Sustainability / SDGsPEOPLE(人・多様性)
TEAM対象: 現場リーダー

スタッフがサステナビリティに参加するには

「経営陣からサステナビリティの推進を指示されたが、現場スタッフに伝えても『また余計な仕事が増えるのか』と冷ややかな反応をされてしまう」「どうすれば清掃や厨房のスタッフが、やらされ感なく前向きに参加してくれるだろうか」。多忙を極める宿泊の現場において、新しい取り組みへの協力を引き出すことに苦心する現場リーダーは少なくありません。上からの命令として「ルールを守れ」と押し付けてしまうと、現場に抵抗感が生まれ、形骸化してしまうことがあります。この記事では、スタッフ1人ひとりの「働きやすさ」と結びつけながら、自発的な参加を引き出す現場チームの巻き込み手法と事例を整理します。


現場で「やらされ感」が生まれる2つの原因

サステナビリティの取り組みが現場で歓迎されない場合、そこには明確な2つの原因があります。

  • 原因1:「余計な負担」と受け取られている——日々のオペレーションで手1杯な現場に対して、「これもチェックしろ」「記録をつけろ」と作業だけを上乗せするパターンです。スタッフは「誰のための取り組みなのか」と不満を募らせます。
  • 原因2:「現場の日常」と結びついていない——「SDGsの17の目標」といった高尚な言葉ばかりが先行し、自分たちの目の前のゴミ拾いやシーツ交換とどう関係しているのかが伝わっていません。

スタッフを巻き込む鍵は、「経営の義務」を現場に押し付けるのではなく、「現場の困りごとを解消し、働きやすくする手段」としてサステナビリティを位置づけることにあります。

現場が主役になる「4つの巻き込みステップ」

スタッフが自発的にアイデアを出し、楽しみながら参加するチームをつくるための具体策を整理します。

  • ステップ1:「現場のイライラ・もったいない」から始める——「洗剤が使いづらい」「伝票の紙が無駄に多い」「連泊シーツの運搬が重くて腰が痛い」など、スタッフが日常的に感じている不満や無駄を座談会で吸い上げます。不満の解消こそが最大の改善テーマになります。
  • ステップ2:小さく試せる「1週間トライアル」——いきなり全館のルールを変えるのではなく、「まず清掃チームの3フロアだけで、1週間だけ新しい手順を試してみよう」と小さく実験します。心理的ハードルを下げ、失敗しても柔軟に見直せる空気をつくります。
  • ステップ3:アイデアを出した人を主役にして讃える——「○○さんの提案で、リネンの仕分け時間が10分短縮できた」「△△さんの工夫でゴミ袋の使用量が減った」と、朝礼やミーティングで個人の名前を挙げて称賛します。
  • ステップ4:成果を「現場のメリット」として還元する——削減できたコストや時間の1部を、スタッフの休憩室の備品充当や、美味しいおやつの差し入れなどに充てます。「自分たちの工夫が自分たちの職場を良くした」という確かな手応えが生まれます。

自分たちの声で職場が変わり、仕事が楽になる体験が、スタッフの自主性に火をつけます。

サステナビリティが育むチームの絆

スタッフが主体となってサステナビリティに取り組む現場では、部署の垣根を越えた温かな対話が生まれます。

「厨房の野菜くずをコンポストに入れよう」「フロントのアメニティ案内をこう変えたらお客様が喜んでくれた」など、日常のささやかな工夫を共有し合うことで、現場の連帯感が深まります。

「自分たちの仕事には社会や地球を良くする意味がある」という実感は、スタッフの心に誇りと安心感をもたらします。

現場が生き生きと知恵を出し合う組織文化こそが、宿の持続可能性を支える最強の原動力となります。

対応の差が生んだ2つの現場

現場の巻き込み方の違いによって、宿の組織はどう分かれたでしょうか(※現場で実際に見られる対照的なケースの比較です)。

  • A館(命令と罰則で縛った宿)——支配人が「今月から全スタッフはゴミの分別を徹底し、違反した者は始末書」と1方的に通達しました。現場スタッフは監視されている息苦しさを感じ、分別を巡って部署同士の責任のなすり合いが発生。職場環境は冷え込み、離職者が相次ぎました。
  • B館(現場の知恵を面白がった宿)——現場リーダーが「どうすれば腰を痛めずにシーツ交換を楽にできるか」というアイデアコンテストを開きました。パートのベテラン清掃員から出た仕分けの工夫を採用したところ、作業効率が大幅に向上しました。スタッフは「自分たちの意見を聞いてもらえる」と活気づき、次々と自発的な省資源の提案が飛び交う明るいチームへと生まれ変わりました。

人は「変えられること」には激しく抵抗しますが、「自ら参加して変えていくこと」には大きな喜びを感じます。

現場の状況を捉え直す4つの問い

  • あなたの宿では、サステナビリティが現場への「1方的な押し付け」になっていませんか。
  • スタッフが日頃感じている「もったいない」「作業がつらい」という声に耳を傾けていますか。
  • 現場の小さなアイデアや改善の工夫を、チーム全体で笑顔で讃え合えていますか。
  • サステナビリティを通じて、スタッフの作業負担が軽くなり、笑顔が増えていますか。

今日、メモに残しておきたいチェック点

現場スタッフに「日頃の仕事の中で、正直もったいないと感じている作業やモノはある?」と優しく尋ねてみてください。

  • 現場のささやかな本音に寄り添う対話が、スタッフ1人ひとりが笑顔で参加する持続可能な職場づくりの第1歩になることもあります。
  • スタッフの知恵と尊厳を信じて共に歩む誠実な姿勢が、あなたの宿をスタッフの定着と宿泊客のリピート率が高まる持続可能な宿へと育てます。

あなたの宿の現場には、仲間と共に安定した運営を支える実践的な知恵が満ち溢れています。



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