地方の旅館が人を集めるための現実的な選択肢
地方の旅館の採用は、都市部と同じ手を打っても結果が出ません。母集団が小さく、通勤圏が狭く、住む場所が前提になるからです。この記事では、実際に使える選択肢を6つ並べて、それぞれの宿に合うかを確かめる順番を書きます。
6つ全部が、どの宿にも当てはまるわけではありません。あなたの宿の立地と、空き部屋と、待てる時間で、動く選択肢は決まります。
前提:地方の採用は「住む」が先に来る
都市部では、通勤できる人の中から選びます。地方では、住める人の中から選ぶことになります。この違いを飛ばすと、どの手も空振りします。
だから地方の採用では、次の3つが条件として先に立ちます。
- 住む場所があるか(寮・アパート・実家)
- 移動手段があるか(車・送迎・公共交通)
- 生活の用事が済ませられるか(スーパー・病院・学校)
この3つが埋まらない限り、時給を上げても人は来ません。あなたの宿では、この3つのうちどれが埋まっていないでしょうか。
3つとも埋まっているのに人が来ないなら、原因は別の場所にあります。その場合は、求人票の中身と宿の名前で検索したときに出るものを先に見てください。
選択肢 1:通勤圏を広げる(送迎・寮)
いまの通勤圏で人がいないなら、圏を広げるしかありません。広げる方法は2つです。
- 送迎を出す(最寄駅・道の駅・集合場所まで)
- 寮を用意する(空き部屋を直す、借り上げアパート)
送迎は初期費用が小さく、寮は効果が大きいです。空き室がある宿なら、1部屋を社員寮にするだけで応募の母集団が変わります。
選択肢 2:時間帯を分けて募集する
「フルタイムで働ける人」を募集すると、地方では母集団が1気に狭くなります。
- 朝6時〜10時の清掃だけ
- 夕方17時〜21時の配膳だけ
- 土日の洗い場だけ
時間を切り出すと、子育て中の人、農家の閑散期の人、定年後の人が候補に入ります。1人が短くても、3人で1つのシフトが埋まります。
短時間の人が多いと、引き継ぎが増えるという難点もあります。それでも、1人もいない状態よりは回るというのが、地方の宿の実情です。
あなたの宿の「足りない時間」は、1日のうち何時間でしょうか。そこだけを募集する形にしていないなら、余地があります。
選択肢 3:Uターン・Iターンを狙う
地方の宿に合うのが、この層です。実家が近い、移住したい、都市部の仕事に区切りをつけたい。理由はさまざまですが、住む前提がすでに固まっているので、定着しやすい傾向があります。
狙うなら、求人票に次を書きます。
- 移住の相談に乗れるか(物件・車・生活)
- 寮や紹介できる物件があるか
- 試用期間の長さ(移住は本人も不安です)
「移住者の受け入れ実績あり」の1行は、それだけで応募の理由になります。実績がなくても、相談に乗る意思があると書けます。
移住希望者は、仕事より先に住む場所と車を心配しています。この2つに答えられる宿は、地方では多くありません。答えられるなら、それを求人票の1番上に書いてください。
選択肢 4:季節雇用の人を、通年につなげる
繁忙期だけ来る人に、閑散期の仕事を1つ用意する。これだけで、通年の関係になります。
- 閑散期の修繕・掃除の手伝い
- 予約サイトの写真・文章の更新
- 次の繁忙期の準備(備品の点検、手順書の作り直し)
季節雇用で入った人が、宿のことをよく覚えています。関係を切らないことが、次の採用のコストを下げます。
繁忙期が終わるときに「また来年」と言える関係があるかどうか。それだけで、翌年の採用は変わります。
選択肢 5:外国人材を検討する
地方の旅館では、選択肢として現実的になってきました。ただし技能実習・特定技能・留学など在留資格ごとにできる仕事が違うので、制度の確認が先に要ります。
ここで触れておきたいのは、受け入れの成否は制度よりも宿側の準備で左右されることが多い、ということです。
- 日本語のレベルに合わせた手順書があるか
- 住む場所を確保できるか
- 相談できる窓口が、宿の中に1人いるか
この3つがないまま受け入れると、本人も宿も困ります。詳しい受け入れ方は、別の記事にまとめました。
選択肢 6:地元の学校と、時間をかけてつながる
即効性はありません。ただし地方では、1番長く効く手です。
- 地元の高校・専門学校に、職場見学の受け入れを申し出る
- 実習やインターンを受け入れる
- 卒業生の入社がなくても、関係は残ります
3年かかります。ただ、地元の学校から毎年1人入るようになると、採用の形が変わります。
即効性が要るなら、この手は向きません。来年の繁忙期を越えるための手ではないので、別の選択肢と組み合わせてください。
あなたの宿に合う順番のつけ方
6つを全部やる必要はありません。合う順を決めるための問いは、3つです。
• 住む場所は用意できるか(できるなら選択肢1・3・5が動く)
• 時間を切り出せるか(できるなら選択肢2が最速)
• 3年待てるか(待てるなら選択肢6を並行して始める)
1番速く効くのは、多くの場合選択肢2(時間の切り出し)です。費用がかからず、今週から求人票を書き換えられます。
リーダーが今日からできる小さな工夫
自分の宿の周辺地図を出して、通勤30分の円を描いてみてください。 その円の中に、いま働いている人が何人住んでいるかを書き込みます。
円の中に誰もいないなら、あなたの宿はすでに広い圏から人を集めているということです。その事実があるなら、送迎か寮で圏を広げる手は、そのまま次の1手になります。