外国人材 / GLOBAL HR育成・キャリア
SEARCH対象: 人事担当者

外国人スタッフの評価や昇給はどう設計するか

評価の面談で静かに頷いていた人が、半年あとに辞める。「評価がわからなかった」と言われて、初めて気づくことがあります。評価は、あって当たり前になったときに効く仕組みです。


出発点は「同じ仕事、同じ基準」

設計の最初の線は、これです。

  • 同じ仕事をしているなら、同じ基準で評価する
  • 同じ評価なら、同じ昇給の形にする

この線は気持ちの問題でなく、制度の線でもあります。特定技能では報酬が日本人と同等以上であることが求められ、評価の基準が別だと、報酬の差の説明がつかなくなります。

「外国人向けの別の評価表」を作りたくなるときは、多くの場合、日本語の不安が理由です。ただ、日本語の不安は「基準を分ける」理由ではなく、「伝え方を分ける」理由です。ここを混ぜると、設計がずれます。

あなたの宿には、いま評価表がありますか。あるなら、それは外国人スタッフにもそのまま読める形でしょうか。

設計で決めることは3つ

評価の設計は、3つの問いに答える形です。

問い1:何を評価するか

宿の仕事の基準を、そのまま使います。例はこうです。

| 項目 | 見るもの |

|---|---|

| 仕事の手順 | 決められた形でできているか |

| 品質 | 客室の仕上がり、接客の丁寧さ |

| 協力 | 忙しい部署の手伝い、申し送り |

| 安全・衛生 | 決めごとの遵守 |

4つの項目に、「日本語」は入りません。日本語は、仕事の場面の中に溶かして見ます。

  • 接客の項目 → お客様とのやりとりができているか
  • 協力の項目 → 申し送りが伝わる形で書けているか

「日本語力」を独立した項目にすると、言葉が得意なだけで評価が上がる形になります。仕事が丁寧なのに言葉がゆっくりな人は、下に見えます。これは、仕事の評価ではありません。あなたの宿の評価表に、言語の項目は入っていないでしょうか。

問い2:どう伝えるか

基準は、読める形で渡します。3つの工夫があります。

  • やさしい日本語で書く
  • 項目ごとに、具体的な行動の例を1つ足す(「丁寧さ=お客様の名前を覚えて呼ぶ」)
  • 面談で、本人の言葉で1度言ってみてもらう

3つ目が効きます。本人が自分の言葉で基準を言えたとき、評価は本人のものになります。 言えない基準は、上の人が持っているだけのものです。

問い3:いつ評価するか

時期は、日本人スタッフと同じ周期にします。あなたの宿の評価は、いま何ヶ月ごとですか。分けない理由は2つです。

  • 時期が違うと、昇給の比較が生まれて、不満の種になる
  • 同じ面談の枠があると、教える形も揃う

入ったばかりの人は、3ヶ月・6ヶ月の短い確認を足します。短い確認は評価ではなく、「ずれていないかの点検」です。

昇給の形を決める

昇給は、3つの部品で決まります。

部品1:表

「この項目がここまでできたら、時給がいくら上がる」を表にします。あなたの宿には、この表がありますか。表がないと、昇給が経営者の印象で決まります。印象で決まると、説明ができません。説明できない昇給は、もらっても嬉しさが半分になります。

部品2:金額の幅

1度の上昇額は、大きくなくてよいです。小さな幅で回数がある形のほうが、働く人には見えやすいことがあります。

部品3:伝える場面

昇給は面談で伝えます。給与明細だけでは、何が上がったのかが伝わりません。「この項目ができたので、来月から◯円上がります」の1言が、次の半年の動きを決めます。

特定技能の「5年」を設計に入れる

特定技能1号の人は、通算5年の区切りがあります。評価の設計にこの区切りを入れておくと、あとから慌てません。

区切りの前にある道は3つです。

  • 特定技能2号の試験を受ける(実施状況は分野で違います)
  • 他の在留資格へ変わる
  • 帰国する(そして、再来日の道もある)

3つのどれに進むにしても、評価の記録が残っている人は強いです。記録は、次の職場でも、資格の申請でも、本人の材料になります。評価表を「宿の中だけの書類」にしないことが本人のためです。『外国人スタッフのキャリアパスはどう描くか』でこの先を詳しく見ます。

よくある3つの落とし穴

穴1:人数が少ないから、評価が曖昧になる

外国人スタッフが1人だと、「比べる相手がいない」で評価が止まることがあります。比べる相手は他の人ではなく、表(基準)です。

穴2:コミュニケーションの量で評価が振れる

よく話しかけてくる人は高く見え、静かな人は低く見えることがあります。評価の場面(面談と記録)を分けると、振れが減ります。

穴3:本人が評価を待たなくなる

評価が曖昧な状態が続くと、本人は昇給を期待しなくなります。期待しないと、辞める準備が静かに進みます。

日常の業務の中で意識したいこと

いまの評価表(なければ昇給の決め方)を紙に出して、「日本語が母語でない人が読んでわかるか」を1度見てください。

わかるかどうかは、外国人スタッフに実際に読んでもらうのが確実です。読んでもらって、「この項目の意味がわからない」が出たら、その項目に行動の例を1行足します。

評価表がない宿は、上の4項目(手順・品質・協力・安全)から始めてください。4項目に行動の例を1つずつ足せば、1枚の表になります。表が1枚あるだけで、昇給の説明ができるようになります。



NEXT READ

CR001宿泊業の評価制度はどう設計するか→ GH015外国人スタッフの定着率を上げるためにできること→ CR008正社員とアルバイトの評価をどう分けるか→