Team / Communicationチームビルディング
TEAM対象: 経営者・支配人

誰も喜ばないチームビルディング

繁忙期が終わった。1区切りついたから、懇親会をやろう。

料理長が日程を調整し、フロントが人数を集め、若手が店を予約する。当日は全員参加。2次会まで行く人がいて、翌朝の早番に響く。翌月、もう1度やろうという話になると、空気が少し重くなる。

もし心当たりがあれば、これはあなたの宿を責める記事ではありません。順番を見直してみるための記事です。


あの時間は、何だったのか

チームビルディングが悪いわけではありません。人が集まること自体に意味がないわけでもありません。うまくいっている宿もたくさんあります。

ただ、うまくいかないときに起きているのは、あの時間が何のためだったのかが、あまり言葉にされていないことです。

「コミュニケーションの活性化」。企画書にはそう書かれます。しかし宴会で隣に座った人と話すことが翌日の申し送りを良くするかは、また別の話です。むしろ翌朝の疲れで、申し送りが短くなることもあります。

参加した人が「楽しかった」と言っていたなら、それでいいのではないか。そういう考え方も、もちろんあります。ただ、その「楽しかった」が誰かの負担の上にあった可能性は、1度だけ確認しておきたいところです。

  • 小さい子どもがいて、夜の外食が難しい人
  • 翌日が早番の人
  • 体力的に、座っているだけで精1杯の人
  • そもそも、職場の人と酒を飲みたくない人

こうした人たちは、断らないことが多いものです。断ると角が立つからです。だから参加して、笑って、翌朝普通に出勤します。

誰も文句を言わないことが、うまくいった証拠とは限りません。


チームをつくっているのは、行事ではないのかもしれない

宿のチームをつくっているのは、毎日のかなり小さなやりとりだと考えたくなります。

  • 朝、廊下ですれ違ったときの「おはよう」
  • 清掃が終わった客室を、次の人が確認するときの1言
  • 配膳前に「何番さん、アレルギーどうなってた?」と聞く声

これらが揃っている職場では、行事はそれほど必要なくなることがあります。すでに話せているからです。逆に足りない職場では、行事が浮いて見えることがあります。日常で話していない人と、いきなり宴会で話すのは、かえって負担になることもあるからです。

つまり、チームビルディングは原因ではなく結果なのではないか、ということです。日々のやりとりが積み上がった結果として、集まる時間が意味を持つ。順番が逆になると、かけた分だけ現場に借りが増えることもあります。あなたの宿では、どちらの順番になっているでしょうか。


では、何を試せるか

行事をやめましょう、という話ではありません。順番を入れ替えてみる、という提案です。

1. まず「日常の十秒」から

挨拶が返ってくる。ありがとうが言われる。呼び止められたときに、体ごと向き直る。これらは研修で身につくものではなく、上の立場の人がやっているかどうかで決まることが多いです。

支配人が廊下で先に挨拶する。料理長が「助かった」と口に出す。それだけで、下の人は真似しやすくなります。

2. 集まるなら、目的を1つに絞る

「親睦を深める」は、目的としては広すぎます。絞るなら、たとえばこうです。

  • 繁忙期に起きたことを、責めずに1度だけ振り返る
  • 来期のシフトの組み方で、困っていることを出し合う
  • 新人に、宿の1年の流れを古い人から話してもらう

食べ物があるかどうかは、本質ではありません。 3十分、休憩室でお茶を飲みながらのほうが話が出ることも多いです。

3. 参加を選べるようにする

「自由参加」と書いて、実質強制になっているケースは少なくありません。本当に自由にするなら、不参加の理由を聞かないこと。出欠を回覧しないこと。欠席した人に後日何も言わないこと。参加率が下がっても、それは正直な数字です。

4. 負担が誰に乗っているかを見る

企画した人、店を予約した人、日程を調整した人。行事の裏側は、同じ人に乗りやすいものです。それが若手ばかりなら、その職場では「言いやすい人に仕事が寄る」構造がすでにできています。行事は、その構造を可視化するだけです。


誰も喜ばないものを、やめられるかどうか

1度始めた行事は、やめにくいものです。

「去年までやっていたのに」。そう言われるのが気がかりで、担当が変わっても形式だけが残ります。そして毎年、少しずつ参加者の表情が静かになっていくことがあります。

やめることは後退ではありません。日常のほうにお金と時間を使うという判断です。行事に充てていた分を、休憩室の椅子と、繁忙期の差し入れと、有給を取りやすくするための人員に回す。どちらが効くかは宿によって違います。ただ、考えてみる価値はあります。


今日、できる1つのこと

次の社内行事を決める前に、「これをやめた場合に、具体的に何が困るのか」を1行で書いてみてください。 書けなければ、それはやめても誰も困らない行事です。書けたなら、その1行がそのまま行事の目的になります。



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