オンボーディングは組織の点検である
オンボーディングを「新人のためのプログラム」として見る目は、半分です。もう半分の目は、「組織を測る仕組み」として見る目。体の点検が健康を測るように、受け入れは組織を測ります。この記事は、その「読み方」の話です。
なぜ、受け入れは点検なのか
体の点検の理屈は、こうです。決まった手順に体を通すと、体の状態が数値と所見に出る。
組織にも、同じ理屈が働きます。「人を1人迎える」という決まった手順に組織を通すと、組織の状態がつまずきの位置に出ます。
| 受け入れで起きること | 測っている組織の状態 |
|---|---|
| 仕事を教えられない | 業務の言葉化の度合い |
| 質問に答えられない | 窓口の形の有無 |
| 初日に迎える人が決まっていない | チームの形の有無 |
| 将来の話をできない | キャリアの地図の有無 |
| 教える人の時間が守れない | 人員配置の形の余白 |
5行は、5つの測定項目です。それぞれ別の臓器を測っています。受け入れが回らない宿は、能力が足りないのではありません。どこかの臓器の数値が悪い形です。
所見は「人」でなく「形」で読む
点検の結果を読むとき、間違いやすい方向が1つあります。
新人が躓くと、「この人が合わなかった」と読みたくなります。ただ、点検の読み方は逆です。躓いた位置が、組織の穴の位置です。
- 名前を覚えてもらえない——記憶の問題でなく、接点の形の所見です
- 質問が止まる——やる気でなく、返事の形の所見です
- 仕事が覚えられない——能力でなく、教えの形の所見です
人を所見にすると、人は入れ替わって所見は残ります。形を所見にすると、形は直せて次の人が楽になります。『受け入れ側の準備が足りていないときに起きること』の「サインが出たら本人でなく行を見直す」は、点検の読み方の作法です。あなたの宿の直近の躓きは、人として読まれましたか、形として読まれましたか。
点検には、3つのリズムがある
体の点検に定期性があるように、受け入れの点検にもリズムがあります。
• 新人1人=随時の点検:1人の入社は、ある部署のある時点の抜き取り検査です
• 4半期の振り返り=定期検診:受け入れの形を3ヶ月ごとに並べて見る
• 年の記録=点検の台帳:昨年の受け入れと今年の受け入れを比べる。組織のWell-beingを時系列で見る形と、同じ紙の上に載ります
人の出入りが多い宿ほど、点検は何度もやって来ます。問いは「何回点検したか」でなく、「何回読んだか」です。あなたの会社の点検は、読まれていますか。点検は、した回数と同じだけ意味を持つとは限りません。読まれない点検は、無いのと同じ形です。
点検の結果は、3人が読む
結果を1人だけが読むと、点検は片方の目で終わります。
- 現場が読む:行の形——教え方、窓口、初日の順番
- 人事が読む:制度の形——用紙、記録、面談の設計
- 経営が読む:投資の形——時間、人、紙の置き場所
1枚の所見を、3つの目で読む。受け入れの振り返りに3人が同じ紙を囲む形は、点検の読み合わせです。あなたの会社の受け入れの結果は、いくつの目で読まれていますか。
点検を「点検」で終わらせない
最後に、1つの線を引きます。点検の価値は、直して初めて出ます。
読んだ所見を1行の「直し」に変える——用紙を1枚足す、面談に1行足す、初日の順番を1つ変える。小さな直しで構いません。直しの記録が積もると、それが組織の点検記録になります。記録の積もった宿は、次の受け入れを、前の受け入れより軽くできます。
明日からの実践につなげるワンアクション
直近で辞めた人、または今つまずいている新人を1人、思い出してみてください。
- その人が躓いた位置を、1行で書いてください
- その行を「人の所見」でなく「形の所見」として読み直してください(上段の表が、読み方の手引きです)
- 形の所見に、1つだけ直しの候補を足してください
1行は、あなたの会社の最新の点検結果です。点検は、新人を迎えるたびに無料でやって来ます。あとは、読むかどうか——読んだ宿から、受け入れは軽くなっていきます。