人手不足を採用だけで解決しようとしない
人が足りない。だから求人を出す。自然な流れです。ただ、同じ宿が毎年同じ時期に求人を出しているなら、採用は解決ではなく、毎年の行事になっていることがあります。
採用は、4つの手のうちの1つ
人手が足りないときに打てる手は、4つあります。
• 人を増やす(採用)
• 仕事を減らす(業務の見直し)
• 仕事を分ける(配置の変更)
• 人を残す(定着)
多くの宿は、1しか使いません。理由ははっきりしていて、1がいちばん結果の見えやすい手だからです。求人を出して、人が入る。数字で確認できます。
2と3は現場の手を止めて考える必要があり、4は結果が出るまで半年かかります。どちらも、忙しい宿では後回しになります。
あなたの宿では、この4つのうち、去年いくつ使ったでしょうか。1つなら、残り3つに余地があります。
採用だけで解決できない理由
採った人が、既存の仕事の中に入ります。既存の仕事が変わっていないと、次のことが起きます。
- 入った人が、いまのやり方に合わせる
- いまのやり方が忙しい理由を含んでいる
- 入った人が、同じように疲れる
- 辞める
この流れは、採った人数に関係がありません。3人採っても、同じ形で3人が疲れます。だから「採用したのに楽にならない」が起きます。楽にならないとまた採用し、採用が増えると教える負担が増えます。採用は、増やすほど重くなる手です。
あなたの宿で、前に採った人はどうなったでしょうか。楽になったなら採用は効いています。楽にならなかったなら、2か3が空いています。
仕事を減らす、という手
2番目の手は、地味です。ただ、効果はすぐに出ます。
宿の中で、やめても困らない仕事を3つ見つけてください。
- 2度入力している予約情報
- 誰も開かない資料
- 形式だけの申し送り
- 必要以上に細かい清掃の2度確認
- 使われていない在庫の棚卸し
3つ見つかってやめると、その分の時間が戻ります。戻った時間は、採用した1人ぶんの時間に近いです。
やめるのは怖いものです。ただ、やめて1週間、誰も困らなかったら、それは要らない仕事だったということです。困ったら戻せます。あなたの宿で、この5つのうち思い当たる行はあるでしょうか。
仕事を分ける、という手
3番目は、配置の話です。
1人に集まっている仕事を、3つに分けます。
- その人にしかできないこと(判断・経験・関係)
- 他の人でもできること(手順が決まっている作業)
- 誰もやらなくてよいこと(2番目に移動)
真ん中だけを、他の人に渡します。渡すと、集まっていた人の時間が空きます。空いた時間に、教えることが入ります。
分けずに採用すると、入った人は「その人にしかできないこと」を任されず、手持ち無沙汰になります。手持ち無沙汰の人は、3ヶ月で辞めます。
あなたの宿で、1人に集まっている仕事はどれでしょうか。名前が1人浮かんだなら、その人の仕事が3番目の対象です。
人を残す、という手
4番目は、いちばん時間がかかります。ただ、いちばん効きます。
採るのにかけたお金は、その人が残る期間で回収されます。3ヶ月で辞めるとほとんど戻らず、3年続くと十分に戻ります。
残すために要るのは、大きな制度ではありません。
- 休憩が取れている
- 困ったときに聞く人が決まっている
- 頑張りが、何らかの形で返ってくる
- 辞めた人の仕事が、誰か1人に積み上がらない
4つは、どれも今日から確認できます。あなたの宿では、この4つのうちいくつが揃っているでしょうか。3つ以上なら残す手は機能しています。1つ以下なら、採用より先にここを見る価値があります。
4つの手の、順番
順番があると、動きやすくなります。
`
まず 2(減らす) → 次に 3(分ける) → それから 1(増やす) → ずっと 4(残す)
`
2と3を先にやると、1で採る人数が減ります。減った人数ぶん、採用にかけるお金と時間が空きます。空いた分を4に使えます。
この順番を飛ばして1から始めると、採った人が2と3の未整理の中に放り込まれます。
もちろん、順番を守れない時期もあります。繁忙期が目の前で、人を採るしかない。その場合は、2と3を後からやると決めておいてください。決めずに飛ばすと、翌年も同じ形になります。
採用を止める、という話ではない
ここまではっきり書いてきましたが、採用をやめましょう、という話ではありません。
宿には、どうやっても削れない時間があります。客室は毎日掃除が要り、食事は毎日つくる必要があり、フロントは誰かが立っていなければなりません。この基礎の量は、業務改善では減りません。成長しようと思えば人は要りますし、繁忙期を越えるにも人は要ります。
言いたいのは、4つの手のうち1つだけを使い続けると、その1つが重くなるということです。重くなった採用は、質が下がります。質が下がると、入った人が残りません。
あなたの宿の採用は、いま軽いですか、重いですか。求人票を書くのが面倒になっていたら、それは重くなっているサインです。
職場の1歩を踏み出すためのヒント
この1週間で、自分がやった仕事を3十分単位で書き出してみてください。 経営者でも、支配人でも、料理長でも構いません。
書き終えたら、2つの印をつけます。
- 他の人に渡せそうな行
- やめても誰も困らなさそうな行
2つ目の印がついた行から、来週やめてみます。1週間困らなかったら、それは要らない仕事でした。困ったら戻してください。
印が1つもつかなかったなら、渡す準備ができていないということです。その場合は3番目の手(分ける)から始めます。
書き出すのが手間なら、昨日の1日だけで構いません。1日分でも印はつきます。ついた印の数が、あなたの宿の余力です。