外国人材 / GLOBAL HR多文化チーム
INSIGHT対象: 経営者・支配人

国籍ではなく個人として見るということ

「国籍ではなく、個人として見る」。多くの経営者がこの言葉に賛成します。ただ、賛成した翌日から、現場の言葉は変わりません。この言葉は、スローガンでなく、動作に分解したときに効きます。


グループで見ると、3つのコストがかかる

人は、目の前の人を「何の人」として見るかで、取る行動が変わります。「外国人スタッフ」というグループで見ると、3つのコストがかかります。

コスト1:推測が質問の代わりに立つ

「あの国の人は日本語が弱い」「あの国の人は接客に向いている」——どちらも推測です。推測は便利な形ですが、目の前の1人の中身を見ていません。向いているかどうかは、その人の経験と希望の中にあるものです。

あなたの宿では、新しく入る人の力を見るとき、何を最初に見ていますか。国籍が先なら、推測が先に立っています。

コスト2:個人のサインが埋もれる

1人が元気をなくしたとき、「外国人スタッフの定着が悪い」と処理されると、その人の理由が消えます。理由は、言葉、住居、シフト、家族、将来への不安——1人ずつ違う形です。グループの名前で処理されたサインは、2度と個人に戻ってきません。

コスト3:公平が静かに崩れる

評価、配置、声のかけ方がグループ単位になると、個人の成果が見えにくくなります。「あの国の子たちはまあまあ」という言葉は、頑張った1人の顔を消します。公平の形は、『多様な背景を持つ人が働く職場づくりの進め方』の記事(多様な背景を持つ人が働く職場づくり)に整理しました。崩れは静かなので、気づいたときには人が辞めたあとです。

「個人として見る」は、3つの質問の意味

「個人として見る」を動作にすると、3つの質問になります。

質問1:これまで何をしてきたか

職歴、経験した仕事、学んだこと。同じ国から来た2人でも、答えはまるで違います。

質問2:どこへ向かいたいか

なぜ日本の宿を選んだのか。3年後、5年後、何をしていたいか。目標を持つ人は、その目標に繋がるときに力を出します。

質問3:いま何が重いか

言葉、生活、仕事の量、人間関係。重さは1人ずつ違う場所にあり、国籍では答えられません。

3つの質問の答えを持っている経営者は、その人を個人として見ています。答えを持っていないなら、見る形はこれから作れます。次の1on1で、1つだけ聞いてみてください。

「国籍を見ない」は「違いを消す」ではない

ここで1つ、線を引き直します。個人として見るとは、国籍を消すことではありません。

国籍は、事実を運びます。在留資格の形、手続きの期限、言葉の重さ、生活の前提。この事実は、見ないふりをすると事故になります。

線はこうです。違いは事実として見る。人は個人として見る。

  • 事実(手続き、言葉、制度)→ 宿が整える
  • 個人(経験、目標、重さ)→ 質問して知る

2つを混ぜると、「外国人だから手続きは大変だろう」と推測で済ませる形になります。大変かどうかは、本人に聞くものです。

上の見方が、現場の見方になる

組織文化は、経営者と支配人の毎日の言葉で作られます。

  • 呼び方:名前で呼ぶか、「外国人の子」と呼ぶか
  • 会議の席:その人の意見を聞くか、代表として扱うか
  • 評価:成果を見るか、グループの印象で見るか

上がグループで見る職場では、現場もグループで見ます。上は、チーム力の測定にも影響します。個人として見られているチームは、意見が出ます。意見が出るチームは、事故と離職を早く捕まえます。

逆に、上が1人ずつ名前と目標を知っている職場では、現場の言葉も変わります。「Aさんは来年、接客のリーダーをやりたいと言っている」——この1文がある職場とない職場では、教え方の丁寧さが変わります。

文化は、辞める理由に現れる

組織文化は見えませんが、辞めるときの言葉に現れます。

「自分を1人として見てくれていない」——この言葉は、国籍の文脈で出ることがある1方、日本人スタッフからも出ます。文化の穴は、外国人スタッフにだけ現れるとは限りません。誰にでも効きます。

個人として見る形は、外国人スタッフのためだけに作るものではありません。宿で働く全員のための形です。全員の形として作ったものが、結果として、国籍の壁を越えます。

今日から始められる最初のアクション

あなたの宿の外国人スタッフを1人思い浮かべて、個人として知っていることを3つ書き出してみてください。

  • 国籍、年齢、勤続年数「以外」で、3つ
  • 例:前職、得意な仕事、いま頑張っていること、5年後の希望、休日の過ごし方

3つ書けたら、あなたはその人を個人として見ています。2つ以下なら、グループで見ているサインです。責める場面ではありません。見方は、質問の回数で変わります。

次の1on1で、3つの質問のうち1つを聞いてみてください。「いま何が重いか」は、多くの場合、最初の対話になります。答えを聞いたら、宿として整えられるものが1つあるはずです。



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