外国人スタッフが3年で辞めていく職場
1人目が辞めたのは偶然かもしれません。2人目も3年目。3人目も——。「3年」という数字が並ぶとき、それは人の性格の話でなく、職場の構造の話です。この記事は、この数字を構造として読みます。
「3年」は、なぜ3年なのか
3年は、ランダムな数字ではありません。いくつかの線が重なる時期です。
- 在留資格の区切り:技能実習の終了、特定技能の更新——制度の節目が3年前後に置かれています
- 計算が合う時期:送り出しの費用、家族への仕送り、自分の貯金——3年働くと、1区切りつく形があります
- 日本語が「仕事ができる」段階に届く時期:届いた人は、次の職場が見えるようになります。見えなかった2年目より、選択肢は広がります
- 「次は何をしようか」と自分に聞く時期:来日の時に立てた目標を、1度確かめたくなる時期です
つまり3年は、本人の中に次の1段が見え始める時期です。見えた1段が、あなたの宿の中にあるか、外にあるか。辞める人は、外にしか見えなかった人です。
3年で辞めていく職場に、足りない4つ
あなたの宿を照らしながら、4つを確認してください。
足りない1:3年後の絵がない
「3年後、この宿でどんな仕事をしていますか」——この問いに、絵で答えられる宿は多くありません。キャリアパスが言葉になっていない職場では、本人は自分で絵を描くしかなく、描いた絵に宿が入っていなければ、外へ向かいます。
足りない2:成長が見えない
2年目と3年目で、できることが増えている。でも、それを数えた記録がない職場では、本人にも周りにも成長が見えません。評価の形が日本人スタッフと別立てだと、「自分は見られていない」の感覚が静かに積まれます。
足りない3:言葉と資格の次の段がない
入って1年、日本語のサポートは手厚い。2年目から、サポートの話が消える——この形の職場があります。次の資格(日本語の試験、業務の免許)へ進む橋がないと、成長の線が2年目で止まります。
足りない4:生活の変化を話せない
3年目には、生活が変わります。結婚、家族の呼び寄せ、住居の変更、帰国の相談。変化を話す窓口がない職場では、変化は「辞める」の形でのみ出てきます。
数字の読み方:辞めたあとの帳簿
1人が辞めるときのコストは、採用費だけではありません。教育にかけた時間、チームが形を覚えるまでの期間、残った人の負担。3年ごとに同じ穴が空く職場は、同じコストを繰り返しています。
読む数字は3つです。
- 直近3年で辞めた人の数と、勤続期間
- 辞めた時に本人が言った理由(記録はありますか)
- 辞めたあと、その仕事が誰に渡ったか(渡っていないなら、現場の重さが増えています)
理由の記録がない職場では、次の退職面談から1行残す形にしてください。理由は、本人の言葉で残して初めて、直しどころになります。
続く職場にする4つの手
手1:3年後の絵を、1枚で描いて見せる
役職でなく、仕事の中身で描きます。「3年後:接客の指導係。5年後:フロアの担当」。1枚の紙でよい形です。絵があると、本人は自分の5年を宿の中に置けます。
手2:5年の問いを、3年より前に聞く
退職の相談で初めて将来を聞くのは、遅い形です。2年目の面談で「5年後、何をしていたいですか」を聞くと、答えに合わせて絵を描き直せます。
手3:成長を記録に残す
できるようになったことを、半年に1度、本人と1緒に数えます。数えた記録は、評価にも、次の1段の相談にも使えます。
手4:生活の変化を、話せる形にしておく
「生活で変わったことがあれば、ここに話してください」——窓口を1年目から言い続ける形です。3年目の変化が「辞める」でなく「相談」で出てくる宿は、ここが違います。
「続く」が目的ではない
1つ、線を引きます。続く人ばかりとは限りません。帰国して自分の店を持つ人、別の道へ進む人——来日の目標が「帰って始めること」の人には、3年は満了の形です。
目的は、全員を留めることでなく、ここで過ごした時間が、その人の次の1段になることです。よく辞めていく職場は、次の人に選ばれやすい形です。送り出しの言葉は、辞めた人が作ります。
今日、メモに残しておきたいチェック点
直近3年で辞めた外国人スタッフの名前と、辞めた時に言われた理由を、紙に書き出してみてください。
- 名前が3人以上並んだら、理由の列に同じ言葉がないか見てください
- 同じ言葉が2回出たら、それがあなたの宿の最初の直しどころです
- 理由が思い出せないなら、記録の形が穴です。次の面談から1行残してください
3年の数字は、人の性格でなく、構造の話です。構造は、経営者の手元で直せます。