入社前の期待と入社後の現実のあいだ
「思っていたのと、違いました」。3ヶ月以内に辞める新人の言葉で、この形は多いです。ただ、違いそのものが問題なのではありません。違いが、話されないまま残ることが問題です。
期待は、どこから来るのか
新人が胸に抱いて入ってくる「期待」は、3つの情報源から作られます。
- 求人票の言葉:「アットホーム」「未経験でも安心」「自分のペースで」
- 面接の言葉:「少しずつ慣れていけば大丈夫ですよ」
- 本人の想像:お客様の立場で見た宿の姿、ドラマの職場の姿
3つは、どれも「良い面」を強く運ぶ形です。重い面は、求人票に書かれにくく、面接で言われにくく、想像には入りません。だから、期待は現実より軽く作られます——これは、あなたの会社が誠実でないという意味でなく、採用という形の性質です。
よくある3つの違い
違い1:人間関係
「アットホーム」と聞いて入った職場が、繁忙期に無言だった。——冷たいのでなく、余裕がないのですが、新人には「話が違う」に見えます。
違い2:仕事の中身
「簡単なお仕事」と聞いて入った仕事が、立ち仕事で、覚えることが多くて、体が重かった。採用側の「覚えれば簡単」と、新人の「初日から重い」は、同じ仕事を別の言葉で呼んでいます。
違い3:ペース
「すぐ任される」と思った人が、3ヶ月の見習い期間に入ったり、逆に「丁寧に教わる」と思った人が、初日から現場に立たされたり。ペースの違いは、期待の形が人それぞれなので、1律の案内では埋まりにくい形です。
3つの違いは、どの職場にもあるものです。違いがない職場はありません。あなたの会社の違いは、どの形に近いですか。
違いは「嘘」でなく「未処理の差」
ここで線を引きます。期待と現実の差は、採用の嘘の問題でなく、処理の問題です。
- 差があること自体:どの職場でもある形
- 差が話されないこと:新人が1人で抱える形
- 差が話されたこと:1緒に扱う形になった差
話された差は、「聞いていたより重いけど、大丈夫そうです」に変わることがあります。話されない差は、「騙された」に変わることがあります。同じ差が、言葉1つで別の名前になります。
差を処理する3つのタイミング
タイミング1:入社前——求人票に重い面を1行
求人票に、重い面を1行だけ足します。
- 「繁忙期は休憩が短くなります」
- 「立ち仕事が中心です」
- 「最初の3ヶ月は補助から始めます」
重い面を書く求人票は、応募が減る形に思えます。ただ、準備した人が来る形でもあります。軽い言葉だけで来た人は、軽い言葉の差で辞めます。
タイミング2:初週——違いを認める1言
初週に、職場の側から1度、認める言葉を入れます。
- 「聞いていたのと違うところ、あったかもしれません。最初の3ヶ月は、こういう形です」
認める1言は、差を話せるものに変えます。話せる差は、新人の中で「想定内」に移動します。あなたの会社の初週に、この1言はありますか。
タイミング3:1ヶ月目の面談——直接聞く
1ヶ月目の面談で、直接聞きます。
- 「入る前に想像していたのと、違うところはありましたか」
- 「違うところを、誰かに話せましたか」
2つ目の質問が効きます。違いを抱えたまま話せない新人は、3ヶ月目に「辞める」で話す形になります。あなたの会社の面談に、この2問は入っていますか。
「来てよかったか」の再回答
新人は、3ヶ月の間で、「ここに来てよかったか」を何度も再回答しています(Well-being の「意味」の問い)。再回答の材料は、3つです。
- 違いを認める言葉(「話せる職場だ」)
- 小さな「できた」(「自分は役に立っている」・『現場での同行指導はどう進めるか』)
- 先の見通し(「3ヶ月後、何ができるか」・『外国人スタッフのキャリアパスはどう描くか』)
3つの材料が揃う職場では、差があっても再回答は「よかった」に寄りやすい形です。材料がない職場では、差だけが答えになります。
処理しない差のコスト
差を放置した職場には、2つのコストが回ってきます。
- 早期離職:3ヶ月目の辞退は、採用費と教育時間の両方が消える形です
- 広がる言葉:「あの宿は話と違った」——辞めた人の言葉は、次の採用を重くします。求人票の言葉が、信じられない形になります
2つのコストは、求人票の1行と、初週の1言と、面談の2問で軽くできます。処理の費用は、離職の費用より軽い形です。
現場スタッフと交わしたい小さな対話
あなたの職場の「重い面」を1つ、紙に書いてみてください。
- 繁忙期の形、立ち仕事の重さ、人間関係の癖——新人が驚きそうなものを1つ
- 次に、いまの求人票を開いて、その重い面が書かれているか確認してください
書かれていなければ、次の更新で1行足してください。1行は応募を減らす形でなく、続く人を集める形です。差を先に渡す採用は、入社後の3ヶ月を軽くします。