OnboardingOJT・同行
KNOWLEDGE対象: 現場リーダー

教える人が毎回違うと新人はどうなるか

月曜はAさん、火曜はBさん、水曜はCさん——新人の教える担当が、日替わりで回る職場があります。この形には得と損の両方があります。この記事は、両方を並べて比べます。


新人の中で起きること:損の側

教える人が毎回替わると、新人の中には5つのことが起きます。

1. 毎日の合わせ直し

教え方、呼び方、順番——人が替わるたびに、新人は「今日の形」を学び直します。合わせ直しのコストは、仕事の内容でなく人の形に払われます。

2. 同じ質問を2度聞けない

「それはAさんに聞いた」——新人は仕事の内容でなく、「誰に何を聞いたか」を覚え始めます。覚える先が増えるほど、質問の形は重くなります。

3. 窓口が定まらない

困ったときの顔が毎日替わると、「困った」の行き先が決まりません。行き先のない困りごとは、抱えられる形になります。

4. 基準のズレが、新人の「間違い」になる

Aさんが教えた形を、Bさんが直す——新人は「自分が間違えた」と感じますが、実際は教える側の基準が合っていない形です。直される回数が重なると、「自分は向いていない」の感覚に変わることがあります。

5. 名前と顔を覚える負荷

人の形を覚えるのも、新人の仕事になります。日本語が母語でない新人には、この負荷はもう1段重い形です。

あなたの職場の新人は、仕事の形と人の形、どちらを多く覚えていますか。

得の側:3つの利点

日替わりの形には、利点もあります。

  • 関係がチーム全体に広がる:1人の担当に寄りません
  • やり方の幅が見える:「人によって違う形がある」ことを、新人が早めに知ります。慣れたあとの応用の材料です
  • 負担が分散する:1人に集中する形になりにくいです

利点は、新人が慣れてきた頃によく効きます。重さが先に来るのは、最初の3ヶ月です。

2つの形の比較

| | 担当が固定 | 毎回違う |

|---|---|---|

| 基準の1貫 | 揃いやすい形 | ずれやすい形 |

| 質問の窓口 | 定まる形 | 定まりにくい形 |

| 教える負担 | 集中しやすい | 分散する形 |

| 関係の広がり | 1人に寄りやすい | チームに広がる形 |

| 新人の合わせ直し | 軽い形 | 重い形 |

| 効く時期 | 最初の3ヶ月 | 慣れた頃 |

表を見ると、どちらが正解という形でないことが見えます。線は別のところにあります——基準が揃っているかです。担当が替わっても基準が1枚なら、合わせ直しは軽くなります。担当が固定でも基準が口伝なら、その人が休んだ日に形は崩れます。

基準を揃える3つの形

形1:基準の1枚

基本の動作(挨拶の形、清掃の手順、接客の順番)を、紙1枚に決めます。写真と3行でよい形です。1枚があると、教える人が替わっても「宿の形」は同じです。

形2:今日の1行の共有

教える人同士で、その日のゴールを共有します。月曜のAさんが「今日はノックの形」、火曜のBさんが「今日はノックの続き」——1行の引き継ぎで、日替わりはリレーになります。リレーでない日替わりは、振り回しです。

形3:窓口の固定+教える人の交代

質問の窓口(バディ・『新人の受け入れ担当(バディ)をどう決めるか』)は1人に固定し、教える担当だけ回す形です。窓口が1つあると、新人の「困った」の行き先は定まります。

3つの形のうち、あなたの職場に足りていないものはどれですか。1つから入れる形で足ります。

公平の視点:基準は「運」をなくす

教える人が毎回違う職場では、新人の学びは担当の引きに左右されます。「教え上手」に当たった新人は伸び、「忙しい人」に当たった新人は止まる——この差は、本人の力でも、担当の善意でもなく、基準のない形が作っています。

基準の1枚は、公平の道具です。どの新人にも、どの担当の日にも、同じ形が渡る——公平は、この「同じ」から始まります。あなたの会社の新人の学びは、いま「運」の形になっていませんか。

職場の1歩を踏み出すためのヒント

基本の動作を1つ選んで(例:お部屋への案内)、2人の先輩に「どう教えるか」を聞いてみてください。

2人の答えが違ったら、それがあなたの職場の最初の基準の穴です。違いを並べて、1枚にしてください。1枚ができたら、教える人が替わる日はリレーになります。

答えが同じだったなら、あなたの職場には見えない基準があります。それは紙に書く価値のある形です。



NEXT READ

LR001OJTとは何か・旅館でどう回すか→ OB003現場での同行指導はどう進めるか→ LR021ベテランだけが知っている業務があるとき→