採用の話を現場が知らない職場
新しい人が来る。現場は、前日にそれを知る。誰が教えるかは決まっていない。ロッカーは空いていない。制服のサイズは聞いていない。それでも当日、その人は来ます。
現場が知らないまま起きること
採用が決まってから入社日までのあいだ、現場が知らない状態だと、次のことが起きます。
- 教える人が決まらない(当日、手が空いている人が担当になる)
- 仕事が渡せない(何を任せるか考えていない)
- 道具が用意されていない(制服、靴、ロッカー、名札)
- 既存のスタッフが構える(知らない人が来る、という緊張)
4つとも、採用の失敗には見えません。ただ、入った人の最初の3日間を悪くします。最初の3日間が悪いと、その人は「入りにくい場所に来た」と覚えます。
前日に知らせてもうまく回っている宿もあります。現場が知っていることが悪いのではなく、知らないまま当日を迎えることが問題です。つまり、共有が遅いから人が辞める、とは限りません。ただ、初日のつまずきは、共有の早さで減らせます。
あなたの宿では、新しい人が来ることを、現場はいつ知りますか。前日なら、上の4つのうち3つは起きています。
なぜ、現場に伝わらないのか
悪意ではありません。理由はいくつかあります。
- 採用の担当が、事務側にいる(現場と接点が少ない)
- 決まってから伝える運用になっている(決まる前は言えない)
- 現場が忙しくて、会議に出られない
- 伝えても、現場が準備する時間がない
4つ目が効きます。伝えたところで準備ができないなら、伝える意味が薄くなります。すると伝えない形が定着します。
ただ、伝えない形が続くと、現場は「採用に協力しない部署」になります。協力しないのではなく、協力できる情報が渡されていないだけです。
現場が知っていると、何が変わるか
入社の1週間前に現場が知っている場合、起きることが変わります。
| 準備できること | 効果 |
|---|---|
| 教える人を1人決める | 言うことが揃う |
| ロッカーと制服を用意する | 初日に待たせない |
| 最初の3日間の仕事を切り出す | 手持ち無沙汰にならない |
| 既存のスタッフに名前を伝える | 名前を呼んでもらえる |
| 昼を誰と食べるか決める | 初日の孤立を防げる |
5つとも、お金はかかりません。かかるのは、1週間前に知っているかどうかだけです。
伝える形を、軽くする
「採用の情報を現場に共有しましょう」と言うと、重くなります。共有の会議を足すのは、現場にとって負担です。
軽くするなら、次の3つのどれかです。
1. 1行の連絡
「来週月曜から、客室にAさん(20代、未経験)が入ります。教える人はBさんをお願いします」
メールでも紙でも構いません。3行以内が、読まれる長さです。
2. シフト表に書く
入社日を、シフト表に「Aさん初日」と入れる。これだけで、現場は把握します。シフト表は、現場が毎日見るものです。
3. 朝礼で1度だけ言う
1週間前の朝礼で、名前と部署と初日を伝える。3十秒です。1度言えば、現場が自分で準備を始めます。
3つのうち、あなたの宿で1番やりやすいのはどれでしょうか。1つで構いません。3つ全部をやろうとして、1つもやらないのが、いちばん避けたい形です。
現場に渡す情報の、最小の中身
何を伝えればよいか迷うなら、この5つです。
• いつ来るか(入社日と、初日の出勤時刻)
• どこに入るか(部署と、組む相手)
• 誰が教えるか(1人、名前まで)
• 何ができる人か(経験の有無、できること)
• 最初の3日間に何をしてほしいか
5番目が抜けやすいです。抜けていると、初日に「今日はこれをお願いします」が言えません。言えないと、その人は立っているだけになります。
5番目は、採用の担当が決める必要はありません。現場のリーダーに決めてもらうほうが、実態に合います。
採用の話を現場に入れると、求人票が変わる
もう1つ、効果があります。
現場が採用の話を聞いていると、求人票の条件と実態の差に気づきます。
- 「残業ほとんどなし」で書いてあるが、先月は毎週残っていた
- 「未経験歓迎」だが、教える時間が取れていない
- 「シフト希望考慮」だが、希望が通っていない
この3つは、現場がいちばんよく知っています。知っていれば、求人票を直す材料になります。直すと、入ってくる人と現場の期待が揃います。
揃うと、辞める人が減ります。採用の話を現場に入れることは、採用の精度を上げる行為でもあります。
今日から始められる最初のアクション
次の入社日を、思い出してみてください。 いつか、即答できるでしょうか。
即答できるなら、あなたは情報を持っています。持っていない人に、1行だけ送ってください。「○月○日、客室にAさん。教える人は誰にしますか」の1行で十分です。
即答できないなら、いま情報がどこにあるかを探してください。探した場所が、あなたの宿の採用情報の置き場所です。置き場所が決まると、次回から現場が自分で見られるようになります。
置き場所が決まっていないなら、シフト表の余白がいちばん手軽です。毎日見る場所に書くと、共有の会議は要りません。