採用にお金をかけるほど人が辞める職場
求人媒体のランクを上げました。採用サイトを作り直しました。時給も上げました。応募は増えました。入社も増えました。そして、辞める人も増えました。こういう宿は、珍しくありません。
お金をかけると、応募は増える
これは事実です。媒体の露出が増えれば、見る人は増えます。条件がよくなれば、応募のハードルは下がります。
採用にお金をかけることは、間違っていません。 かけないと、そもそも人が来ない宿もあります。
問題は、かけたあとです。かけた分が、残る人に変わっているかを確かめない宿が多いようです。
入った人が見ているもの
お金をかけて集めた人は、入社してから何を見るでしょうか。
- 求人票に書いてあった条件が、守られているか
- 教える人が決まっているか
- 休憩が取れているか
- 自分が何を期待されているか、わかっているか
- 忙しくなったときに、周囲がどう振る舞うか
この5つは、求人媒体のランクとは関係がありません。5つが揃っていない宿では、応募が増えても人が残りません。
応募は、宿の外側の魅力で増えます。定着は、宿の内側の状態で決まります。外側にだけお金をかけると、この2つがずれます。
あなたの宿では、直近1年で採用にかけたお金と、受け入れにかけた時間、どちらが多いでしょうか。思い出せないなら、採用にかけたお金のほうが多いはずです。請求書として残っているからです。
ずれたときに起きること
お金をかけて人を集めて、受け入れが追いつかないと、次の流れになります。
• 多く入る
• 教える人が足りなくなる
• 教えないまま現場に出す
• 新人が困る。既存の人も困る
• 新人が辞める
• 既存の人が、辞めた分の仕事を引き受ける
• 既存の人が疲れる
• また求人を出す
8番目に戻ると、かけたお金が増えて、残る人が減ります。
この循環に入っている宿は、外から見ると「採用に力を入れている宿」に見えます。実際、力を入れています。ただ、入れる場所が片側だけです。
あなたの宿で、この8つのうち、いま起きている段階はどれでしょうか。4番目あたりなら、まだ戻れます。7番目まで来ているなら、採用を1度止めて、受け入れを直すほうが速いこともあります。
受け入れにかけるお金は、目立たない
採用にかけるお金は、請求書として来ます。媒体費、紹介手数料、制作費。数字が残ります。
受け入れにかけるお金は、残りにくいです。
- 教える人が使った時間
- 初日に誰も現場に入れなかった半日
- 手順書をつくった3時間
- 入社1ヶ月の面談の十5分
これらは人件費の中に溶けていて、「投資した」形で見えません。見えないので、削られやすいです。
削ると、採用にかけたお金の回収率が下がります。1人採用するのにかかった金額は、その人が働いて戻ってきます。3ヶ月で辞めると、ほとんど戻りません。
採用単価を出している宿なら、「1人を採用して、半年残ってもらうのにいくらかかったか」も出せます。2つの数字を比べると、受け入れに使うお金の根拠になります。
どこに置くと効くか
採用の予算を、少しだけ受け入れ側に移すと、効きやすい場所が3つあります。
1. 教える人の時間を、業務として書く
「空き時間で教えて」ではなく、シフトに教育の枠を入れます。枠が入ると、教える人は自分の仕事を後ろにずらさなくて済みます。
枠を入れると、その時間は売上には直結しません。ただ、入れないと、教える人の残業として吸収されます。吸収された分は、どこにも記録されません。
2. 初日と、入社30日と、入社90日に時間を取る
1回十5分で構いません。3回で4十5分。この4十5分が、半年の在籍を左右することがあります。
3. 求人票に書いた条件を、現場で守れているか確認する
月に1度、求人票を開いて、現場の実際の状態と並べる。ずれている行があれば、求人票を直すか、現場を直すか、どちらかを選びます。
3つとも、大きな費用はかかりません。かかるのは時間を確保する決断だけです。
この3つのうち、あなたの宿で1つだけ始めるとしたら、どれでしょうか。1つで構いません。3つ全部をやろうとして、1つもやらないのが、いちばんもったいない形です。
お金をかける順番
採用にお金をかけること自体は、必要なことです。ただ、順番があります。
• 受け入れの形を決める(教える人、初日の流れ、面談の日)
• 求人票を実態に合わせる(書けない行は、実態を直す)
• そのあとで媒体と条件に投資する
この順番でかけると、集めた人が残ります。逆の順番だと、集めた分だけ入れ替わります。
あなたの宿が、いま3番にいるなら、1番に戻るのに時間はかかりません。次の入社日までに、教える人を1人決めるだけで始められます。
入社日が決まっていないなら、「次に人が入ったら誰が教えるか」を、今日のうちに1人決めておいてください。 決まっているだけで、来たときの初日が変わります。
自館の改善に向けて今日できること
直近1年で採用した人の数と、いま残っている人の数を、2つだけ書いてみてください。
残っている数が半分以下なら、受け入れ側に手を入れる番です。採用を増やしても、同じ結果になります。
残っている数が半分以上なら、あなたの宿の受け入れは機能しています。その場合は、採用にもっとかけてよい状態です。かけた分が、残る人に変わります。
どちらの数字でも、次にやることが1つ決まります。
もう1つ、見ておきたいことがあります。残っている人が、どの職種に偏っているかです。フロントは残って清掃は残らない、という形なら、問題は宿全体ではなくその部署にあります。お金をかける場所も、部署ごとに変わります。