採用担当と現場のあいだにある溝
採用担当は「現場が求める人を採った」と思っている。現場は「また合わない人が来た」と思っている。どちらも嘘は言っていません。ただ、見ている場所がずれています。
このずれは話せば直るものではなく、仕組みで直します。あなたの宿で「また合わない人が来た」という言葉を聞いたことがあるなら、人の問題ではなく、4つの場所のどれかが空いています。
溝は、4つの場所でできる
場所1:求める人の像が、言葉になっていない
現場が「使いやすい人」と言うとき、指しているのは具体的な行動です。ただ採用担当に渡るとき、「明るい人」「やる気のある人」に翻訳されます。翻訳された言葉では選べないので、採用担当は自分の判断で選びます。選んだ人が現場の言う「使いやすい人」とは限りません。
現場が「使いやすい人」で止めてしまうのも無理はありません。言葉にする時間が、忙しい現場にはないからです。
場所2:情報が、片方向にしか流れない
現場から採用担当へは「人が足りない」が、採用担当から現場へは「1名決まりました」が伝わります。足りないのは理由と条件です。
- なぜ足りないのか(退職補充か、業務増加か)
- いつから、どんな時間帯が足りないのか
- 来てほしくない人はどんな人か
この3つが渡らないと、採用担当は「1名、早めに」で動き、結果が現場の期待とずれます。あなたの宿では、募集の依頼がどんな形で来るか、1度書いてみてください。
場所3:面接に、現場が入っていない
採用担当だけでは、現場で必要な確認ができません(早番が続けられるか、繁忙期の連勤はどこまで可能か、実際の作業を見たことがあるか)。逆に現場だけが入ると、条件の話が曖昧になります。両方が入る形が要ります。入社後にずれるほうが高くつきます。
場所4:結果が、戻ってこない
採用した人が3ヶ月で辞めた。この事実が、採用担当に戻らないことがあります。戻っても「1身上の都合」の1行だけです。
理由が戻らないと、次の採用で同じことを繰り返します。現場も理由を伝えるのが気が重いものです。「自分の部署から辞めた」と伝える形になるからです。責める形ではなく次に活かす形で欄を用意すると、書かれます。
溝を埋める4つの手
手1:求める人像を、行動の言葉で3行書いてもらう
現場のリーダーに、3行だけ書いてもらいます。
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・忙しい時間に、自分から「手伝いましょうか」と言える人
・教わった手順を、まずそのとおりにやってみる人
・迷ったときに、抱え込まず1度聞きに来る人
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書けないときは、「前に辞めた人は、どこが合わなかったか」から逆算します。逆算のほうが書きやすいです。
あなたの宿でこの3行をいま書けるでしょうか。書けないなら、人物像の前に辞めた理由の記録が要ります。
手2:募集の依頼に、4つの欄を足す
「1名、早めに」ではなく、依頼の形を決めます。
| 欄 | 書く内容 |
|---|---|
| 足りない理由 | 退職補充/業務増加/繁忙期対応 |
| いつから・時間帯 | 入社日、足りない曜日と時刻 |
| 避けたい条件 | 現場が困る条件(1つでよい) |
欄があるだけで条件を書けます。欄があると、人は書きます。
4つ全部が埋まらないこともあります。埋まらない欄は、現場でも決まっていない欄です。その場合は採用を急がず、欄を埋めるところから始めます。
手3:面接を、2回に分ける
1回で全部をやろうとすると、長くなります。分けると、それぞれの精度が上がります。
- 1次:採用担当が条件と経歴を確認(30分)
- 2次:現場が仕事の内容を説明し、質問を受ける(30分)
2次では、現場が説明する側になります。説明すると現場は「自分が何を求めているか」に気づきます。この気づきが溝を埋めます。余裕がない宿なら、1次の後半の十5分を現場に渡す形でも構いません。
手4:辞めた理由を、3行で戻す
辞めた人が出たら、現場のリーダーが3行だけ書きます。
- いつ頃の様子が変わったか
- 何を言っていたか(なければ「聞いていない」でよい)
- 仕事のどこでつまずいていたか
十5分で書けます。十5分を戻すと、次の求人票が変わります。あなたの宿では辞めた理由はいまどこに残っているでしょうか。退職届の「1身上の都合」だけなら、記録がないのと同じ状態です。
溝がない宿で、起きていること
うまくいっている宿には、次の3つがあります。
- 採用担当が現場のシフトに入ることがある(年に数回でも)
- 現場のリーダーが面接に同席している
- 辞めた理由が採用の記録に残っている
3つとも大きな仕組みではなく、人の行き来があるだけです。行き来がないと、両方がお互いを「わかっていない」と思い、思っているあいだに溝は広がります。あなたの宿では、この3つのうちいくつあるでしょうか。1つでもあれば、残り2つは足しやすいはずです。
小さな宿では、溝ではなく「時間」が問題になる
十人以下の宿では、採用担当と現場が同じ人です。その場合、溝ではなく時間の不足が問題になります。やることは次の2つです。
- 募集の条件を、紙に3行書く(頭の中だけで決めない)
- 辞めた理由を、1行残す
2つだけで次の採用の精度が上がります。小さい宿では、仕組みより記録が効きます。
明日からの実践につなげるワンアクション
直近で採用した人について、現場のリーダーに3つだけ聞いてみてください。
• 来てから、何を1番手伝ってもらえましたか
• つまずいたのは、どこでしたか
• 次に同じ職種を採るなら、どんな人がよいですか
3つ目は、そのまま次の人物像になります。聞けない関係なら、まず募集の依頼の形を揃えてください。
聞くのが難しいなら、1緒にシフトを1日組んでみるのも手です。並んで作業すると、聞けないことが聞けます。