求人票は誰のために書くのか
求人票は、宿のために書くものだと思われています。実際、媒体に出すのは宿で、費用を払うのも宿です。ただ、読む人は宿の外にいます。この向き合い方の差が、応募の数と、入社後の残る期間に効いてきます。
2つの書き方
求人票には、2つの書き方があります。
宿から書く
- うちの宿は創業何年、客室何室、こういう理念でやっています
- こういう人を求めています
- 明るく元気な方、歓迎します
読む人から書く
- あなたは何時に起きて、何時に家を出て、何時に帰ります
- この仕事で、1日に何をします
- この宿で困っているのは、こういうことです
どちらが正しい、という話ではありません。ただ、応募するかどうかを決めるのは、後者の情報です。
あなたの宿の求人票は、どちらから書き始められているでしょうか。もし宿の紹介から始まっているなら、それは悪い文章ではありません。順番が後になっただけです。
宿から書いた求人票で、何が起きるか
宿の紹介から始まる求人票は、読まれます。悪いものではありません。ただ、読んだ人が判断できないことがあります。
- 自分が通える時間かどうか
- 自分の生活に組み込めるかどうか
- 自分にできそうな仕事かどうか
この3つが判断できないと、応募は止まります。止まった人は、辞退したのではなく、判断できなかっただけです。
判断できないまま応募してきた人は、入社してから判断します。そして判断が合わなかった人は、3ヶ月で辞めます。
「応募が少ない」と「早く辞める」は、別々の問題に見えます。ただ、同じ1枚の求人票から出ています。判断材料が足りないと、入る前と入ったあとの両方で、同じずれが起きます。
読む人から書くと、何が変わるか
求人票を「読む人の1日」から書き始めると、応募の質が変わります。
- 合わない人が、応募しなくなる
- 合う人が、安心して応募してくる
- 面接で聞くことが減る(すでに書いてあるから)
応募の数が減ることもあります。ただ、面接に来る人数と、入社する人数の差が縮まります。読んだ時点で合わない人が来なくなるので、これは悪い減り方ではありません。
数を追う採用をしているなら、これは損に見えるかもしれません。残る人を追う採用なら、得です。
あなたの宿がどちらを追っているかは、去年の数字を見ればわかります。応募が何件で、面接が何人で、入社は何人か。3つの数字を並べて、減っている場所が「読まれていない」のか「断られている」のかを見分けてください。
求人票は「宿の鏡」でもある
求人票は、外に向けた文章です。ところが、書いているうちに宿の内側の状態が見えてくることがあります。
- 勤務時間を書こうとして、実際の時刻が出てこない → シフトが固定されていない
- 仕事の内容を書こうとして、「その他付随する業務」になる → 分担が決まっていない
- 休日を書こうとして、月休の日数が人によって違う → 取り方が不公平になっている
- 給与を書こうとして、「経験による」しか出てこない → 評価の基準が言葉になっていない
書けない欄は、宿の中で決まっていない欄です。求人票を書いていて手が止まった場所は、そのまま宿の課題になります。
この使い方は、採用担当だけのもったいない使い方です。手が止まった欄を、経営の会議に1枚持ち込むと、求人票が経営の資料になります。
この使い方は、採用のためだけではありません。年に1度、求人票を全部書き直してみると、宿の運用が見直されます。
誰のために書くか、を1度決めると
求人票を「読む人のために書く」と決めると、迷いが減ります。
- 宿の歴史は、必要か → 判断には要らない。採用ページに置く
- 理念は、必要か → 1行あれば足りる。長文は読まれない
- 写真は、必要か → 必要。職場と休憩室とまかない
- 詳しい条件は、必要か → 必要。これが判断材料
- スタッフの声は、必要か → 1行なら有効。長い体験談は読まれない
削るものと残すものが、基準1つで決まります。基準がないと、毎回迷って、毎回同じ求人票になります。
宿のために書く部分が、1つだけある
ここまで「読む人のために」と書いてきましたが、宿のために書く部分もあります。
来てほしくない人に来てもらわないための1文です。
- 早朝6時出勤が難しい方には、合わない仕事です
- 繁忙期は連休が取れません
- 車の運転が必要です
この3行は、応募を減らします。ただ、入社後に困る人を減らします。
優しい求人票は、応募を集めます。正確な求人票は、合う人を集めます。宿が長く人を残したいなら、正確なほうを選ぶことになります。
書きにくい行ほど、書く価値があります。書きにくい理由は、多くの場合、宿側の事情です。読んだ人の事情ではないので、判断材料になりません。
あなたの宿で、1番書きにくい条件は何でしょうか。それが、いま求人票から抜けている行です。
今週から現場で試せるアプローチ
求人票の1行目を、読んでみてください。 その1行が、宿の話から始まっているか、読む人の話から始まっているか。
宿の話なら、2行目と入れ替えてみてください。入れ替えるだけで、読まれ方が変わります。
もう1つ。入社して3ヶ月の人に、「求人票のどこが1番役に立ったか」を聞いてみてください。 役に立った行が、あなたの宿の求人票で価値のある行です。その行を、次に書くときは1番上に置きます。
「とくに」と言われたら、それは求人票が判断材料になっていなかったということです。責める話ではありません。次に書くときに、何を入れるかが決まったということです。