技能実習から特定技能へ移行するときに必要な手続き
実習生として3年働いた人が、「この宿に残りたい」と言うことがあります。このとき、宿が知っているかどうかで結果が変わります。移行には道があり、書類があり、期限があります。
移行の道は誰に開いているか
技能実習から特定技能1号への移行は、誰でも無条件でできるわけではありません。開いている道は次の形です。
- 技能実習2号を良好に修了していること
- 実習で身につけた技能と、特定技能で行う仕事が関連していること
宿泊関連の職種(ホテル・旅館の接客など)で実習2号を修了した人は、試験を受けずに特定技能1号(宿泊業)に移行できます。これは大きな利点です。海外から新たに人を採る場合は技能試験と日本語試験が要りますが、移行の場合は免除されます。
「良好に修了」の証明になるのが、実習実施者(宿)が作る評価調書です。この1枚が、移行の中心の書類になります。
あなたの宿に実習生がいるなら、その人の実習の終了時期を1度確認してみてください。移行の話は、終わってからではなく、終わる前から動きます。
手続きの流れを5つの段階で見る
段階1:本人の意思を確認する(修了の半年前〜)
移行は、本人の希望があって始まります。宿の側から「残ってほしい」と伝えることはできますが、決めるのは本人です。帰国して別の道を選ぶ人もいます。
確認のときに合わせて見るものがあります。
- 本人の在留期間の残り
- 実習の修了見込みの時期
- 本人が次にやりたい仕事(同じ宿か、別の宿か)
話し始めは半年前が目安です。書類と申請に時間がかかるので、直前になると在留期限が切れかねません。
段階2:評価調書を作る(宿の仕事)
評価調書は、実習中の技能の習得状況を宿が証明する書類です。様式は外国人技能実習機構のサイトにあり、職種ごとに書きます。
書く内容は、実習計画に沿った技能がどの程度身についたかです。実習計画どおりに実施されていたことが前提になるので、日頃の記録がものを言います。あなたの宿では、いまその記録を書けますか。記録がないと、書くときに困ります。
段階3:新しい雇用契約と支援の形を決める
移行すると、身分が「実習生」から「特定技能の労働者」に変わります。変わるものは3つです。
- 雇用契約:特定技能の条件(報酬が日本人と同等以上など)で結び直す
- 支援計画:特定技能1号の受け入れには支援の義務がある。実習のときの監理団体の支援とは別に、特定技能の支援の形を決める
- 在留資格の変更:出入国在留管理局への申請
支援は自分でやるか、登録支援機関に委託するかを選びます。実習でお世話になった監理団体が登録支援機関も兼ねていることがあり、その場合は流れが軽い形になります。
段階4:在留資格変更許可申請(本人+宿)
出入国在留管理局に、在留資格の変更を申請します。主な書類は次のとおりです。
- 在留資格変更許可申請書
- パスポート、在留カード
- 評価調書(良好修了の証明)
- 新しい雇用契約書の写し
- 特定技能の支援計画に関する書類
- 宿の側の書類(登記事項証明書、決算報告など)
申請は本人が窓口に行きますが、書類の多くは宿が用意します。行政書士に頼む宿もあり、費用はかかりますが、初めての移行なら軽い形になることがあります。あなたの宿で、書類の担当は誰になるでしょうか。
在留期限の前に申請が受理されていれば、結果が出るまで在留できる形があります(特例)。当てにせず、期限に余裕を持って出すのが基本です。
段階5:許可あと、働き始める
許可が下りると、在留カードが「特定技能1号」に変わります。ここから宿の義務も変わります。
- 外国人雇用状況の届出(ハローワーク)
- 支援計画の実施(生活オリエンテーション、定期的な面談など)
- 4半期ごとの届出(出入国在留管理局への定期届出)
届出の詳細は 『外国人スタッフの労務管理で確認しておきたいこと』で扱います。移行はゴールではなく、受け入れの形が変わる地点です。
移行で宿が迷う3つの判断
判断1:同じ宿で続けるか、別の宿へ行くか
本人が別の宿を希望することがあります。特定技能は転職(宿を変えること)が可能な資格で、引き止めることはできません。実習のあいだの働き方が、この判断に効いていることがあります。この場面を、あなたの宿は想像できますか。
判断2:報酬をどう決めるか
実習生のときの報酬と、特定技能の報酬は別に考えます。同等以上の原則があるので、同じ仕事の日本人の水準を見ます。実習のときの金額を続けると、原則に合わない形になることがあります。
判断3:支援を誰がやるか
自分でやるなら対象者支援責任者と支援担当者を社内で決め、委託するなら登録支援機関を選びます。実習時代の監理団体との関係を続ける宿も、切り替える宿もあります。
移行しなかった場合も考えておく
移行の話をしても、残るとは限りません。帰国を選ぶ人も、別の道を選ぶ人もいます。
その場合に備えて、実習の修了と次の人の受け入れを切らさない計画を持っておきます。あなたの宿にその計画はあるでしょうか。穴を特定技能の新規採用で埋める流れも、同じ知識で動けます。
明日の朝礼や引き継ぎで試せること
宿にいる実習生(またはいた実習生)の、実習2号の修了時期を確認してみてください。 終わっていない人は、評価調書の元になる記録がいまどうなっているかも見ます。
修了が近い人がいるなら、段階1の話を今週のうちにしてください。「修了したあと、どうしたいですか」の1言から始められます。
実習生がいない宿は、評価調書の様式を1度見ておくだけでも構いません。様式から、日頃どんな記録が要るかがわかります。それがいつかの受け入れの質になります。