は何であれ聞きます。
段階3:事実を書き残す(当日中)
聞いたことを、その日のうちに書きます。書くのは3つです。
- 何時、どこで、誰が、何を言った・したか(事実)
- 本人の説明(そのままの言葉で)
- 自分がどう対応したか
印象(「態度が悪かった」)は、事実の欄に混ぜません。混ぜると、読む人が事実と印象を分けられなくなります。記録は、人事・経営に渡すときにそのまま使えます。
段階4:種類を分ける(翌日まで)
書いたものを見て種類を分けます。
| 種類 | 例 | 誰が対応するか |
|---|---|---|
| 仕事のミス | 手順の間違い、忘れ | 現場リーダー(教育で直す) |
| コミュニケーションのズレ | 指示が届いていなかった | 現場リーダー |
| 人と人のトラブル | 言い合い、無視 | リーダー+人事 |
| ハラスメント | 差別的な言動、いやがらせ | 人事・経営が主(リーダーは記録まで) |
| ルール違反 | 金銭、安全、服務 | 人事・経営 |
| 犯罪の可能性 | 暴力、盗み | 経営判断で警察・専門家へ |
表の下に行くほど、リーダーだけでは抱えない形になります。抱えると、リーダーが壊れます。上に渡すことは、失敗ではありません。
段階5:対応を決めて、伝える(1週間以内)
決めた対応は、関係した本人に3つの形で伝えます。
- 宿が何を起きたと理解したか(事実)
- 何を変えるか(対応)
- 次に同じことが起きたらどうなるか(線)
3つ目の「線」は、日本人スタッフにも同じように伝えます。同じ線であることが、公平さです。あなたの宿では、線がどこに引かれていますか。
チームへの共有は必要な範囲だけです。名前と詳細を広げると、噂が記録の代わりになります。
ハラスメントの場面で、特に気をつけること
ハラスメントはどちらの方向にも起きます。被害を受ける形も、加害者と見られる形もあります。
どちらの形でも、手順は同じです。
- 本人の言葉を、通訳の手段を含めて聞き取る
- 「文化の違いでは」で片付けない(差別的な言動は文化の説明では消えません)
- 記録を人事・経営に渡す
- 相談窓口と外部の窓口(ハローワーク、労働局)を本人に伝える
現場リーダーの役割は、聞いて、記録して、渡すまでです。渡す先は誰でしょうか。名前が決まっていると、その場で動けます。判断は、人事・経営の場所です。リーダーが判断を抱えると、どちらの側からも「味方ではない」と見られることがあります。
やらないほうがよい4つ
4つのうち、あなたの現場で過去に起きたものはありますか。
- 皆の前で問い詰める:次に「わからない」と言えなくなります
- 国籍で推測する:「あの国の人はこういうところがある」は、記録に残さない言葉です
- 対応を先延ばしにする:「言葉が通じにくいから、落ち着いてから」は、ズレを大きくします
- リーダー1人で抱える:抱えたリーダーは、次のトラブルで動けなくなります
トラブルのあとは、空気を戻す
トラブルのあと、空気は1度固くなります。戻すためにできることは3つです。
- 普段の仕事を普段の形で回す:変に丁寧にすると、かえって固さが残ります
- 本人に、普段どおりに声をかける:挨拶と仕事の指示を、変えない形です
- よかった動きを、1度認める:あとに来た良い仕事に、1言を添えます
空気は、特別な行事では戻りません。普段の形が続くと、戻ります。
今日から始められる最初のアクション
5つの段階を、紙に3行で書いてみてください。(1. 場を止める・別々に聞く/2. 当日中に記録する/3. 種類を分けて、人事に渡すかどうか決める)
書けたら、エスカレーションの相手(人事・経営の誰か)の名前を隣に書きます。名前が決まっていると、いざというときに迷いません。
あなたの宿に相談窓口がない場合は、この紙が窓口の代わりになります。手順が1枚ある職場では、トラブルは1つで止まります。