外国人材の受け入れは人手不足の解決策なのか
人が足りない。求人を出しても来ない。「じゃあ、外国人を」。この飛躍は、短いように見えて、3つの問いを飛ばしています。飛ばした問いは、受け入れのあとに戻ってきます。
外国人材は「解決策」でなく「選択肢の1つ」
人手不足の手は、4つに分かれます。
- 増やす:採用する
- 減らす:仕事を減らす
- 分ける:配置を変える
- 残す:辞めさせない
外国人材の受け入れは、「増やす」の中の1つの形です。日本人の採用と並ぶ選択肢で、それ以上でも以下でもありません。
「外国人なら来てくれる」は、「増やす」しか見ていない状態です。減らす・分ける・残すが空いたまま増やすと、増えた人が同じ穴に落ちます。穴が国籍を選ばないことは、日本人の離職が証明しています。
あなたの宿の不足は、4つの手のどれが埋めていない穴でしょうか。ここが最初の問いです。
効く形と、効かない形
受け入れが効きやすい宿
- 不足が構造的:地域や業界の人手不足で、日本人の採用を続けても足りない形
- 長く働く前提がある:3年、5年のスパンで教育と定着を見る
- 教える体制が作れる:教育係の時間、マニュアル、相談窓口
- 日本人の新人も続いている:続く職場は、誰にでも続く形です
効きにくい宿
- 即戦力を探している:受け入れには数ヶ月のリードタイムと教育の時間がかかります。「来月からの穴」は埋まりません
- 安い人を探している:報酬は日本人と同等以上が原則です。「安い外国人」の形は、制度の中にありません
- 日本人の新人が定着しない:辞める職場の理由は、国籍を選びません。同じ理由で外国人スタッフも辞めます
- 1度きりの受け入れと思っている:制度(実習の5年、特定技能の区切り)は「続く関係」の前提でできています。1度きりの想定は、途中で形が崩れます
4つずつ挙げましたが、線は1つです。「増やす」以外の3つの手が動いているか。動いている宿では、受け入れは選択肢として効きます。動いていない宿では、受け入れは穴を大きくします。
飛ばされがちな3つの問い
問い1:時間は足りるか
海外から受け入れる場合、募集から入社まで数ヶ月かかります(試験、手続き、住居)。実習生の受け入れも、団体の手続きの時間があります。
「来月から人が要る」の答えには、なりません。答えは「減らす・分ける」の側にあります。
問い2:費用は見えるか
受け入れの費用は、給与だけではありません。
- 監理費・支援機関への委託費
- 住居の用意
- 教育の時間(人件費・『1人採用するコストと1人辞めるコスト』)
- 通訳の道具、多言語の資料
足すと、日本人の採用と大きく変わらないか、最初の年は重くなることがあります。重くなった費用は、定着の年数で薄まります。続く前提でないと、費用は回収できません。
問い3:5年目を見ているか
特定技能1号には通算5年の区切りがあります。区切りの先(2号、資格の変更、帰国)を受け入れの前に考えているかで、4年目の動きが変わります。
考えていない宿では、4年目に慌てます。慌てた宿の動きは、本人に見えます。見えた本人は、先に次の場所を探します。
本質の問い:「うちは、人が続く職場か」
3つの問いの底にあるのは、1つの問いです。
「うちの宿は、入った人が続く形になっているか」
この問いに「なっている」と言える宿は、外国人材の受け入れが選択肢として効きます。「なっていない」宿は、受け入れの前に続く形を作るのが先です。
続く形は、国籍で変わりません。日本人が続く職場は、外国人も続きやすいです。日本人が辞める職場は、外国人も辞めます。職場の形は、国籍より強いのです。
「外国人材で人手不足を解決する」は、順番が逆のことがあります。人手不足の解決が先で、外国人材はそのあとの選択肢です。
判断の順番を1枚に
受け入れを決める前に、4行を紙にします。
• 不足は何時間か
• 減らす・分ける・残すで埋まる分はいくらか
• 残る不足を「増やす」で埋めるなら、日本人の採用で足りるか
• 足りない分が、受け入れの形に合うか(時間・費用・5年目)
4行を書くと、受け入れは「追い込まれた判断」でなく「計算した判断」になります。計算した受け入れは、準備も丁寧になります。丁寧な準備は、定着に返ります。
現場で共有したい1つの視点
「うちの宿の不足は、週に何時間か」を1度計算してみてください。 清掃でも配膳でも、1つの部署で構いません。
GH004外国人スタッフを受け入れる準備チェックリスト→計算ができない場合は、直近で辞めた人の仕事が誰に残っているかを見てください。残っている時間の分が、いまの不足です。不足の正体がわかるだけで、受け入れの判断は1段静かになります。