採用したあとに起きていること
採用担当の仕事は、内定を出した日で1区切りになります。ところが現場では、その翌日から別の流れが始まっています。この記事では、入社してから3ヶ月のあいだに現場で起きていることを、時間順に並べます。
採用は「決めた日」で終わらない
採用の成果は、人数で数えられます。1名採用。そこで記録は止まります。
現場では、その1名が入った日から、次のことが始まります。
- 教える人が決まる(決まらないこともある)
- シフトに1人ぶん増える
- ロッカーと制服と道具を用意する
- 既存のスタッフが、新しい名前を覚える
この4つは、どれも採用の記録には残りません。残らないのに、現場の負担としては、そのまま残ります。
あなたの宿では、この4つを誰が用意していますか。決まっているなら、受け入れは回っています。決まっていないなら、毎回その場の誰かが拾っています。
入社1日目:見られているのは仕事ではない
初日に新人が見ているのは、業務の内容ではありません。
- 挨拶が返ってくるか
- 自分の名前を呼んでもらえるか
- 休憩室に入ってよさそうか
- 誰に聞けばいいのかがわかるか
- 昼食をどこで食べるのか
この5つが埋まらないと、初日は「知らない場所に置かれた日」になります。仕事の話は、そのあとでしか入りません。
初日にやることは、多くなくて構いません。名前を呼ぶ人、案内する人、昼を1緒に食べる人の3つが決まっていれば、初日は乗り切れます。
入社1週間目:わからないことが集中する時期
この時期に起きるのは、次の3つです。
• わからないことが、わからないままになる
• 同じことを2度聞くのが気が引ける
• 忙しそうで、声をかけるタイミングがない
3つが揃うと、新人は聞かずに進めるようになります。見た目は順調です。ミスも出ていません。ただ、確認していないまま動いています。
この状態は、繁忙期に入ったときに表面化します。
声をかけやすくするのに、制度は要りません。「わからなかったら、いつでも聞いて」と1度言うのと、「今日の中でわからなかったことは?」と毎日1度聞くのでは、後者のほうが機能します。聞く側から動くと、新人は聞かなくて済むからです。
入社1ヶ月目:比較が始まる
1ヶ月たつと、新人は周りと自分を比べ始めます。
- 他の人は、自分より速く動けている
- 自分は、まだ手間をかけている
- 迷惑をかけているのではないか
この比較は、本人の中で静かに起きます。口には出ません。出ないまま、「自分は向いていない」という結論に近づくことがあります。
ここで効くのは、評価ではなく進捗の可視化です。「1ヶ月前はここまでだった」と本人に伝える。それだけで、比較の向きが変わります。
あなたの宿では、入社1ヶ月の人に、誰かが進捗を伝えていますか。伝えていないなら、本人は自分で判断しています。
入社3ヶ月目:続けるかどうかを決める時期
3ヶ月は、区切りになりやすい時期です。試用期間が終わる、仕事の流れが1通り見える、生活のリズムが定まる。
この時期に、新人は続けるかどうかを1度考えます。考えるきっかけは、大きな出来事ではないことが多いです。
- 休憩が続けて取れなかった週があった
- 教わった人と、違う人に違うことを言われた
- 名前を呼ばれない日が続いた
- 自分が何を期待されているのか、わからないままだった
こうした小さなことが積み重なって、3ヶ月目に「続ける理由」が少なくなっていることがあります。
逆に、続ける理由が残っている宿では、3ヶ月目に1度だけ話を聞く時間があります。十5分で構いません。この時間が、次の半年を決めます。
現場で起きていることを、採用に戻す
ここまで書いた5つの時期は、現場だけで完結しません。採用の書き方にもどすことができます。
| 現場で起きたこと | 採用に戻す場所 |
|---|---|
| 初日に誰も迎えに来なかった | 入社前の連絡の項目 |
| 教える人が毎回違った | 求人票の「教育体制」の1行 |
| 休憩が取れなかった | 求人票の休憩時間の書き方 |
| 3ヶ月で辞めた | 評価シートの人材像の見直し |
戻さない宿では、次の採用で同じことが起きます。採用と現場は、往復することで精度が上がります。
最初の1歩としての小さな実践
いま現場にいる、入社3ヶ月以内の人の名前を思い浮かべてください。 その人が、誰に質問しているかを思い出せるでしょうか。
思い出せるなら、受け入れは機能しています。思い出せないなら、今日、その人に1度だけ声をかけてください。「最近、わからないことは出てきてる?」ではなく、「今日、困ったところあった?」のほうが答えが返ってきます。
入社3ヶ月以内の人がいないなら、次の入社日に誰が声をかけるかを、今のうちに1人決めておいてください。決めるだけで、初日が変わります。