多能工化はどう進めるか・何から始めるか
「この仕事は、あの人しかできない」——宿にこの行が積み上がると、休みは回らず、欠勤は事故になります。多能工化は、配置の話であり、働き方の話です。この記事は、始め方と進め方の形です。
多能工化とは何か
多能工化は、1人が複数の仕事を担える形にすることです。反対は、「1つの仕事が1人に縛られる形」。
目標は、「みんなが何でも屋になること」でありません。1つの仕事に、2人以上——この行が目標です。2人いれば、休みは回ります。3人いれば、忙しさは支え合えます。
なぜやるのか:3つの理由
• 配置:欠勤・退職で仕事が止まらない
• 働き方:仕事に縛られた人は、休みを取れません。有給が紙の上の形になることもあります。多能工化は、休みを実際に機能させる道具です
• 成長:仕事を増やした人は、次の段が見えます。学びの無い職場は、静かに人が出ます
3つの理由のうち、あなたの宿で今、重さを感じるものはどれですか。重いものが、始める場所のヒントです。
始めの1:スキルの1覧を1枚に
始める前に、見える化します。縦に仕事、横に人、マスに3つの段を書きます。
| 仕事 \ 人 | Aさん | Bさん | Cさん | Dさん |
|---|---|---|---|---|
| フロント | 1人 | 見れば | まだ | 1人 |
| 客室 | 1人 | 1人 | 見れば | まだ |
| 厨房 | まだ | 1人 | まだ | 見れば |
| 宴会 | 見れば | まだ | 1人 | まだ |
3つの段は——1人でできる/見ればできる/まだ。
埋めると、2つの形が見えます。
- 1人しか「1人でできる」がいない行——ここが最初の候補です
- まだ、の列が多い人——この人の学びの余白です
紙1枚で十分です。あなたの宿の1覧に、「1人」の行はいくつありますか。
始めの2:順番の3つの決め方
全部を1度にやると止まります。順番の決め方は3つです。
• 止まる仕事から:「1人」の行の中で、欠けた日に宿が止まる仕事(深夜のフロント、厨房の仕込み)を最初に
• 教える人が近い仕事から:教える相手がいる仕事は、OJTがすぐ回ります。相手が遠い仕事は後に
• 手を挙げた人から:「やってみたい」の声は、学びの1番軽い燃料です。順番に混ぜます
3つが重なる仕事——止まる仕事で、教える人が近くにいて、手を挙げた人がいる——が、最初の1枚です。
進め方:OJTのサイクルをもう1度
多能工化の教え方は、新しい方法でありません。OJTの4つのステップを、新しい仕事にもう1度回すだけです。
- 台本はマニュアル。台本のない仕事は、まず1枚書くところからです
- 教える時間はシフトに置きます。時間の裏づけのない多能工化は、好意の上で回ります
- 繁忙期に備える形は、谷の時間に回します
罠:3つ
• 何でも屋化:「少しできる」を十並べる形でなく、「1人でできる」を2つ3つ育てます。深さのない横広がりは、配置の役に立ちにくいことがあります
• 評価が変わらない:仕事を増やした人の評価と配置が変わらないと、手は挙がらなくなります
• 時間を割かない:新しい仕事は、学びの時間が要ります。時間を割かない多能工化は、働き方を悪くする形です——目標と逆です
3つの罠は、どれも「制度」でなく「置き方」の話です。あなたの宿の計画に、3つの置き方は入っていますか。
多能工化の本当の効果
配置の技術として語られる多能工化ですが、1番深い効果は休みです。
1つの仕事に2人以上いる宿では、連続の休みが取れます。取れた休みは、戻ってきた日の仕事を変えます。多能工化は、人材配置の話である前に、働き方の土台の話です。
現場でまず着手できること
紙1枚に、縦5つの仕事×横5人の表を書いて、3つの段で埋めてみてください。
- 5分で埋まります。埋まらないマスは「分からない」——それ自体が所見です
- 「1人」の行に丸を付けます
- 丸の中から、今日の3つの決め方(止まる・近い・手を挙げた)で最初の1枚を選びます
多能工化は、大きな計画でなく、1枚の表と最初の1行から進みます。あなたの宿の「1人」の行は、今日数えられます。