採用 / RECRUITMENT採用戦略
INSIGHT対象: 経営者・支配人

どんな宿でありたいかが採用を決める

同じ条件で求人を出して、応募が来る宿と来ない宿があります。差は時給だけではありません。その宿が何を目指しているかが、外から見えるかどうかで、来る人の層が変わります。


「どんな宿でありたいか」がないと、何が起きるか

ない宿では、採用が次の形で進みます。

  • 辞めた枠を、前の担当者と似た条件で募集する
  • 応募してきた人の中から、条件が合う人を選ぶ
  • 入った人が、宿の方向を知らないまま働く
  • 半年後に、「思っていたのと違った」となる

この流れは、どれも間違っていません。ただ、選びようがないのです。方向が言葉になっていないと、選ぶ基準が条件だけになります。

条件だけで選ぶと、条件が少し良い宿に人は移ります。あなたの宿が条件で勝てないなら、残る人が少なくなります。

あなたの宿では、「どんな宿でありたいか」を、スタッフが言えるでしょうか。言えないなら、それは共有されていないということです。

方向がある宿では、採用が変わる

方向が言葉になっている宿では、次の3つが変わります。

1. 求人票に「ここでやること」が書ける

「接客スタッフ」ではなく、「1年を通じて、この土地の食材を届ける宿の配膳と客室担当」。書けると、その1文に惹かれる人が応募してきます。

2. 面接で聞くことが決まる

「うちの宿は、こういう方向です。この方向で、あなたがやってみたいことは何ですか」。この問いに答えられる人は、方向を自分の言葉で受け取った人です。

3. 見送る理由が言える

方向と合わない人を、丁寧に断れます。断る理由が言えると、採用担当が消耗しません。

「ありたい姿」は、大きくなくてよい

理念というと、大きな言葉を書きたくなります。ただ、大きな言葉は選ばれません。

使える形は、もっと小さいものです。

  • 「連泊のお客様に、2日目は違う顔を覚えていてもらう宿」
  • 「地元の食材を、地の料理人がつくる宿」
  • 「子どもが走り回っても、スタッフが笑っていられる宿」
  • 「6十代でも、第1線で接客を続けられる宿」

4つとも、1行です。1行でも、採用の判断には十分です。

大事なのは、立派な言葉であることではありません。スタッフが、自分の仕事と結びつけて言えることです。

あなたの宿で、1行にするなら何でしょうか。書けないなら、次の問いが助けになります。

1行を出すための3つの問い

問い1:お客様が、宿を出るときに何と言ってほしいか

「また来ます」なのか「料理が素晴らしかった」なのか「ゆっくり休めました」なのか。言ってほしい言葉が、宿の方向です。

問い2:スタッフが、3年あとに何ができるようになっていてほしいか

後輩に教えられているか。1つの仕事の責任を持てているか。接客の型を自分で変えられるか。3年あとの姿が、育成の方向です。

問い3:やめたくないことは何か

売上のためにやりたくないこと、客層として迎えたくない人、崩したくない習慣。やめたくないことは、方向の輪郭をはっきりさせます。

3つの答えを並べると、1行が出てきます。出てこないなら、3つのうち1つが空いています。

方向と、目の前の採用がずれたとき

方向はある。ただ、いま人が足りていない。この状態では、方向に合わない人でも採りたくなります。

これは、よくある局面です。ここで2つの選び方があります。

選び方A:方向を優先して、採らない

不足は業務の見直しと、既存の人の負担で吸収します。短期は苦しくなります。ただ、方向は守られます。

選び方B:採って、方向を教える時間を取る

入った人に、初日に方向を1行で伝えます。「うちの宿は、こういう宿でありたいと思っています」の1言です。これがあるかないかで、半年あとの理解が変わります。

どちらが正解かは、宿の余力で決まります。ただ、何も言わないまま採るのが、いちばん避けたい形です。何も言わないと、入った人は自分で方向を推測します。推測は、多くの場合、外れます。

方向は、変わってもよい

1度決めた方向は、十年同じとは限りません。客層が変わり、地域が変わり、経営者が替わります。

変わったときに、言葉も変えることが必要です。変えないと、求人票に古い方向が残り、新しい実態とずれます。ずれた求人票は、合わない人を集めます。

見直す時期は、採用した人が続かなかったときです。続かなかった理由が方向と合っているかを見る。合っていないなら、方向の言葉を直します。

最初の1歩としての小さな実践

「うちの宿は、こういう宿でありたい」という1行を、紙に書いてみてください。 書き終えたら、それをスタッフの1人に見せて、「この1行、わかる?」と聞いてみてください。

「わかる」と言われたら、その1行は使えます。求人票に載せられます。

「わかりにくい」と言われたら、その1行はまだ経営者の中の言葉です。言い換えてもらうと、現場の言葉になります。現場の言葉になった1行は、採用で効きます。

1行が書けなかったなら、上の3つの問いから始めてください。3つのうち1つだけでも答えが出れば、1行は作れます。



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