採用面接の評価シートはどうつくるか
評価シートは、採点するための紙ではありません。面接官のあいだで「何を見たか」を揃えるための紙です。シートがない宿では、合否が面接官の印象で決まり、あとから理由を説明できません。つくる順番は、4段です。
月に数人の応募を、2人以上で見ているなら、シートはあったほうがよいです。逆に月に1人しか応募が来ない宿なら、紙より先に、項目を3つ口頭で言えるようにしておいてください。それだけで面接の質は変わります。
第1段階:評価する項目を5つに絞る
項目を増やすと、全部が薄くなります。5つが実用的な上限です。
宿の採用で使いやすい5つの例を挙げます。
| 項目 | 何を見るか |
|---|---|
| 継続性 | 約束した時間帯・期間を続けられそうか |
| 受け取り方 | 教わったことを、まず受け取れるか |
| 気づき | 相手の様子の変化に気づけるか |
| 報告 | 迷ったときに、自分で抱えず報告できるか |
| 体力と生活 | 繁忙期の動きを、生活として続けられるか |
あなたの宿で置き換えるなら、過去に辞めた人が弱かった項目を入れると精度が上がります。辞めた理由が「休憩が取れない」だったなら、体力と生活の項目を重くします。
項目を選ぶときに迷うなら、「この項目で×だった人を採用しますか」と自分に聞いてください。採用するなら、それは評価項目ではなく好みです。
第2段階:各項目に「行動の目安」を書く
「継続性あり/なし」では、面接官によって基準がずれます。目安を行動の言葉で書きます。
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継続性
○ 過去の勤務で、何年・何の時間帯で働いたかを具体的に話せる
△ 期間は話せるが、時間帯や頻度が曖昧
× 「大丈夫です」だけで、根拠になる経験が出てこない
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この3段階(○△×)が、使いやすく、ずれにくい形です。5点満点の点数制は、宿の面接では細かすぎます。 点数をつけると、面接官は数字を合わせることに意識を使い、相手を見なくなります。
目安を書くときに意識するのは、「上手に話せるか」を評価しないことです。口下手でも具体的な時間帯と年数を言える人は○で、流暢でも中身が曖昧なら△です。話の上手さと仕事の確かさは別物です。
第3段階:聞く質問を決めておく
項目ごとに、最初に投げる質問を1つずつ決めておきます。
- 継続性 →「直近の仕事で、どの時間帯に入っていましたか」
- 受け取り方 →「前の職場で、やり方が違うと言われて戸惑ったことはありますか」
- 気づき → 「お客様が困っていそうな場面で、気づいたことはありますか」
- 報告 →「迷ったときに、誰に聞きましたか」
- 体力と生活 →「1番忙しい時期は、生活がどう変わりましたか」
質問を決めておくと、面接官が替わっても同じことを聞けます。これがシートの価値です。
支配人が見たときと料理長が見たときで、合否が毎回割れる宿があります。割れること自体は悪くありません。割れた理由が言えるなら2つの視点があるということで、言えないなら聞いていることが違うだけです。
第4段階:合否の決め方を、先に書いておく
シートを作るときに、同時に決めておくことがあります。
- ○が3つ以上なら次に進む、のような通過ライン
- ×が1つでもあれば慎重に考える項目(例:継続性)
- 2人で面接したとき、意見が割れたらどうするか
- 採用を見送った人に、どう伝えるか(連絡の期日と方法)
これを先に決めておかないと、シートは「書いたけど使われない紙」になります。
最後の1項は、評価とは関係がないように見えて、実は影響します。見送った人への扱いは、その人が地元で話す内容になります。地方の宿では、この話が次の応募に影響します。
シートを使っていて起きやすい3つの問題
1. 書き込むのに忙しくなる
面接中に全部を書こうとすると、相手の顔を見られません。メモは3語だけにして、シートは面接直後に埋めます。
2. 項目にない良さを見落とす
シートにない魅力を持った人が来ることがあります。その場合は、「特記事項」の欄に1行書く運用にしてください。欄がないと、その良さは記録に残りません。
3. シートが形だけになる
半年たつと、誰も書かなくなります。防ぐには、シートの項目を年に1度見直すのが有効です。辞めた人の理由と、項目がずれていないかを確かめる時間になります。
聞くべきでないこと
評価シートに、次の項目は入れないでください。
- 国籍・出身地・本籍
- 家族の職業や収入
- 婚約の有無、結婚の予定
- 信仰、支持政党、労働組合の活動
これらは採用の判断に使ってよい情報ではありません。シートに欄があるだけで、面接で聞いてしまうことがあります。欄を作らないことが、確実な防止策です。
加えて、「通勤できるか」を知りたいだけなら、聞くべきは「この時間帯に通えますか」です。住んでいる場所や家族構成ではありません。
今日から始められる最初のアクション
A4の紙に、5つの項目名と○△×のマスを書くところから始めてください。 目安の文章は、あとから埋めて構いません。
枠だけあれば、次の面接から使えます。2人で面接して、終わったあとに同じ人のシートを並べてみる。ズレていたら、それが目安の書き方を直す場所です。ズレていなければ、あなたの宿の採用基準は言語化できています。
もう1つの使い道は、採用した人のシートを3ヶ月あとに見返すことです。○だった項目は実際にそうだったか。見返すと、シートの精度が上がります。見返さない宿では、シートは同じ間違いを繰り返します。