育成は誰の仕事なのか
「育成は誰の仕事ですか」——この問いは、場所によって答えが変わります。人事と答える人も、現場と答える人も、本人と答える人もいます。この記事は、その3つの答えの意味を整理します。
3つの答え、3つの穴
「人事の仕事」
人事が置けるのは、形と道具です——マニュアルの型、計画の枠、評価の行。ただ、教える中身そのものは置けません。現場を知らない人事が教える中身を決めると、教材は現場から離れます。
「現場リーダーの仕事」
教える行為は、確かに現場にあります。ただ、余裕のないリーダーに全部を載せると、役は好意の上で回り、先に人が疲れることがあります。時間を置かないままの「リーダーの仕事」は、頼みごとです。
「本人の仕事(自己啓発)」
自分で学ぶ形は、大事です。ただ、職場の知識——この宿のやり方、このチームの目——は、1人では学べません。「本人次第」の育成は、運次第の育成でもあります。
3つの答えは、どれも半分です。あなたの会社では、どの答えが使われていますか。穴は、1人で持つ前提にあります。
分け方の形——3人で1角ずつ
育成は、3人に分けて持つ仕事です。
• 経営が、形を持つ——時間を置く(シフトの十5分)、役を置く(教える人の名前)、評価の行を置く。置けるのは経営だけです
• 現場が、教えを持つ——中身と手本は現場にしかありません
• 人事が、線を持つ——道具と記録と制度をつなぎます。経営と現場の間の線です
リレーの形です。1人の走者ではありません。あなたの会社では、3つの角はそれぞれ誰が持っていますか。
公平の角度
育成の持ち方が偏ると、2つの不公平が出ます。
- 教わる側の不公平——「誰に当たるか」で成長が変わる形です。公平は、誰が来ても同じ形が届くことです
- 教える側の不公平——気が利く1人に役と負担が集まる形です。教えた行が評価に載らない宿では、親切な人ほど損をします
2つの公平は、どちらも形を置くことで直ります。あなたの会社では、2つの不公平のどちらが見えますか。形のない育成は、親切の税で回ります。
組織の状態としての育成
育成は、組織の健康を見るゲージでもあります。3つの行で見えます。
- 教える時間があるか——余裕の行
- 教えられる人が何人いるか——段の行
- 学びたい声が上がるか——意味の行
3つの行が読める宿では、育成は「誰かの頑張り」でなく「組織の状態」として置かれます。あなたの会社の3つの行は、いまどうですか。
誰も持たないと、何が起きるか
「誰の仕事か」が決まらない宿では、育成は3人の暗黙の担当に渡されます。
- 親切な人がやる——その人が疲れるまで
- 運がやる——誰に当たるかで決まる
- 時間がやる——「そのうち慣れる」の形
3人の担当は、どれも信頼できません。問いの答えは、「持つと決めた人の仕事」です。そして、その「決め」を置ける場所は、経営の机の上です。
今週から現場で試せるアプローチ
次の会議で、1度だけこの問いを置いてください——「うちの会社で、教える役は誰が持っていますか」。
- 名前が出たら——3つの角(形・教え・線)に分けて、持ち主を書いてください
- 名前が出なかったら——それが今の答えです。最初の角(時間の十5分)から、経営が置いてください
- 出た名前には、評価の行を添えます
育成は、才能のある人がいる宿で進むのではありません。持つ人が決まっている宿で進みます。あなたの会社の3つの角は、今日の問いから決まり始めます。