繁忙期の人手不足はいつ決まるのか
繁忙期の人手不足は、繁忙期に起きるのではありません。数ヶ月前の、いくつかの決定で決まっています。 決まっているのに、その場では「足りない」という形でしか見えません。この記事では、不足が決まる4つの時点と、それぞれの時点で打てる手を示します。
不足は「当日」には直せない
GWの朝、客室が十2室あって、清掃が2人しかいない。この状態は、当日には直せません。当日にできるのは、部屋の販売を止めるか、清掃の基準を下げるか、誰かが休まないかの3つだけです。どれも損失か負担を伴います。
つまり繁忙期の人員は、当日の問題ではなく準備の問題です。どの時点で決まるかを見ていきます。
時点1:予約を受け始めたとき(3〜6ヶ月前)
繁忙期の人手は、予約の数で決まります。予約が入った時点で、必要な労働時間は計算できます。
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必要な清掃時間 = 稼働客室数 × 1室あたりの清掃時間
必要な配膳の人数 = 夕食の提供数 × 1卓あたりの担当時間
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この2つを出しておくと、「あと何人必要か」が数字で出ます。
多くの宿では、予約は売上の指標として見ますが、人手の指標としては見ていません。同じ数字を、別の目的でもう1度使うだけです。
あなたの宿では、繁忙期の予約数を、人員計画に反映しているでしょうか。していないなら、次の繁忙期から始められます。
もちろん、予約数が読みにくい宿もあります。団体で大きく動く、天候でキャンセルが出る、そういう形なら、幅で見ておくほうが実態に合います。「この日は8室から十2室」と書ければ、人員の幅も決まります。
時点2:採用を始めるとき(2〜4ヶ月前)
数字が出たら、採用を始めます。ここで起きがちな問題は、始めるタイミングが遅いことです。
- 求人を出してから応募が来るまで:2週間〜1ヶ月
- 面接から内定まで:1週間
- 入社から戦力になるまで:1〜3ヶ月(短期でも数週間)
繁忙期の初日に合わせて採用すると、忙しい日に手が遅い人が入ることになります。
理想は、繁忙期の少し前に慣れさせておくことです。慣らせないなら、繁忙期に渡す仕事を限定します。
あなたの宿で、前回の繁忙期に入った人は、いつ入社していましたか。直前だったなら、次は2週間早めるだけで負荷が変わります。
時点3:シフトを組むとき(1ヶ月前)
採用が間に合わなかった場合、ここで調整します。調整の手段は3つです。
- 提供を減らす(客室を止める、食事の品数を減らす)
- 時間をずらす(チェックインの時間を広げる、清掃の順を変える)
- 人を借りる(繁忙期だけの応援、部署間の移動)
この3つのうち、どの宿でも最初に検討されるのは「人に頑張ってもらう」です。ただ、それは手段に入っていません。頑張りは調整手段ではなく、調整しなかった結果です。
シフトを組むときに、「この日は頑張りで回るか」ではなく「この日は何人足りないか」を書いてみてください。足りない数が書いてあれば、上の3つのどれかを選べます。書いてないと、当日に発覚します。
足りない日が3日だけなら、その3日に短期の人を入れる形で済みます。毎週足りないなら、通年の人員の問題です。この見分けは、書かないとつきません。
時点4:繁忙期の最中(当日)
当日にできることは限られますが、2つあります。
1. 休憩を削らない — 足りないと、まず休憩が削られます。削ると午後の動きが落ち、さらに足りなくなります。休憩を削るのは、不足を翌日に送る行為です。
2. 判断を1人に集めない — 足りない日ほど、支配人に判断が集まります。集まると、支配人が止まったときに現場が止まります。当日の朝に「この3つは各自で判断してよい」を決めておくと、止まりにくくなります。
4つの時点で、どこが1番効くか
4つともやれればよいのですが、余力は限られます。順番をつけるなら、こうです。
| 優先 | 時点 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 予約を受け始めたとき | 数字が出れば、他の3つが動きやすい |
| 2 | シフトを組むとき | 足りなさが可視化される |
| 3 | 採用を始めるとき | 1と2が決まっていれば条件が書ける |
| 4 | 当日 | ここまでに決まっていることの確認 |
効きやすいのは、予約数を人手の数字に翻訳する作業です。翻訳していない宿では、「感覚で足りなさを感じる」状態が続きます。
感覚が悪いわけではありません。経験のある支配人の感覚は、数字より早いことがあります。ただ、感覚は引き継げません。数字にしておくと、担当が変わっても判断が揃います。
繁忙期の不足は、経営の話である
「人が足りない」は現場の言葉です。経営の言葉に翻訳すると、こうなります。
- 何室売って、何人必要で、何人いるか
- 足りない分を、販売を止めて埋めるか、人を足して埋めるか
- 人を足すなら、いくらかけるか
この3行が言えるようになると、繁忙期の話は会議で決まります。言えないままだと、現場の頑張り方で決まります。
頑張りで決まる宿では、繁忙期のあとに人が辞めることがあります。数字で決まる宿では、繁忙期のあとに反省が残ります。
あなたの宿では、前回の繁忙期のあと、何が残りましたか。人が残って反省も残ったなら、準備はうまくいっています。人だけが減ったなら、4つの時点のどこかが空いています。
明日の朝礼や引き継ぎで試せること
次の繁忙期の予約数を、いまの時点で出してみてください。 確定していなくても、見込みで構いません。
出せたら、1室あたりの清掃時間を掛けてみます。ざっくりした数字で構いません。出た時間が、その繁忙期に必要な清掃の総時間です。
いまの人数で賄える時間を引いてください。差が、あなたが必要とする人数です。
予約数が出せないなら、去年の同じ時期の稼働数を使ってください。それだけで、今年の不足は見えます。