採用 / RECRUITMENT採用戦略
INSIGHT対象: 経営者・支配人

採用人数を増やせば人手不足は解決するのか

足りない。だから採る。

これは間違ってはいません。人がいなければ宿は回らないし、回らなければサービスは落ちます。求人を出し、面接をし、1人入る。現場は少し楽になる。そして半年後、また足りなくなっている。

もしあなたの宿でも繰り返されているなら、この記事は答えを出すためではなく、問いの形を少し変えてみるために書いています。増員で解決する職場もあります。ここでは、そうならなかった場合の話として読んでください。


増えたのに、楽にならない

1人入ったのに、楽にならないことがあります。理由は、いくつか考えられます。

教える時間が必要になる。 新人が入れば、誰かが隣について教えなければなりません。その「誰か」は、もともと余裕が少ない人であることが多いものです。1人増えた直後、現場の総稼働は1時的に下がることがあります。

仕事が分かれていない。 渡せる仕事が切り出されていないと、増えた人は手持ち無沙汰になり、周囲が気を遣い、結局ベテランが自分でやったほうが速いことになります。

忙しい構造が変わっていない。 予約は同じだけ入り、客室数は同じで、清掃の基準も同じ。1人増えても1人分の仕事しか減りません。


「足りない」の内訳

人手不足という言葉は、3つの違う状態をまとめています。

1. 頭数が足りない — 必要な時間に対して人がいない。繁忙期の夕食時、早番の清掃、夜勤のフロント。これは採用で解決します。

2. 仕事が偏っている — 頭数は足りているのに特定の人に集中している。予約サイトの管理も、シフト作成も、クレーム対応も、新人の教育も、全部支配人。もう1人増えても、その偏りはそのままでは渡せません。

3. 仕事そのものが多い — やっている仕事の中に、やめても困らないものがある。2度入力している予約情報、誰も開かない資料、形式だけの申し送り。これは人の問題ではなく業務の問題です。

もちろん、この3つのどれにも当てはまらない宿もあります。純粋に頭数だけが足りない。そういう職場では、増員がそのまま答えになります。人手不足=業務の問題とは限りません。

「人が足りない」と言われているとき、実際には 2 と 3 が混ざっていることが少なくありません。そしてこの2つは、人を増やすと見えなくなることがあります。


人を増やすと、問題が隠れることがある

これが、この記事で書いておきたかったことです。

1人増えると現場は少し楽になり、偏っていた仕事の異常さが、異常に見えなくなることがあります。支配人が深夜までシフトを組んでいたことは、「そういうものだ」に戻ります。

問題は解決していないのに、痛みだけが消える。痛みは本来、何かを知らせるためにあるものです。

とはいえ、痛みが続くほうが人を消耗させます。だから採用を止めるべきだという話ではありません。ただ、採用したあとに「痛みが消えた理由」を確認しない宿が多いのではないか、ということです。あなたの宿では、前回人が入ったあと、何が変わったでしょうか。


別の順番

人を増やす前に、試せる順番があります。

まず、仕事を減らす。 この1週間で誰が何をしたかを書いてみると、やめても困らないものがいくつか出てくることがあります。

次に、仕事を分ける。 残った仕事を「その人にしかできないこと」と「他の人でもできること」に分け、前者だけをベテランに残します。

それから、人を増やす。 この順番で増やした1人は、渡せる仕事が用意された状態で入ってきます。 同じ1人でも、立ち上がりの速さが違うことがあります。


採用が無意味だという話ではない

誤解されたくないので、書いておきます。

宿には、どうやっても削れない時間があります。客室は毎日掃除が必要で、食事は毎日つくらなければならず、フロントは誰かが立っていなければならない。この基礎の量は、業務改善では減りません。 成長しようと思えば、人は要ります。

言いたいのは、「採用」と「業務の見直し」はどちらか1方ではなく、順番があるのかもしれないということです。


問いは、こう変わると考えられる

「何人採用すればいいのか」

この問いは、答えが出にくいものです。出たとしても、半年後にまた同じ問いに戻っていることがあります。

代わりに、こう聞いてみてください。

いま、この宿で負担が集中しているのは、誰だろうか。

その人の仕事のうち、渡せるものは何だろうか。

渡せないものは、なぜ渡せないのだろうか。

そして、その「なぜ」は、人の数で解決するのだろうか。

この4つに答えられたとき、必要な人数はおのずと決まってきます。答えられないうちに求人を出すと、入った人は答えのない職場に来ることになります。


今日、できる1つのこと

この1週間の自分の時間を、3十分単位で書き出してみてください。 書き終えたら「他の人に渡せそうな行」に印をつけます。その合計が、次の採用で本当に埋めたい穴です。

印が1つもつかなかったとしても、それは「渡せる仕事がない」のか「渡す準備ができていない」のかを確かめるきっかけになります。



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