人が足りない理由を経営の言葉で説明できるか
「人が足りません」。この1言で、会議が止まることがあります。足りないのは事実なのに、事実だけでは判断ができないからです。経営の言葉に翻訳できると、会議は次の1手を決められます。
「人が足りない」は、感覚の言葉
現場から出てくる「人が足りない」は、多くの場合、正確です。実際に足りていません。
ただ、この言葉には3つの情報がありません。
- どれだけ足りないのか
- いつから足りないのか
- 何ができないでいるのか
3つがないと、会議では判断できません。判断できないと、会議は次のどれかに着地します。
- 「もう少し様子を見ましょう」
- 「頑張ってもらいましょう」
- 「求人を出しましょう」
3つ目は採用で、残りの2つは先送りです。先送りが続く宿では、毎年同じ会議をしています。
あなたの宿では、「人が足りない」のあとに、どんな決定が続いているでしょうか。
翻訳すると、4つの形になる
「人が足りない」は、次の4つのどれかに翻訳できます。
形1:時間が足りない
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必要な労働時間 − 確保できている労働時間 = 不足時間
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清掃に必要な時間、配膳に必要な時間、フロントに必要な時間。これを出して、いま確保できている時間を引きます。差が不足です。
不足時間が週に2十時間なら、パート1人分です。この形が見えると、「1人採る」の根拠になります。
形2:売上が取りこぼされている
人が足りないために、売れなかったものがあります。
- 清掃が間に合わず、販売を止めた客室
- 提供数を絞った食事
- 断った宴会の予約
- 電話に出られず取り逃した予約
これを金額にすると、採用しないことの費用が出ます。費用が出ると、「採用費が高いから控える」の判断が変わります。
金額が正確に出せなくても構いません。「月に何室止めましたか」が答えられれば、それで足ります。
形3:特定の1人に集まっている
人数は足りているのに、1人だけが長い。これは形1とは別の問題です。
- 支配人が、予約管理とシフト作成とクレーム対応と新人教育を持っている
- 料理長が、仕入れと原価と衛生とアルバイト指導を持っている
この形では、人を増やしても解決しません。増えた人に、その偏りはそのままでは渡せないからです。
「誰が1番長くいますか」に1人の名前が即答で出るなら、あなたの宿は形3です。
形4:仕事が、そもそも多い
やっている仕事の中に、やめても困らないものがある形です。
- 2度入力している情報
- 誰も開かない資料
- 形式だけの申し送り
この形では、採用も配置変更も効きません。仕事を減らすのが先です。
4つの形で、打ち手が変わる
| 形 | 打ち手 | 会議での言い方 |
|---|---|---|
| 時間が足りない | 採用 | 「週に◯時間足りないので、パート1名を募集します」 |
| 売上が取りこぼされている | 採用(投資として) | 「月に◯室止めています。1名採ると回収できます」 |
| 1人に集まっている | 業務の分担 | 「この3つの業務を、別の人に渡します」 |
| 仕事が多い | 業務の見直し | 「この作業をやめて、様子を見ます」 |
4つの言い方のうち、あなたの宿で使えるのはどれでしょうか。1つしか使えないなら、翻訳が1つしかできていないということです。
翻訳できないとき、何が足りないか
数字が出てこないなら、記録がないということです。
記録がない宿で、まず取れるのは3つです。
- 誰が、何時から何時までいたか(シフト表で足りる)
- 販売を止めた客室数(日計表で足りる)
- 残業の時間(タイムカードで足りる)
3つは、どれも新しく仕組みを作らなくても取れます。取った数字を、月に1度、1枚に並べるだけで、翻訳の材料になります。
並べると、「足りない」が4つの形のどれかが見えます。形が見えると、会議は3十分で終わります。
経営の言葉にすると、何が変わるか
3つ変わります。
1. 採用が「お願い」でなくなる
「人が足りないから採らせてください」はお願いです。「週に2十時間足りないので、1名募集します」は提案です。提案は、会議で決まります。
2. 採用しない選択も、数字でできる
形3や形4なら、採用しないほうが正しいこともあります。採用しない理由が数字で言えると、現場も納得します。
3. 現場の不満が、議題になる
「足りない」は不満として扱われがちです。翻訳されると、経営の課題として扱われます。扱われ方が変わると、現場の人も話せるようになります。
翻訳は、現場を責めるために使わない
ここは、はっきりさせておきたいところです。
数字を出すことは、誰かが足りないことを証明するためではありません。4つの形のうち、3つは宿の仕組みの話です。個人の頑張りの話ではありません。
数字を使って個人を指摘すると、次回から数字が上がってこなくなります。数字が出なくなるほうが、よほど困ります。
あなたの宿で数字を出すなら、「仕組みのどこが空いているかを見るため」と前置きしてから始めてください。前置きがあると、現場は正直な数字を出します。
現場でまず着手できること
「人が足りない」と最近言った場面を1つ思い出して、4つの形のどれだったか当てはめてみてください。
当てはまらないなら、足りなかったのは何時間かを1度だけ計算してみてください。清掃でも配膳でも、1つの部署だけで構いません。
時間が出たら、それは形1です。出せなかったら、記録がないということです。記録がないことがわかっただけで、今日の1歩は成功です。