宿泊業の離職率はどこで見ればいいのか
「うちの離職率は高いのだろうか」と気になったとき、比べる相手がいないと判断できません。この記事では、数字の出し方と、平均値と比べることの落とし穴、そして離職率より先に見たほうがよい3つの指標を扱います。
離職率は、こう求める
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離職率(%)= 期間中の離職者数 ÷ 期間の平均在籍者数 × 100
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- 期間を揃える:1年単位で見ることが多いです。4半期や月で出すと、1人の出入りで大きく振れます
- 平均在籍者数:(期初の人数 + 期末の人数)÷ 2 で十分です
- 対象を揃える:正社員だけか、パート・アルバイトを含むかで数字はまったく変わります。含めるなら、毎回同じ範囲で出す
この3つが揃っていないと、自分の宿の中でも月ごとの比較ができません。
いま離職率を出しているなら、その3つが毎年同じかどうかを1度確認してみてください。集計の範囲が変わると、数字は実態と関係なく動きます。
公開されている数字と、比べるときの注意
業界団体の調査や国の統計で、宿泊業の離職率が公表されることがあります。探すなら、次の場所が起点になります。
- 厚生労働省「雇用動向調査」(産業別の入職率・離職率)
- 観光庁の宿泊業に関する統計
- 業界団体の経営実態調査
ここで1つ、注意しておきたいことがあります。
公表されている数字と、あなたの宿の数字は、集計範囲が違います。 従業員規模、正社員比率、繁忙期の短期雇用の扱い、施設の種類。これらが揃わないまま比べた数字には、あまり意味がありません。
比べるなら、去年の自分の宿です。同じ集計範囲で出せば、動きは正確に見えます。
外部の数字が役に立つ場面もあります。金融機関や行政に説明するときです。その場合は「業界の水準と比べて、うちはこの位置にあります」と示すために使います。経営の判断に使うのとは、目的が違います。
離職率より先に見たほうがよい3つ
小さな宿では、離職率は分母が小さくて暴れます。5人の宿で1人辞めれば2割です。そこで、次を先に見ます。
1. 在籍期間の中央値
いま働いている人の在籍期間を短い順に並べて、真ん中の値です。「平均」より、1部の長い在籍者に引っ張られません。この宿に人がどれくらい留まるかが、感覚より正確に出ます。
20年勤めている人が1人いる宿と、勤続3年目の人ばかりの宿では、平均在籍年数は前者が高く出ます。しかしこれから入る人がどれくらい留まるかを示すのは、後者の数字です。
2. 入社3ヶ月・1年で残っている人の割合
辞める時期は偏ります。特に入ってすぐは、宿の受け入れ方がそのまま出ます。3ヶ月で半分以上がいなくなっているなら、採用ではなく入ったあとの設計に手を入れる必要があります。
あなたの宿では、辞めた人は入社からどれくらいで辞めているでしょうか。思い出せる範囲で構いません。3ヶ月以内が多いか、1年を超えてからかで、打つ手はまったく変わります。
3. 辞めた人の「部署とシフト」
率ではなく内訳です。どの部署から辞めているか、どの時間帯のシフトに入っていたか。偏りがあると、原因は「宿全体」ではなくその場所にあります。
部署ごとの偏りが出たときは、その部署の責任者を責める話ではありません。その場所に、仕事が集まっているか、教える人が1人しかいないか、どちらかが起きていることが多いです。
離職率は「結果」でしかない
離職率は、すでに起きたことの集計です。見て何かを打てる指標ではありません。
打てるのは、その手前です。
- 入社後の最初の3ヶ月に、何を教えるか
- 繁忙期の前に、誰の負担が増えるか
- 辞めると言った人に、何を聞くか
離職率を追いかけるより、この3つを決めて回すほうが、翌年の数字は変わります。
離職率を毎月見ている宿はありますが、入社後3ヶ月の教育の中身を決めている宿は、それほど多くないようです。結果の指標より、手を入れられる場所を見たほうが、経営としては楽になります。
あなたの宿の数字を出す
いま手元に数字がないなら、今日出せます。必要なのは2つだけです。
• 直近1年間に辞めた人の数
• 直近1年の平均在籍者数
この2つをメモして、上の式に当てはめてください。
出た数字そのものより、「誰が辞めたか」を1人ずつ思い出した時間のほうが、次の採用には役に立ちます。
その人が辞める前に、何か言っていたでしょうか。言っていなかったなら、言える場所がなかったということです。数字を出す作業は、そこに戻るための入口として使ってください。
現場で共有したい1つの視点
在籍している全員の「入社年月」を、1覧にしてみてください。 Excelでも手書きでも構いません。
並べると、同じ時期にまとめて入っているか、ぽつぽつ入っているかが見えます。まとめて入っているなら、その時期に何かあったはずです。ぽつぽつなら、辞めた時期にも偏りがあるかもしれません。1覧にするだけで、宿の人の流れの形が出ます。
もし1覧に、直近1年で入った人が1人もいないなら、それは定着の問題ではなく採用が止まっているサインです。逆に、直近1年で入った人が半分以上なら、教える負担がいま最も重い時期だということです。どちらの形でも、次にやることが決まります。