人手不足は「人が足りない」状態なのか
「人手不足です」と言うとき、指している状態は1つではありません。頭数が足りない/仕事が偏っている/仕事そのものが多い。この3つは、見た目が同じで、打ち手がまったく違います。この記事では、3つを見分ける方法を書きます。
人手不足という言葉の中身
人手不足は、感覚ではなく時間で表せます。
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不足している時間 = 必要な労働時間 − 確保できている労働時間
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必要な労働時間は、客室数・稼働・食事の提供数・清掃の基準から決まります。確保できている時間は、人数 × シフト時間 − 休んだ時間です。
この2つを並べると、足りないのが何時間かが出ます。何時間かがわかれば、何人採るかも決まります。
多くの宿では、この計算をしていません。感覚で「足りない」と言っています。感覚が外れているわけではありませんが、感覚だけでは打つ手を選べません。
3つの状態
状態1:頭数が足りない
必要な時間に対して、人がいない。
- 繁忙期に、泊まれる客室数より手が足りない
- 夜勤が1人しかおらず、休めない
- 誰かが休むと、その日の体制が崩れる
これは採用で解決します。増やした人数の分だけ、時間が戻ります。
状態2:仕事が偏っている
頭数は足りているのに、特定の人に集中している。
- 予約サイトの管理も、シフト作成も、クレーム対応も、新人の教育も、支配人
- 料理長が仕入れも、原価管理も、衛生管理も、アルバイトの指導も持っている
- 1人が休むと止まる業務が、3つ以上ある
これは採用では解決しにくい状態です。もう1人増えても、その偏りはそのままでは渡せません。渡すには、仕事を切り出す作業が先に要ります。
状態3:仕事そのものが多い
やっている仕事の中に、やめても困らないものがある。
- 予約情報を、2つのシステムに入力している
- 誰も開かない資料を、毎月つくっている
- 形式だけの申し送りを、毎日書いている
- 同じ清掃基準を、2度確認している
これは人の問題ではなく、業務の問題です。人を増やすと、この状態は見えなくなります。忙しさが薄まるからです。
3つを見分ける方法
見分けるには、1週間の記録が要ります。
誰が、何時から何時まで、何をしていたかを、粗くて構わないので書き出します。3十分単位で十分です。
書き終えたら、次を見ます。
| 見るもの | どの状態か |
|---|---|
| 全員の時間が埋まっているか | 埋まっていて足りない → 状態1 |
| 1人だけ長い人がいないか | いる → 状態2 |
| 誰も困らなさそうな作業がないか | ある → 状態3 |
3つが同時に起きている宿もあります。その場合は、状態3 → 状態2 → 状態1 の順で手を打ちます。順番が逆だと、増やした人が偏りに巻き込まれます。
「足りない」が3つあると、何が困るか
区別せずに「人が足りない」で処理すると、次のことが起きます。
- 採用しても楽にならない(状態2・3が残っているから)
- 採用を止める判断ができない(本当に足りないのか不明だから)
- 残った人の負担が増え続ける(偏りが放置されるから)
- 経営会議で同じ話を毎年する(原因が特定されていないから)
あなたの宿では、去年の「人手不足」の話と、今年の「人手不足」の話は、同じ内容でしょうか。同じなら、去年の手が効かなかったということです。
不足を時間で表す意味
「人が足りない」は感情として伝わります。ただ、会議では動かしにくい言葉です。
「繁忙期の土曜、17時から21時のあいだ、配膳に2人足りない」まで言えると、打ち手が変わります。
- その4時間だけ、短期の人を入れる
- その時間帯の提供数を減らす
- 配膳の形を変える(1括出しにする)
時間を特定すると、選択肢が3つ以上になります。 「人が足りない」では、選択肢は「採る」しか残りません。
状態1が本当にある宿
ここまで読んで、「うちは本当に人がいない」と感じたなら、それは状態1です。
計算式に当てはめてみてください。必要な時間が確保できている時間を上回っていて、その差が埋まる見込みがない。この場合、業務改善では足りません。採用が必要です。
業務の見直しと採用は、どちらか1方ではなく、順番です。状態1が確定しているなら、順序を待つ必要はありません。
ただし、状態1に見えて状態2が隠れていることもあります。「みんな忙しい」ときほど、1人だけが特に忙しいことがあるからです。時間を書き出してから判断してください。
無理なく続けられる現場の工夫
この1週間で、誰が1番長く宿にいたかを書いてみてください。 1人の名前がすぐ出るなら、それは状態2のサインです。
名前が2人以上出るなら、状態2が部署ごとにあります。名前が出ない、それぞれの大差がなければ、状態1か状態3です。
どの結果でも、次にやることが1つ決まります。名前が出るかどうかが、1番速い見分け方です。